死にたい君と僕の手
千香
第1話
深夜。星空を見ながら、コンビニから遠回りをして帰る途中だった。
冬が終わり春が近づくような微妙な気温の中でも、風は冷たかった。車通りは少なく、街灯も所々にしかついていない。
帰っても寝れないしなぁ。てか、寒くね。
そう思いつつ、上着のポッケに手を突っ込んで猫背のまま歩いていた。
前の方に人影なのか、それとも街灯の影なのかなんなのか分からなかった。だが、影は揺れていた。
近くに行くと影は、川の方に伸びている。
街灯の明かりでその影がはっきりと分かった。
それは、人影。
その人は、橋の手すりに手をかけて前のめりだった。
強い風が吹けば川に落ちるような姿勢。
俺は見てしまった。
その人の手は自分の重心を支えているからか、それとも不安なのか震えていた。
風が吹く度横顔は、後ろの髪が顔に触れ首筋が見えた。
やばい場面に来てしまった。死なれたら気分が悪い。
それが本音だった。
助ける自信は無かったし、助ける言葉も知らない。もっと言えば、止め方や声のかけ方は知らない。
だけど、ここで引き返す訳にも行かないし通り過ぎれるほどみて見ぬふりは流石に出来なかった。
その人の横顔は不安そうで目には涙を浮かべていた。
頭をフル回転させる前に声をかけていた。
「……コンポタとココアどっちがいい?」
本当に無意識の言葉で、普通過ぎてる言葉だったし自分でも驚いた。
街灯の下その人はゆっくり振り向いた。
顔色は悪くてよく見ると腕や脚は、痣やキズがあった。
「……いらない。」
その声は小さく弱々しかった。
もう一度川の方に顔を向ける。
本当に死ぬつもりなんだ。
「寒くないの?」
この言葉も対応の仕方が、分からなすぎて出た言葉だった。
ゆっくり静かに口を開く
「……寒いけどどうでもいい」
言葉は軽いのに心に…いや、心臓に刺さる。
喉がつまる感じで呼吸が浅くなりそうなのと、鼓動がうるさくいつもより早い。
居心地が悪すぎる。なにか話さないと、なにか。なんでもいい。
「なら、ココアあげる。そんな事より今日はやめなよ」
ただフル回転させてたけど口から出たのはそのセリフだった。
引き止めるのは、引き止めた。けど、飛び降りようとしてる人に言うのは違う気がする。
それに目の前では死んで欲しくない。俺のエゴに過ぎない。
「いつならいいの……私ももう限界なの……」
か弱い声だったけど強く言い放った
俺はまた考えてしまった。
「俺は決めれない。でも今日はやめとけよ……」
その人の肩が震えていた。
泣いてるのか寒さでなのか分からなかった
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