新版 走れメ□ス

雪解わかば

第1話 メ□スは激怒した。

 メしかくスは激怒した。






 ――っておい、どうなってるんだこの小説は。作者出て来い!


「んー、どしたー?」


 お前がこの小説の作者か。というか、なんなんだその態度は!


「え、私なんかした?」


 どう見てもこの冒頭、丸パクリじゃねーか。


「そうだけど?」


 そうだけど、じゃねーんだよ!

 お前、本当に理解しているのか!? この小説がコンテスト応募作ってこと!


「うん。だから高評価を得られるように名文をお借りしてみたー。小説は書き出しが重要らしいもんね!」


 ……お前のは引用じゃなくパクリなんだよ。

 しかも、だ。小説はオリジナリティが大事なんだぞ。少しくらいは自分で考えてみろ!


「いや、だって小説書くの初めてだし……」


 え!? それでいきなりコンテストに挑戦かよ。


「なにか変だった?」


 ……いや。人それぞれだからいいんだけど、度胸あるなぁって。


「でしょ? 目指すは大賞一直線!」


 ごめん、それは流石にコンテスト舐めてるわ……

 ――そもそも、だ。なんで小説賞に応募なんかしようとしたんだ?


「賞金欲しさだけど」


 …………え…………はぁ!?


「たった1万字の文章を書くだけで賞金10万円だよ! これでも現代文の成績はいいんだから!」


 まさかの懸賞感覚かよ。これは舐めてるなぁ……第一、1万文字も書く苦労を知らないくせに……

 全く、最近の若いのは……ブツクサブツクサ


「今更だけどさ」


 ん、どうした!? こちとらお前のせいで機嫌わりぃんだよ!!!


「あなた、誰? さっきからうるさいんだけど」


 この俺をうるさい呼ばわりとは……まぁ、本当に知らないようだから自己紹介してやる。


 俺はだな、お前の書いた小説そのものなんだよ。

 『メ□スは激怒した。』とかいうふざけやがった文章のなぁ!

 

 俺だって立派な作者のもとで受賞するのが夢だったんだよ! しかし、だ! よりにもよって作者がコンテストをペロペロに舐めまくった腑抜けだったとは、全くだ!


「私の小説……? まぁよく分かんないけど、受賞したいっていうのは一緒なんだよね?」


 あぁ、そうだ! もっとも、お前に受賞できる実力があるとは思えないけどな!


「じゃあさ、私が大賞を取れるようにさ、小説のこと教えてよ!」


 え、普通に嫌なんだが。第一、お前やる気なさそうだし……


 メ□スには政治がわからぬ。メしかk――――っておい! 唐突に文章の続き書くなよ! しかも続きまで丸パクリじゃねーか!


「協力してくれなかったら、あなたがこうなるだけだと思うけど? そして日の目を浴びぬままインターネットの深海をふらふらと……」


 こっわ。お前、大人しそうな見た目のクセに……


 …………しゃーねーな。わかったから、俺と一緒に小説を書いて、な。受賞しよう、な! (だから丸パクリだけは勘弁を……)


「やったー! ありがと、これからよろしくね!」


 お、おう……よろしく……

 とりあえず、だ。冒頭のパクリ文、消してくんね?


「あ、それは無理」


 え、なんでだよ!?


「この小説、原稿用紙に万年筆で書いてるからー」


 まさかのアナログだったとは……いつの時代だよ。 

 じ、じゃあ新しい原稿用紙持ってこい!


「あー、それなんだけどね。万年筆を買うのでお小遣い全部使っちゃって、新しい原稿用紙を買うお金がないんだよねー」


 く、くそぉ…… というか、万年筆このために買ったのかよ……

 まったく、お前ってやつは……


「あっ、パソコン持ってたからワープロソフト使うかぁ」


 ――それ、先に言えよ!


「じゃあ、新しいファイルを作成して……」


 おう、その調子だ。






 メ□スは激怒した。




 ――――――は!?


≪つづく≫

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