第16話 魔震2
魔王ゼオンがテレビ局を襲いテレビキャスターを惨殺した様子や、魔王軍の将軍バハルが自衛隊基地を屠る様子は、世界中のテレビで流された。
震度八強の地震で電気やテレビ局そのものが壊れているものもある中、どれほどの人間がそれを見ることができたのか分からなかったが、最終的には全ての生き残っている人間が目にしたのではないかと思う。なぜなら、インターネットでもその動画は拡散されたからだ。
おそらくそれは、人間の恐怖心を煽り、反抗する気持ちをくじく魔王軍の作戦だったのだろう。
ネットのSNS上では、真偽不明の情報も含め、盛んに情報がアップされた。
それらの情報によると、魔族や魔物は世界中で跋扈し、各国の軍隊と交戦しているようだった。その超常的な能力と戦う軍隊の動画の幾つかはネット上にもアップされていた。
市街地で魔族や魔物と戦う歩兵部隊や高機動戦車……。他に、空の上で軍用ジェット機と魔族が戦う動画もあった。
それらの動画は断片的ではあったが、圧倒的な魔力や物量の前に苦戦している印象だった。少なくとも、近代兵器が圧勝しているような内容のものは一つも無かった。
この研究センターは、最新の堅牢な構造だったためか、奇跡的に大きな被害は受けなかった。周りの建物は軒並み倒壊していたため、見る人によっては瓦礫の中にポツンと残った砦のような感じにも映ったかもしれない。
散発的に魔物が襲いかかってくるものの、その中にはテレビやネット動画で見たような圧倒的な力を持つ魔物はおらず、御岳の二体の戦闘用ロボットのおかげで何とか退けているという状況だった。
また、幸い、研究センターは電気が生きていた。周りの建物も道路も、ましてや電線、電柱もボロボロだったのだが、研究所の電気設備は、衝突型加速器をはじめ様々な電子機器対応の特別仕様だったおかげだと思う。
電線は分厚い皮膜に包まれて深い地中を這わせてあったのだ。水道は止まっていたが、雨水を汲んだり、災害備蓄備品の飲み水を飲んで凌いだ。こんな状況なので、電気の送電もいつ止まるか分からない状況だったが、屋根を覆う太陽光パネルと非常用発電機もある。不安はあったが、今のところは何とかなっていた。
元々、この辺りに地域住民は少なかったが、わずか二十人ほどの生き残りの住人がここに避難してきていた。地震が起こったのが夜の八時二十分過ぎだったため、研究所に残っていた職員や研究者は元々少なく研究室や事務室、医務室、会議室など空きは多かった。一般住人はそこに入ってもらったのだった。
残っていた研究者は、ボクと御岳の他は、航空力学が専門の藤田教授、荒廃地における農業が専門の荒川教授、そして記憶のデジタライズ化や知能のAI化が専門の島本教授の五人だけだった。
こんな感じで、一応の人間らしい暮らしはあったのだが、それは、護雷神と護雷狼という二体の戦闘用ロボット、いつ途切れるか分からない電気、堅牢な造りの研究所という三つの絶妙なバランスの上に成り立った非常に危ういものだった。何か、不測の事態が起きれば、今すぐにでも壊れてしまう。そんなかりそめの平和だったのだ。
そんなある日、とある男が研究所を訪ねてきた。それは、魔族と対を成す存在だった――。
*
「話の腰を折って済まない。念のため確認だが、そっちの世界では、衝突型加速器の事故は起こっていないのか?」
黒井はコンピューターに訊ねた。
「……アア。起コッテイナイ」
「そうか……」
黒井が腕を組みながら考え込む。
「な、なあ。ちょっと待ってくれ……!」
俺は咳き込みながら言った。
想像もしなかった事実に頭は混乱していたが、どうしても確認しておきたいことがあった。
「ナンダ?」
「その、魔族やら魔王やらには本当に近代兵器は効かなかったのか?」
「アア。生物デアル以上、当タレバ効クノダガ、アノ……『ゼオン』ト『バハル』、ソシテソレニ連ナル魔族、魔物ガ特別ナンダ……。実際、ボクモインターネットノ動画サイトデ魔物ヲ戦車ガ倒シテイル映像ヲ確認シテイルヨ」
「そ、そうか。それならいいんだ。何か、このままだと護雷神と護雷狼の二体がすぐやられてしまいそうな気がして……」
「御岳ヨ。二体ハ既ニ魔物トハ戦ッタノカ?」
「ああ。まず、ゴーレムという化け物を倒し、そいつが変化したドラゴンも倒したんだ。ただ、二体は合体したんだよな。紫織さんの魔法で。もし合体していなければ、ドラゴンは倒せなかったかもしれない……」
「ナルホド。ソレハ、イワユル強化魔法トイウ奴カ……。近クニ魔法使イガイテ、助カッタナ。ダガ、ソノ辺リガ近代兵器ノ限界ダロウ」
「確かに、そうだな。じゃあ、お前の世界で二体はどうなったんだ?」
「ダカラ、ソコモ含メテ説明シヨウトシテイル。話ヲ続ケヨウト思ウガイイカ?」
「だ、だな……。邪魔をしてすまなかった。先を頼む」
「分カッタ。デハ、続ケヨウ」
少し呆れた表情の黒井の横で、コンピューターの極彩色の光の粒が煌めいた。
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