優しくてちょっと抜けてる師匠が、物静かで丁寧な口調の弟子に迫られて戸惑いつつも結ばれる話。

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01. コニャック・ド・マクマオンは華麗に起床する。


 コニャック・ド・マクマオンの遅い朝は、晴れた日も曇りの日でも、綿の擦れ合うような声音のさえずりによって始まる。


「お師匠。起きて下さい、お師匠」


「うう、ん」


 揺り動かしには、呻きを上げた。


 寝返りを打ちつつ丸まる。


 そっぽを向いた抗いを、からからと軽い真鍮の音が迎えた。引かれるカーテンと差し込む陽射し、瞼越しの光と熱。コニャックはいっそうきつく目をつむって、顔面を布団の中へ逃がした。


 それが、彼の前髪にぶつかりつつ差し込まれた細い指によって、剥がされる。


「お師匠、本日はお約束があるはずです。もう十時を回っていますよ。早く支度をなさって――」


「ううううぅ、ん」


 さっきよりも大きく長い呻きで、指示をかき消す。


「このままでは、食事を摂る時間がなくなってしまいます」


 ごくわずかに焦燥を乗せた声で、説かれる。


「会食されると伺っておりましたので、少なめですけれど。今日もちゃんと用意をしてあります。ですから」


「うー」


 言い募る言葉に応えようとコニャックはかろうじて半身を起こして――しかしぐらぐらとたゆたう頭の重さに釣られ、再び寝床へ倒れた。


「ん」


 と、まどろみに身を任せた彼の耳に一声、「お師匠!」と叱咤の響きが飛び込んでくる。

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