第14話 初めての冒険


「邪魔くさいガキが飛び出すから、馬車が急停止して私が頭を打ってしまったぞ!この責任をどう取るつもりだ」


「申し訳ありません」

 娘を抱きながら平謝りする女性。


「もういい死ね!」

 偉そうな格好をした男は使用人から剣を受け取ると、そのまま女性に向かって振り下ろす。


「ちょっと待った!」

「バシッと」俺は真剣白刃取りで剣を止める。


「あ?なんだ貴様、無礼であるぞ!どけ〜い!」


「いや〜ちょっ無理!だって貴方この人を斬ろうとしているんでしょ。ダメでしょ」


 偉そうな格好の男は眉間をピクピクさせている。

 もう、沸点低すぎでしょ。


「私の邪魔をするならお前も死ね!」

 周りに居る屈強な兵士に囲まれた。

 こえ〜けどやっちまったもんはしょうがない。

 やるだけやるか…………三分後、兵士の皆さんには全員おねんねしてもらった。思いの外よわ。

 殴られようが斬られようが動きが遅すぎて対応が余裕で出来てしまった。


「き、貴様私が誰かわかっての狼藉か〜」

「お前なんか知らん!」

「ふざけるな!私はこの国の大臣ペトロスの息子、ペロスだ!貴様ら一般庶民が喋ることするおこがましいのだぞ」


 なんで、こんなに偉そうなのかと思ったら、そんなに偉い人の息子だったのね!ま〜実際おめ〜が偉いわけじゃないけどな。


 とは言え、面倒くさい事になりそうだ。

 仕方ない………


「絶対に許さんぞ!覚えていろ。あとで泣き叫ぶほど後悔させてくれるわ」


 ペロスは馬車に乗り逃げようとしたので、もちろんそのまま逃さな〜い。


「ガシッ」俺はペロスの肩を掴む。

「貴様放せ、放さんか〜」


「い・や・だ!」………『呪詛 黒き首輪』

 ペロスの首に黒い線が入る。


「そうだな〜条件は二つだ!一つ目はもう俺達に関わるな!二つ目は一般庶民をいじめるな!以上」


「はーーふざけるな!今すぐに兵士を呼んでお前達はまとめて皆殺しだ〜……あ!あぐ…くっくるしい」


「良し!上手くいってるな!さっきの条件を守らないと今みたいに首が締まって最後には首が切れるから、しっかり守れよな!大臣の息子」


「は〜は〜は〜苦しいくそ〜覚えていろ」

 馬車は走って行った。


「なんだよ!少しは反省しろよな!さてと」

 振り向くとリルが先程の女性の娘さんを治療していた。


「蒼字(そうじ)さん、ごめんなさい、どうも馬車とぶつかった時に強く身体を打ちつけたみたいで、私じゃ治せません……」

 リルはシュンっと落ち込む。

 まったくリルは、お前が悪いわけじゃないのに、ま〜リルは優しいからな。つい自分に責任を感じるんだろう。


「お〜分かった!すぐやるよ!」


………………『治癒の朱墨(しゅずみ)』


 娘さんは目をぱちくりさせながら立ち上がった。

「お母さん、どうしたの?」

 母親は娘を抱きしめて俺達に何度もお礼を述べた。


「相変わらずすごい回復力ですね」

「ホントだよな!びっくりだよ」

「なんで使った本人がびっくりしてるんですか?」


 この時俺とリルは笑いながら話をしているが、これが後々面倒くさい事になることを今は知る由もなかった。


……………▽

 

 パンさんの家に戻ると明日の予定についてリルと話し合った。まずリルは商品を出すために明日1日かけて準備をしたいとのこと、それでその間は俺はどうしたらいいかと尋ねるとせっかく冒険者になったので実績を積んだらどうかと言われた。確かに時間があるから丁度いい。それとついでにポーションも商品として売り出したいとのことで薬草を取ってきてほしいと頼まれた。見本を見せてもらい依頼で薬草が取れそうな任務を受けることにした。



……………▽


 冒険者ギルドに到着、今日も朝から冒険者達がワイワイと騒ぎながら酒を飲んでる。依頼を受けなくていいのか?と思ったがきっとこれも冒険者の醍醐味なのだろう。いつか俺も混ぜてもらおう!


「さてとどの依頼にしようかな〜」

 俺が依頼ボードの前で迷っていると、


「すいませんあなたは先日私達を助けてくれた方ですよね」

「ん?」振り向くと道中で魔物に襲われていた冒険者のジャンさんとケリーさんが居た。

「あ!ホントだ!蒼字(そうじ)!奇遇っていうかやっぱり冒険者だったんだな」

「どうも数日振りです」

「どうしたんですか?随分迷ってるみたいけど」

「実績が取れつつ薬草が取れる依頼がどれかな〜と思って見てたんですけど、よくよく考えたらさっぱり分からなくって」

「そうですか、でもなんでこんなランクの低い任務を受けるんだ?蒼字(そうじ)はAかBランクだろ」

「いえ、初めての依頼で悩んでいました」

「え!まさか冒険者成りたての新人かー……ずいぶんと大型新人が現れたもんだ」

 ジャンさんと話をしているとケリーさんも会話に入ってきた。

「じゃさ〜私達と一緒に依頼受けない?色々と教えてあげれると思うんだけど」

「え!?良いんですか?」

「もちろんよ!命の恩人に少しでも恩返しができるんだから、むしろこちらからお願いしたいわ。ね〜ジャン」

「おう、是非とも協力させてくれ」


 二人から強く言われた俺はお言葉に甘えお願いすることにした。おすすめの依頼書を取り受付に向かう。

 せっかくなのでこないだ対応して貰えなかった。ルンさんの受付に向かい対応してもらった。ルンさんは予想通りとても優しい人でちょっとおっとりしているのが気にはなるがまたそれが良いと思える。


「それではこちらの依頼で宜しいですね〜」

……………………………………………………………


【角うさぎの討伐】 ランク:D

詳細:つのうさぎの角を求む。数は8個

報酬:16000リオン


……………………………………………………………


 今回初任務だかDランクを選択した。

 Eランクの俺では単独(ソロ)では本来受けることができないが、ジャンさん達と受けることで上位のランクを受けることが出来た。ちなみにジャンさん達はCランクに先日上がったらしい。


 ジャンさん達に連れられて目的地ルルドの森へと向かう。ここは意外と近く一時間程で着いた。


 そして今回は誰もふれてはくれないので、自分から話すが、装備を変えている。なんせ前回は学生服だ。流石にそれはまずいし悪目立ちするので、冒険者の初期装備を付けている。ただしかなり軽装。


「さてと到着だ!準備はいいか〜ビビんなよ〜」

 ジャンさんが煽ってくるので、

「準備はOKですよ!余裕で倒しまくってやりますよから」

「よ〜し!その粋だ!それじゃ〜突撃だぜ!」

 テンションアゲアゲで森に入って行く。

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