第17話

ブロック大会まで残り1週間になった。

練習がより一層真剣に取り組まれるようになり、少し練習量も増えている。


監督の声もいつもより張りがある。


「大会まで時間がない。集中していくぞ!」


今やっているのは、守備と攻撃に別れる1対1の練習が行われている。

普段ならFWの俺はどちらかというと攻撃側に入れられがちだが、今日は守備側に回る事が多くなるとコーチに言われた。

コーチも俺の守備を鍛えたいということだろう。


だが俺としてはむしろ丁度いい。

「守備反応」を初めて対人で試すチャンスだ。


俺の対面に立ったのは、ドリブルが得意で上手い先輩だった。

前の俺なら間違いなく抜かれていた相手だ。


先輩がドリブルしながら仕掛けてくる。

最初に細かいフェイントする。


(右に来る)


そう考え素早く右側のコースを切ると先輩が左に切り返そうとした瞬間に、


スッ


俺の足か先にそこを塞いだ。


「うそっ!?」


先輩の驚いた声と同時に、ボールがこぼれ落ちるとすかさず奪ってクリアする。


「陽斗ってこんな守れたっけ?」


俺が奪った事に驚き周囲が少しザワついた。


そして続く2回目、3回目の対決でも、同じようにフェイントを読み、左右への対応をする。


そこで監督も思わず声を漏らした。


「陽斗…どうした? 急に守備が上手くなっているぞ」


「…ちょっとだけ守備の練習頑張ったんです」


と答えながら内心謝罪する。

流石にスキルを取得しました。なんて言えるわけが無い。


(それにしても反応が、前より段違いだ)


足の出し方も、間合いの取り方も、前より格段にやりやすくなった感覚がある。


その後も紅白戦をやる事になりその試合も守備でそこそこ活躍する事が出来た。


スキルを取得した事で相手のフェイントの反応が早くなり抜かれる事もあるが前より格段に良くなった。


やはり「守備反応」を取っておいて良かったと

今日の練習で実感した。

周りのチームメイトにも守備が上手くなった事を褒められた。


褒められるのは嬉しいが、試合本番でやって見ないと意味が無い。


(本番は次の試合だ!)


そして練習が終わり、監督が全員集める。


「ブロック大会の初戦の相手が決まったぞ」


監督のその一言で、さっきまでの和らいだ雰囲気が一気に真剣な物になる。

そしてみんなはホワイトボートへ視線を向けた。


監督がゆっくりとホワイトボードに黒いペンを走らせる。


『西桜クラブ(東京)』


東京といえば強豪の多い地区だが、西桜クラブは東京の中でも上位でブロック大会にもそこそこ出場経験のある普通に強いクラブだ。


決して油断できる相手では無いだろう。


「西桜か…あそこ守備固いんだよな」


「しかも攻撃力もそこそこあるしな」


対戦相手が分かり周囲から様々な声が聞こえてくる。


コーチが皆を見渡しながら言う。


「西桜は強い。だが勝てない相手ではない。去年の試合も見返したが、ミスが少なく、守備が固くて攻撃はシンプルに早い、だが隙はある。そこを突ければ十分戦える」


その言葉にみんなが頷く。


「でも、初戦の相手としては最高の相手ですよね。入りから集中できる」


「そうだ。 その意識が大事だ」


海斗先輩の言葉にコーチが頷きそしてみんなを見渡す。


「今のお前らなら、十分互角以上に戦える。後はどれだけ準備出来るかだ」


コーチの言葉に、全員の表情が引き締まった。


相手は特筆して攻撃力が高いチームではない。

だから相手にどれだけ守備が通用するか試せる

チャンスでもある。


そしてコーチが締めの声を上げる。


「明日からは西桜戦に向けた練習にするぞ。

いつもよりハードになると覚悟しておけ」


「「「「「はい!」」」」」


声を合わせてみんなで返事をする。


(今の俺が何処まで通用するか試したい。初戦、絶対勝つ!)

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