第5話 想思子(うみなしぐわぁ)

前伊保岳に行った翌日の事である。

その日の食堂はは朝から大忙し、何故なら休日で沢山の人がネットなどの口コミを見て訪れてきたからである。

「沙代~!起きて!大変なのよ!お店が・・お店が・・持たなくなるわ!いろんな意味で!だからお願い起きて、手伝ってちょうだい!」

と母が大慌てで沙代を起こしに来たのであった。

「んんっ・・・お母さん?・・・ふわぁ~~!おはよう!」

「おはよう・・・じゃなくて!急いで支度して手伝ってちょうだい!」

と母はそういって階段を走るように降りていく

「・・・まだ沙代梨にミルクあげれてないんだけどなぁ・・・」

沙代は寝ぼけながらも階段を下りて母を手伝うことにした

「あっ!中西さん、おはようございます!」

「おおっ、沙代ちゃんおはよう!なんだか最近赤子を育ててるって話聞いたよ~!まだ15歳なのにえらいねぇ~!」

「いえいえ!そんな、まだまだ未熟ではありますがそれなりに頑張っているつもりではあります。」

「ははっ!そうかい、それじゃあがんばって~な~!」

といって店の戸を閉めたと思ったのも束の間、母の喜代が

「お~い!沙代~?うっかりさんしてないで手伝って~!」

「は~い!」

こうして食堂「TEDAKO」は今日も大盛況!


そして、お昼近くになりようやく客足が落ち着いて、沙代は2階の自室へといったん戻ったのである。


そして自室に戻った時に娘の沙代梨が目を覚まして、起きたよと言わんばかりにぐずり泣き始めていた。


「はいは~い!沙代梨~?お母さんだよ~!ずいぶん時間空いたからねぇ~遅めだけどミルクの時間にしようね」

と沙代は言うと沙代梨を抱き上げ房を出し、ミルクを与えてあげた。

そして、沙代自身も遅めの朝食を取るために沙代梨を抱きミルクを与えながら1階へと降りていく。


それから母との食事にて、

「ふふっ、沙代梨本当に安心して飲んでいるわね」

「そうだね、本当に可愛くてこうお世話していると自然と愛情が湧いてくるというか何というか・・・」

「・・・そうなのねぇ・・・もうそれは完全に母になった証ね!」

「そうなの?」

「ええっ、そうよ!母と言うのはね、こう自然と育てたい、守りたい、愛してあげたいと思えてそれを行動するというのが母としての『愛』なんじゃあないのかしらね♪」

「・・・そうかもね・・・」

「そう、だから沙代梨を沢山愛して可愛がってあげなさいよ?そうしないと寂しがるからね?」

「うん、分かった。」

こうして沙代はより一層沙代梨の事を大事にしようと思えたのであった。



「そういえば、沙代?貴女は沙代梨の戸籍ちゃんと申請はしたの?」

「・・・へぇ?」

「ほら、私たちの国場山での戸籍登録よ!」

「あぁ~、なんだっけあれ、国場山の戸籍法で『全世帯有権戸籍法』っていうルールのやつだっけ?」

「そう!それよ、申請はしてあるの?」

「いや!全く。」

「・・・えぇぇ!まだなの?早く申請しなさい?」

「うん、分かってるよ・・でもそんなに急がなくてもいいんじゃないの?」

と沙代が言うと母は告げた

「はぁ、、あのね沙代?申請を何故早くしないといけないのかって言うとね、今の状態じゃあ2人共親子になれるのなら良いけど、それだと社会的には子供って認められないのよ!だから早めに申請しなさいってことなのよ!沙代梨の今後の人生の為にも!ね?」

と言われた沙代は渋々ながらにも理解して、その日の午後は役場へと行くことにした。


そして午後になり沙代は娘の沙代梨を紺色の兵児帯でおぶって、

国場山本庁舎まで出かけた。

役場まで行く道のりは少し距離があったがその道中で見た海沿いを走る鉄道やら海の潮の香り、田んぼの水面にに写る2人、そんな普段は体験しないようなところを見て回りながら役場へと向かった。


それから家を出て45~50分くらいでついての事。

「あの~すみません、戸籍登録をしたいんですけどいいですか?」

「あっ、はい!大丈夫ですよ!こちらの番号札をもってお待ちください!」

「あっ、ありがとうございます!」

そして沙代は呼ばれるまで近くにあった椅子に座って待つことにした。


その役場はとても不思議な建物でギリシャの神殿のような玄関と中央には大きな噴水とその下には長方形の池がありとても摩訶不思議な場所であった。


そんな中沙代は沙代梨に夢中になっていた。

「沙代梨~?寝ているの~?」

と沙代が言うと沙代梨は笑い

「きゃはっ・・キャッキャ!」

とうれしそうに答えた。

「沙代梨~?お母さんは貴女の為ならどんなことでもするからね~!」

「キャッキャッ!」

そして、順番を待っているととある人が訪ねてきた。

「あれ?沙代?どうしてこんなところに?」

「ん?・・・あっ!!貴女は、真茶!!」

なんと親友の『真茶 (まちゃ)』と出会ったのだった。

そして彼女も自分の息子の戸籍を登録しに来たという。


そして二人の『母会』が始まった。

「真茶!久しぶり!元気にしていた?」

「うん、沙代こそ元気そうだね!」

「うん、元気だよ!最近は娘の沙代梨もできて楽しいばかりだよ~!」

「そうなんだ!それならよかったね!」

「そうなんだよ~!」

「それで実は・・・私も?息子がいま~す!名前は『政優 (せいゆう)』って言うんだ~!」

とそれぞれの子供の自慢話や育児話なども話していた時に、沙代に点呼がかかったのであった。


「34番でお待ちの沙代様~?7番席までお越しくださ~い!」

と呼ばれ

「は~い!それじゃあ真茶、またあとでね!」

「うん、またね」

と2人の少女のゆんたくタイムは終わった。

そして、沙代は呼ばれた席まで行くと20代前半の職員の女の人が待っていた。

それで、沙代が席に着くと同時に話が始まった。


「こんにちわ~!」

「こんにちは!今日はどのようなご用件ですか?」

「はい!実はこの子の戸籍を登録したくて!」

と言うと職員の方が

「えぇっと、それでは出生届本体(医師等が記入した出生証明書と一体)、母子健康手帳、届出人の印鑑をお願いいたします。

それと、子の氏名・生年月日・出生地、父母の氏名・本籍等の記入もこちらの用紙にお願い致します。」

と提示すると沙代は静かに口を開いた。

「あの~すみません?」

「はい、なんでしょう?」

「実は・・・・この子・・・」

さて今後の沙代と沙代梨、どうなるのか!


第5話ーFIN

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