第16話 強敵八本角


 なんだよコイツ!?うさぎなんだよな?

 クマよりもデカいんじゃないか?


「蒼字(そうじ)俺がおとりになる。ケリーと一緒に逃げてくれ!」

 ジャンさんが悲痛な顔で指示を出す。


「なに言ってるのジャンも逃げるのよ!あんなのに勝てるわけないでしょ!」


「だからだ、全員で逃げたらあっという間にあの角の餌食だ!せめておとりを作らないと隙なんて出来ないんだよ!」


 二人は激しく言い合いをしていた。しかしそれはお互いを心配し合うゆえの行動……


 ……おとりになるなら俺だよな。

 二人共お幸せに。


 俺はうさぎの左側に向かって走った。


「バカ!やめろー」

 ジャンさんの叫び声が聞こえるけど、どう考えても死ぬなら俺でしょ〜道中ラブラブだったし、なんか俺がいたたまれない気分になっていたんだぞ! なんていうのは置いといて、俺も死のうと思ってはいない。やってやる!


 うさぎ野郎は低空でジャンプ、すごいスピードで飛んてきた。「よっと〜」俺は横に飛び躱す。

 うさぎ野郎も即座に反応、すぐに方向転換し飛びかかって来た。



(躱せないことはないな……)


 この時俺は油断してしまった。

 角が突然光った!?と思った瞬間激痛が走る。

「ガハ〜」苦しみの声が漏れる。

 俺の身体が「シュ〜」と音を立ち焦げた匂いがする。

 

「くっそ〜!」

 お前はピ○チュウか!電撃を放って来やがった。身体が上手く動かない。

 うさぎ野郎はトドメを刺さんと突進して来る姿が見えた。


「ボン」火の玉がうさぎ野郎の顔側面に当たる。

 うさぎ野郎は足を止め飛んできた方向を見る。


「蒼字(そうじ)逃げろーー」

 ジャンさんとケリーさんが足を震わせながら助けに来てくれた。


 うさぎ野郎は標的を変えようと飛び上がる。


「こら〜逃がすかボケ〜!」

 俺は身体の痛みに耐えながら、うさぎ野郎の足に墨の帯を巻き付けてコケさせた。


 まったくジャンさん達は無理して、俺はあの二人には絶対に怪我をさせるもんかと気合を入れる。


「おい!うさぎ野郎。お前の相手は俺だ!こっちに来いや!」


 帯を引っ張りうさぎ野郎を木に叩きつける。

 しかしうさぎ野郎はタフですぐに立ち上がり電撃を放とうとしていた。


『破魔のふで払い』即座に電撃を消し去る。

 もう油断なんて微塵もしないからな!


  …………『一文字 一閃』…………


 筆の斬撃で血飛沫を上げうさぎ野郎は倒れた。


「あ〜しんど〜」俺は腰を下ろし一息つく

(もちろん警戒しながら)


 それからジャンさんにはすごく怒られたが、

 その後めっちゃ感謝された。


………………▽


 その後すぐに冒険者ギルドに戻る。正直今回はかなり疲れた。それに身体中が痛い。

 ここでみんなは思うかもしれないが、何故自分の傷を治さないのかと、ここで大問題が発生した。

 俺は他人は治せるのに自分を治せない事実が判明する。その為なくなくそのまま帰りリルに治療して貰うことにした。


…………▽


 冒険者ギルドに到着する。

「大丈夫か?肩貸すぞ」

「あ、いえ大丈夫です。動けない程ではないので」


 ジャンさんがふらつく俺に見かねて肩を貸そうとするが、断ると声をかけられる。


「蒼字(そうじ)様お怪我をなさっているようですが、治療室の方へどうぞ!」


 声をかけてくれたのはキャンベルさん

「あ、キャンベルさんこんにちは」

「蒼字(そうじ)様そのようなことを言っている場合ではないと思うのですが…」

「アハハハ、大丈夫ですよ!服はボロボロですけど、思った程の怪我じゃないんです」

「本当ですか……それなら良いのですが…」

 心配そうな顔をされてしまった。


「キャンベルさん丁度良かった!イレギュラーが現れました!」


「ジャン様それは本当ですか!」

 キャンベルさんの顔が物凄く険しい顔に変わる。


「そうであれば早く情報を皆様に伝えなければなりません。申し訳ありませんがお話を聞かせてください」


「はい!キャンベルさん、それが………」

 ケリーさんは八本角のうさぎついて説明する。

 それにしてもイレギュラーってなんだ?


「そう言うことですか、すでにイレギュラーは討伐済みと」

「そうです。ですので慌てなくても大丈夫です」

「んー……いえ、同種の個体がまだいるかもしれませ。ルルドの森については依頼を一時的に停止します」


 この後、冒険者ギルドではちょっとした騒ぎになり素材と魔石の換金については後日となった。



…………▽


 家に戻ると…

「どうしたんですか、ボロボロじゃないですか!?」

「お〜リル良かった。悪いんだけど『キュア』かけてくれるか、身体中痛くって」

「もう〜なにがあったんですか!」

 リルは慌てて回復魔法をかけてくれた。

 

 その後、今日受けた依頼についてご飯を食べながら話しているとパンさんもリルも驚いていた。なんで?


 部屋に戻るとレベルが上がっていないか気になりステータスを確認する。


………………………………………………………………


『ソウジ サナダ』 Lv:1→6  


種族:ヒト族

年齢:17

職業:冒険者 ランクE

称号:女神のうっかりの産物

  ∶霊能力者

  ∶筆使い

加護∶特になし

魔法:なし


HP:1500/2500→3500(+0)

MP∶985000/1000000→1010000(+0)

気力∶1500/2500→2800(+0)

魔力(霊力):15000→16000(+0)

筋力:1500→1650(+0)

耐久:2000→2200(+50)

敏捷:1800→2000(+20)

運 ∶100(+0)

スタミナ∶1200→1300(+0)


※( )は武器、防具、装飾品等による数値向上分です。


技能:固有スキル『書道神級』

        『霊との対話』Lv.8

        『除霊』Lv.8

∶コモンスキル『剣術、槍術、体術等……』Lv.3

         『言語理解』Lv.1


………………………………………………………………


 お!レベルが5も上がってるぞ!パラメータもそれにつれて色々上ってる。やり〜!

 でもHPが結構下がってる。戦闘でかなり攻撃を受けちゃったからな仕方ないか。それにしても気力も減ってる。これはなんでだ?

 

 ま〜分からないことはまだまだあるが、ゲームと一緒で魔物を倒せばレベルが上がるってことは分かった。なんかやる気が出てきたかも。




……………▽

 

 次の日、換金の為にジャンさんと待ち合わせ、

 ちなみに今日はリルもついて来ている。


「おはようございます。ジャンさん、ケリーさん」

「おはようさん、身体の方は大丈夫か?」

「身体は大丈夫ですよ!全快ですね!」

「はぁ〜見かけによらず蒼字(そうじ)はタフだな〜」

 

 うん!俺も驚いている。朝起きたらHPは全回復していた。ここもゲームと同じ仕様なのかな?



 俺は軽く挨拶をして冒険者ギルドに入る。


 今日はどうしようかな、昨日はキャンベルさんに話を聞いて貰ったしキャンベルさんに対応してもらおうかな、そんなことを考えていると厳つい声で話しかけられた。



「おい!お前ちょっといいか!」

 後ろを振り向くと身長2メートル超えのガチムチのツルッパゲのオッチャンが立って居た。こわ!?


「え〜どちら様でしょうか?」

 男はニヤリと笑うと話しを聞かず俺の首根っこを掴みそのまま連れて行かれた。

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