第10話 幻夜

「何をしてたの?」

部屋に入るなり幻夜はそう言って

ベッドに腰を下ろした。

それから。

その長い黒髪をさっとかき上げた。

その仕草に僕は若干戸惑った。

幻夜はポニーテールを解いて

髪を下していた。

そして体のラインがはっきりとわかる

ぴたりとしたTシャツを着ていた。

真っ白なそのTシャツからは

薄っすらと下着の線が透けていて、

桃花色の短パンからは

白い健康的な足が伸びていた。

僕は机の前に立って

そっとパソコンのモニターを隠した。

「べ、別に。

 し、宿題をしようとしてたところさ。

 そ、そんなことより話って何?」

そう答えながら

僕は後ろ手でパソコンの電源を落とした。

「ねえ。

 まずはこうして可愛い女の子が

 来てるんだから

 飲み物くらい出すのが礼儀じゃない?」

幻夜の言葉に僕は耳を疑った。


僕がアイスコーヒーの入ったコップを

2つ持って部屋に戻ると

幻夜が机に座ってパソコンの電源を

入れていた。

「なっ、何してるんだよ!」

僕は慌てて少女を椅子から立たせた。

「怪しいわね。

 そんなに焦るところを見ると

 何かやましいところがあるのね」

幻夜は悪びれた様子もなく

けろりと答えた。

「ち、違うよ!

 それより、ほらっ」

僕は平静を装って彼女にコップを渡した。

幻夜は受け取ったコップに口をつけると

あからさまに不満げな表情になった。

「ねえ。

 年頃の女の子は美容に五月蠅いのよ。

 トマトジュースはないの?」

そしてベッドボードの上にコップを置くと

そのままベッドに腰を下ろして

足を組んだ。

桃花色の短パンから覗く太ももに

僕の視線が釘付けになった。

「と、トマトジュースなんて

 置いてないよ。

 そ、それより。

 話って何だよ・・?」

それから僕は慌てて視線を外した。

「そうそう。

 この学園のことを

 教えてもらおうと思って。

 この先に待ち受けている

 過酷な学園生活を生き抜くためには

 大切なことでしょ?」

そう言って幻夜はにこりと微笑んだ。

僕は邪な感情を振り払うように

大きく頭を振った。

それからアイスコーヒーを

一口だけ飲んだ。

「・・生き抜くなんて大袈裟だけど。

 でも。

 当たらずとも遠からずかな。

 来週には『Dゲーム』があるから・・」

「Dゲーム?」

「うん」

そして僕は『Dゲーム』について説明した。

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