第10話ギャル神の力で人心掌握?!

数分駆けずり回りようやくたどり着いた医務室。立原さんは寝ていた医者を叩き起し薬を出すように頼んだ。否、脅したに近い。


「こちらが火傷に効く塗り薬で…」


腕の良さそうな中年の医者から塗り薬を受け取り巨大な爪で難なく缶を開ける。


「その爪でよく開けれるね…」


「ギャルなめんなし。そだ、おぢもういいよ。薬ありがと。おやすみ〜」


おぢ、もとい医者はショックを受けながら自室へトボトボ戻っていった。相変わらず自由人だな。


「あ、そうだ。助けてくれてありがとう。立原さん」


「いいってことよ〜てゆか目覚めたらまたドラゴンになっててビビったわ〜」


「確かに…もしかして一日過ごす毎に現実世界と行き来しちゃうのかな?」


「なにそれ?!超ファンタジーじゃん!」


「うん。しかも俺と立原さんだけ…なんでだろ…?」


「…ねぇまって…ってことはいつか超寝不足になるんぢゃね?!」


そこか…


「まぁ……体は疲れてないけど精神的に疲れるよね」


にしても不思議なことだ。接点もなく立原さんはただのギャルでオタクでもない。

ファンタジー目線で考えればこの世界が俺たち2人を必要としている…とかありそうだけど


「痛い?」


考え込んでいると竜王に顔をのぞき込まれた。大学で出会ったガングロギャルの立原さんの思い出はまだ新しい。温度差で目がおかしくなりそうだ。


「何が?」


「それ」


指されたのは腹部の火傷。赤みが先程より広がっていて痕になりそうだ。


「ヒリヒリするけど…見た目ほどは」


「チッ」


竜王渾身の舌打ち。中身が立原さんと分かっていても震え上がってしまう。


「あのジジィ…あとでクビにしちゃお〜っと」


「まぁまぁ…一応あの人が会談の取り付けとか竜王のスケジュール調整とかしてたんだろうし居ないと困る部分もあるというか」


生きてたらだけど


「はぁー?宮田クン殺されかけたんだよ?もっと怒っていーっつーの!」


「いやぁ…立原さんにぶっ飛ばされたの見たらスッキリしちゃって…」


「困んねぇよ。あんなジジィいなくたって」


「でもそしたら宰相って仕事を誰が…」


そこまで言ってハッとする。顔を上げると竜王の爬虫類系の瞳がキラキラ輝いていた。


嫌な予感…


「宮田クン」


「絶対ヤダ!」


「宰相に任命します!」


「いーやーだ!」


「いいぢゃん。アタシといっちょイマドキな国作ろ?」


「立原さんは何するんだよ?」


「アタシは今日みたいに敵が来たらぶっ飛ばすでしょ?後は……応援?」


「俺を過労死させる気か!はぁ……マジ勘弁して。仕事は俺手一杯だよ」


「え〜…あ、じゃあさぁケッコンする?」


ブッと噴き出し激しく咳き込む。


何言ってんだこの人は?


「そしたら宮田クンに手出す人いなくなるしセル髭こき使いたい放題ぢゃん!」


「い、一応聞くけどそれって俺の役目何?」


「え?……嫁?あ、姫か。プリンセス宮田」


なんかもう。ギャルの考えてることは分からん。


「あ、それより宮田クン。薬塗らないと」


竜王ドラギアスは長く太い爪先で軟膏を掬いとる。まさかとは思うが───


「あの、その鋭利な爪で俺の火傷を抉るおつもりで?」


「抉るなんてそんなそんな。優しく塗って、ア・ゲ・ル」


「ゃ、ちょ……あの」


「じっとして〜」


瞳をかっぴらいた漆黒のドラゴンが太い牙を見せつけながら迫ってくる。


「ぁ…あっ、あ…ア───ッ!!」


どデカいドラギアスの指遣いはめちゃくちゃ丁寧だった。


◾︎◾︎◾︎


「お、王よ…今なんと?」


全身包帯ぐるぐる巻き。折れた右腕を肩から吊り下げた哀れな怪我人、セルヴァはあんぐりと口を開ける。


ドラギアスの召集がかかったため玉座の間には百人にも及ぶ兵士の参列。そして何故か俺は竜王の傍らに立たされている。最早定位置になりつつあった。


「だぁからぁ…セル髭クビ。代わりは宮田クンにやってもらうから」


セルヴァは体をガタガタと震わせ鬼の形相で唇を噛み締める。


うわ、怒ってる…当然っちゃ当然だけど


「お、王よ!王はこの男に騙されているのです!この男は悪魔と契約し王に取り憑いているのですぞ!!」


「ふ〜〜〜ん…アタシに悪魔が取り付いている。そう言いたいんだ?」


「そうですとも!!今のドラギアス様は珍妙な喋り方をしておられますし明らかに別人のようです!」


立原さん。またいらんこと言って敵増やさないといいけど…


「取り憑かれているといえば取り憑かれている…」


「やっやはり?!」


「そう、ギャルの神に!」


しぃん…


静まり返る玉座の間。ズラリと並んだ兵士たちも目が点になってしまっている。俺も然りだ。


「ぎゃ…ギャル?」


「あぁ。ある日ギャルしんが言うのだ…この国には元気とアゲ⤴︎が足りない、と。


そしてアタシはギャル神のおぼし召しに従い、新しいことを成し遂げギャル王国を打立てようとしているのだ!!!」


のだ──のだ───とエコーがかかるほど力強い宣言であったが理解できた者はこの場で俺だけだろう。


ギャルムーヴに最早涙が出てきそうだ…


「ぎゃ…ギャル神とは一体どんな神でしょうか?」


おぃ誰だ馬鹿な質問してるのは?


「可愛くて面白くてテンションブチアゲ。つまり最強を司る神!」


全くわからん。


しかし以外にも周囲の兵士達は「おぉ…」と感嘆に満ちたどよめきを見せる。


「なるほど…つまり王はこの国を新しい方法で明るく豊かで強い国にしたい、と…」


おっと?


「その通り!君アタマ良いね!今日から宰相補佐決定!」


コラコラ。


「なーんか前は取立てろ!とか、戦え!とか言ってたみたいだけど、アレ全部ナシね。


今日からここは、ギャル王国とする!!」


一拍置いて歓声と共に拳を突き上げる兵士達。


ツッコミが追いつかねぇ〜〜〜


まさかこんな流れて纏まるとは。そう思わざるを得ないほど湧き上がる玉座の間は異様だ。


セルヴァは何がなにやら分からずその場でへたりこんでしまった。


まぁ、以前のドラギアス独裁政治と比べたらギャル王国の方が何倍もマシだろう。

兵士達からはそれが伺えるほどの歓声だ。


そういう訳でジュラ王国改め、ギャル王国が爆誕したのだった。


バァンッ


両開きの扉がけたたましい音を立てて開き、歓声をあげていた兵士達が静まり返る。


飛び込んできたのは息を切らした門番の兵士だ。


「竜王様!武器を手にした国民たちが王宮の入口に押しかけてきております!


衛兵が何とか抑えていますが…長くもちそうにありません!」


「……マ?」


ギャル王国。建国そうそうクーデターか───

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