イケメン黒髪カラスの恋。魔力が足りない。クリスマスまでに。人間に変身。

京極道真  

第1話 カラスの弥吉とのろまな制服女子

俺様は駅前の電柱を縄張りにしている。

たくさんの人間どもが行きかう狭い駅の入口。

駅から出てくる人間もいれば。

遠くから息をきらして走ってくる

少しのろまの制服女子がいる。

春から見かける奴だ。

「あーあ。のろまだな。

アイツは、おバカなのか。

毎日、毎日息をきらせて。

時間にルーズな奴は俺様は嫌いだ。」

しかし、どういうわけか、俺様は

こののろまな制服女子を目で追ってしまう。」

「おーい。ボス!ゴミ収集車が来ますよ。

早くメシを食わないと、根こそぎ持ってかれますよ。」

仲間のカラスが俺様を呼びに来る。

俺様はこの辺りでは名の通ったカラスの弥吉。カラスのボスだ。

ケンカは強い。スピードも速い。

他のカラスどもよりカラダも大きい。

翼開長は2mはある。

トンビどもには負けていない。

それより何より俺様は賢い。

真下を歩く人間達の言葉がわかる。

「ボス!何してんですか!ほんとメシ食わないと持ってかれますよ!」

「そうだったな。今行く。」

キューンと急降下。駅前の目立つところに

俺様たちはたむろし朝飯だ。

「ボス。今日はチキンですね。やたら残飯でいい匂いがすると思いきや。」

他のカラスたちも鋭くとがった口ばしで骨付きチキンの残飯をがぶ食い。

俺様たちが群がっているところに

犬の散歩の金持ち風の人間が来た。

「しっ。しっ。散歩の邪魔よ。おどきなさい!

ジョン。カラスに吠えてやりなさい!」

一番嫌なタイプの人間と犬だ。

俺様は犬が嫌いだ。人間に近い価値観だからだ。

「お前ら。危険だ。飛ぶぞ。」

「ボス!大変です。

青助カラスが、ビニール袋に足を引っかけて飛べません。」

「まじか。」

くそ生意気なお犬様が「ワン。ワン。」

吠えあがっている。

俺様は2mの翼を広げ、お犬様に立ち向かう。

「おい。青助!大丈夫か。犬は任せろ。

足に絡んだビニール袋。

銀太郎たちお前達も助けろ!」

カラスが交互に急降下。ビニール袋を破いている。

「ボス!もう少しです!」

「わかった。」

俺様は犬と戦いながら飼い主の人間の声が

聞こえた。

「こんな、汚いカラスなんか、かみついてしまいなさい。」

犬が俺様に飛びかかようとした瞬間。

「ドスン!」

「キャーン!」犬が痛がりながら叫ぶ。

なんとゴミの山と俺様と犬の間に

あの、のろまな制服女子のカバンが。

「いたたたたあー。」

そしてその、のろまな制服女子が

「カラス君。君はよく番だった。

ここは人間の私に任せて。」

そして次の瞬間。おもいっきり大声で

「きゃあー!」と叫んだ。

人間達が「大丈夫?」集まりだした。

彼女は「カバンが。えーん」とウソ泣き。

カバンを踏んでる犬をまた指さす。

みんなの視線が飼い主に向く。

飼い主はリードを強く引っ張り、

逃げるように走りさって行った。

「私の勝ちね。」彼女の独り言が俺様には聞こえた。

と同時に「ボス!青助カラスの救出完了です。

逃げましょう!」

「あー。わかった。」

「もう、私のこと、のろまな制服女子って言わないでね。カラス君。

これ、一回貸だからね。」

そして彼女は駅の中に、いつも通りにすいこまれていった。



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