音のない森

穏世見

幕間 ある日の日記

 ○月○日


 このお仕事をつづけて何度目かしら。

 村長さんに森の薬草をとってくるように頼まれて、もう随分経つなぁ。

 そろそろ薬草を見つけるのも、大変になってきちゃった。森の中を一日中歩き回っても、一つ、二つくらいだもの。


 でも、このお仕事をするとみんなすごく喜んでくれるの。ありがとうって、これはあなたにしかできないことだからって。

 みんなが喜んでくれるとわたしもとっても嬉しい。だけど、変なの。


 村のみんなは、ぜったいにあの森に入ろうとしないの。みんなこわがって、入ろうとしないの。

 気になったからとなりのおばさんに聞いてみたの。あの森には、おそろしいかいぶつがいるんだって。だから、みんな入りたくないんだって。


 そんなのうそっぱちだわ。


 だって、怪物なんているわけないもの。

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