第5話 ありきたりな物語
……次の瞬間、俺は見知らぬ石畳の広間に立っていた。
「異世界からの来訪者よ! 我が国を救う勇者として召喚に応じてくれて感謝する!」
目の前にいるのは、金髪ロングの巨乳王女(推定20歳前半)。
隣には銀髪の清楚系聖女、黒髪ツインテの天才魔法少女、褐色肌の獣耳戦士……全部俺のストライクゾーンど真ん中。そして、頭の中に声が響く。
《スキル【遅咲きの英雄】発動》
《社畜の不満が、全て最上級スキルに変換されました》
【山崎健一 Lv1(実質999)】
【称号:社畜の極み/ブラック企業耐性/残業の鬼/上司殺しの眼差し】
【固有スキル】
・エクセル魔法(最上級)→ 表計算一つで国家予算を最適化、敵軍の補給線を瞬殺
・パワポプレゼン(神域)→ 一発で王様も魔王も納得させる
・根性無限ループ→ HPが1でも残ってれば絶対死なない
・有給取得不能→ 代わりに全ステータスが永続で1.5倍
・飲み会耐性(極)→ どんな毒酒も即分解、むしろ回復
・上司を睨むだけで恐怖付与(パッシブ)
・アラサー必死の色気(魅了耐性無視)王女が震える声で言った。
「ま、まさか……“遅れてきた最強”の伝説が本当だったなんて……!」
俺はため息をついて、スーツのネクタイを緩めた。
「……ったく、こっちはもう疲れてんだよ。でもな、クソ社長にこき使われてきた男をナメると痛い目見るぜ?」
俺が一歩踏み出すだけで、大理石の床にヒビが入った。
魔王軍四天王の一人が震えながら叫ぶ。
「ば、馬鹿な……! 召喚直後の人間が、俺の魔力ごと圧殺してくる……!?」
俺はニヤリと笑って、ポケットから取り出したのは――100均で買ったボールペン一本。
「悪いな。社畜の武器はな、こういう地味なやつなんだよ」
指先で軽く回すだけで、ボールペンが神器級のオーラを放つ。
《神器化完了:赤ボールペン“最終決算” 攻撃力:会社を潰せる》
王女が真っ赤になって俺の腕に抱きついてきた。
「け、健一様……! どうか、私の体で今までの苦労を……!」
隣の聖女も、獣耳娘も、魔法少女も全員顔を赤らめてモジモジしてる。俺は空を見上げて、深呼吸した。
「……いいだろう。残りの人生、好きにさせてもらう」
その日、世界は知った。
元社畜のアラサーが、最強で、最低で、最高に気持ちいい主人公だったことを。
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