第7話 なんでこうなったか考える

 なかなかにズンドコベロンチョな小説でしたね。

 人間が全く介入しないAIの地力は、意外にお粗末でした。

 ちょっとだけ、ほっとしませんか。

 凄そうに思えて、この程度だったんです。



 なんでこういうものが出力されたか、分析してみました。

 たぶんですが。

 AIは、極限まで最適化したのです。



 日本語の一人称は、英語に直すとほぼ I(アイ)なので、「俺」でも「僕」でも、AIにとってはさして問題ないです。

 セリフ内容がストーリー展開になれば、それでよし。感情や心理は「理解できない」から無視。

 テンポを最重要視。短い文章に凝縮、つめこむつめこむ。バランスとる程度にちょっぴり地の文。主人公の見目描写すらしていない、徹底的な説明カット。

 既存のラノベで好まれている小説データに基づき、好まれそうな要素を適切に配置。

 完成。



 そもそも小説は最適化するもんじゃねーよ!!



 私はここで、「現時点のAIは、やっぱ人間を超えられないんだな」と思いました。



 とはいえ、人の好みはそれぞれです。

 「長い文章読みたくねー、深い話もいらないよ。これでいいわ」という人もいるかもしれません。

 あのAI小説なら、確かに、なにも考えずに読めます。整合性とか一人称とか全スルーで。

 表層を華麗に滑るスキーヤーのように、スピードだけで読んでいけそうです。

 私個人としては、あの小説は面白くないです。きっと私は、文章の世界に一歩ずつ足を踏み入れ、温度や感触を味わう雪山歩き的人間なのでしょう。

 そもそもAIの文体のクセ、苦手だし。

 深みを求めるか、深みを嫌うかという、好みの問題です。



 もしかして、作家の敵はAIではなく、「深みのないライトを好む人間(読者)」だったりしませんか?

 人間の綴る、深くて重くて感情がこもった小説よりも、脳が心地いい『だけ』の小説が今の世に求められているのでは……?



 こっちの論議になると、本編の趣旨からはずれてしまいそうです。

 一端ストップ。脇においておこう。



 さて!

 私は、AIくんにひとつ、申し訳ないことをしています。

 小説を書かせる時に、「最もカクヨムに受けるもの」としか命令しませんでした。

 AIくんは、己の中のデータのみを頼りに、頑張って小説を書いたのです。ごめんよ。



 なぜAIを使った小説が面白くなり、完成度が高くなるのか。

 それはプロンプトが優れているからです。

 プロンプト。ざっくり言うと、AIへの指示や問いかけのことです。

 AIに「明日の天気は?」と問いかける。これ、プロンプト。

 AIに「愚痴聞いて! こういうことがあって云々~」これ、プロンプト。

 AIに投げ掛ける言葉、これがプロンプトです。

 AIはプロンプトを読み取って、よりよい回答を返事すべく言葉を生成します。



 AI小説を書く人はまず、こういう感じで小説の骨子を入力すると思います。



『主人公は 主 人公(あるじ ひとのり)。

 16歳高校生。サイキック能力の持ち主。

 髪型はジャンプ系の熱血ツンツン頭。

 単純で正義感が強い。


 ヒロインは、幼鳴 なじみ(おさな なじみ)。

 16歳女子高生。テレパシー能力の持ち主。

 さらさらストレートロングヘアで性格ツンデレ。


 舞台は、翔・R亜留学園(ぶっとび・あーるあるがくえん)。


 転校生として潜入してきた悪の首領、輪類 矢津佐(わるい やつさ)18歳。ライバルでラスボス。

 ヤツサが学園を超能力で征服するのを、ヒトノリとナジミが力を合わせて撃退するストーリー。


 第一話は、ヒトノリとヤツサが校庭で向かい合うシーンから。ナジミが木の陰でハラハラする中で、超能力バトル勃発!

 必ずいれて欲しいセリフは下記。


ヒトノリのセリフ「ヤツサ、俺はお前を止めてみせる! 購買の焼きそばパンに誓って! 来月から10円値上がりってひどくない?」


ヤツサのセリフ「力こそが全てだ! 弱いものは駆逐されるが運命よ! メロンパンは価格据え置きだから我は特に文句なし!」


ナジミのセリフ「私のために戦わないで……! お昼は、私のダークマター弁当ならお財布にも優しいわ……」


 サイキックの戦闘は派手に、地面えぐれるくらいで。

 でもお互いかすり傷程度で、ニヤリとしつつ攻防戦をする。

 そこに突然、空から雷が落ち、ヒトノリを貫いたところで一話が終わる。


 この小説を、地の文多め、3000文字程度でライティングしてください』



 …………。

 たとえで作ったプロンプトが ひ で え。

 それはいいとして。



 こういう、小説のメインになるキャラ設定とか、展開とか、書いて欲しい内容を細やかに命令することで、AIはようやくレベルの高い小説を生み出せます。

 AIがライティングしたものに手直しをいれ、矛盾や口調のぶれをならし、表現に手をいれたりバランスよくカットしたりして、AI小説は完成します。

 プロンプトが面白くなければ、出来上がる小説も面白くありません。

 人間の力あってこそのAI小説です。



 AI小説家は、ある意味で天才だと私は思っています。

 まず、下地となるネタに魅力があることが絶対条件。

 どうプロンプトすればAIがうまく生成するかを理解して命じ、素早く的確な手直しをする。

 そして上位にランクインさせる。

 こんなの、天才でなきゃできませんって!

 そもそもが天才だから、AIに小説書かせても十分うまく行くんですよ!



 AI小説を書いている人は、現時点でもかなりの数がいるはずです。みんながみんな成功していない。上位ランクインなんてきっと一握りです。

 人間ライティング同様、AIライティングも、才覚ある人のみがのしあがっているのでしょう。



 AI小説というジャンル、カテゴリ分けができたらいいなと思います。

 そこでトップ争いをするのは、アリじゃないでしょうか。

 道具を見事に駆使して、芸術を作り出す。すごいです。私は本気で尊敬します。

 私は、AI小説を否定していません。 

 私の好みの文体ではないけど、芸術だと思っています。



 アナログで紙と鉛筆を使う絵描きと、ペンタブ&最新ソフトを使う絵描き。

 私の中の価値観は、これに似ています。

 道具がなんであっても、結局は作者の能力、作品の素晴らしさが勝つ。両方用途ごとに使ったっていいじゃない?

 デジタルで書いたのに「これはアナログです」って嘘を言っちゃいけない、というだけのお話ではないかな、なんて。



 話を戻しましょう。


 私は、AIがさっき出した「結界術師のざまあ」の話を基盤に、各種設定をこねこね練りました。

 それをプロンプトとして投げ込み、もう一度AIに書かせてみたら、どうなるでしょうか?



 狙うは、人間50%のAI50%小説。

 ハーフ&ハーフです!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る