第7話ギャルの悪口は許さん。言う時はスカッとするまで言ってやる
「つ…疲れた…」
俺は最恐の化け物、二足歩行のドラゴンに仕えるモブ兵士。
だが、なにをどう間違えたのか隣国カザ国との貿易を取り仕切る役割を与えられてしまった。
会談後、俺はカザ国の貿易大臣と取引を行い主に鉄鉱石の輸入と農作物の輸出という交易を取り付けることに成功した。
ラノベ好きで転生物はある程度制覇しているし歴史オタクの知識をフル回転させてなんとか乗り切った。
けど…主に精神が削れた…
「あー!宮田クン!こっちこっち!!」
キーンッと耳をつんざくような大声に体がふらついた。俺に仕事を押付け呑気な巨大イケボイスで呼んでくる竜王、否、ギャル王立原さん。
「だから!今の自分のデカさ考えろって!鼓膜破れるっつー……の…」
疲れのあまり素でキレてしまった。指を指した先には竜王ドラギアスと女帝ユーヴァースが。
疲れきっていた俺の顔がみるみるうちに青ざめていく。
「もっもうしわけありませんでしたァァア!」
人生初の土下座。
「あっはっは!ね、ユーたん。宮田クン面白いでしょ?」
「あぁ、そうだな。ドラギアス王が気に入っているのも頷ける。家来に欲しいくらいだ」
「あげないよ〜ん。ほぉら宮田クン立って立って」
ドラギアスの鋭く巨大な爪に摘まれ立たされてしまった。
目を細めながらニチャァアと笑う竜王に思わず「ヒッ」なんて情けない声が出る。
「今度ユーたんがカワイ〜アクセ持ってきてくれるって!宮田クンにもシェアするね〜」
いらんし。つーか仲良くなるの早すぎ。ギャルのコミュ力どうなってんだ…?
「ミヤタとやら。貿易の方は上手くやれそうか?ウチの者に粗相があったらすぐ伝えてくれ」
「い、いえ粗相だなんて…大分我が国に有利な取引でしたし…寧ろよろしいのかな、と」
「本来なら首を跳ねられ領土を削られていてもおかしくなかったのだ。
戦に負け私はずっとドラギアス王が憎くて憎くて仕方がなかった…
我が国の国民たちを殺し田畑を踏みにじった恨み…どう晴らそうかと虎視眈々と考えていたものだ」
「マヂ?!サイアクじゃん!」
イヤ、アンタがやった事だよ…確かに立原さんからしたら他人事だろうけど
「ふ…一応貴様の方から侵略してきたのだがな?」
「まっじ〜?!ゴメンじゃん!」
軽いなオィ
「だが戦は戦。負けは負け。私の力が足らなかったに過ぎない。
だがこうしてドラギアス王と面と向かって話してみてもう一度関係を築き直そうと思ったんだ。
我々には誤解があったようだからな」
「そだね!これからはマブダチだよ、ユーたん!」
竜王の弾ける笑顔ならぬ闇の笑顔。
ギャルムーヴで何故か国交が回復した。
◾︎◾︎◾︎
ユーヴァースが去り、次の予定まで暫し休憩出来るらしい。立原さんはメイドにお茶の時間があると告げられスキップで部屋に戻って行った。
やっと一息つける。緊張で凝り固まった肩を回す。
甲冑って重たいんだな…
「おぃ貴様」
背後からの声に振り返ると明らかに不服そうな顔をしたセルヴァが立っていた。どうやら俺に休まる時は無いらしい。
「えっと…何でしょうか?」
「貴様は下級兵士の身でありながら先程から偉そうな口を叩く。そして何故か王に気に入られている。
…王がおかしくなったのも貴様が近づいてからだ。さては貴様、王になんらかの幻術をかけたな?」
ほぅらやっぱりこうなった。立原さん自由人だからなぁ…といってもこのセルヴァって男───
小物、下衆、浅はか、馬鹿、老害
だからな…怒らせると面倒だし、ここは
「俺が王に幻術なんてまさかそんな…あんなお強い方に俺のような下級騎士がなにかできるはずもありませんよ…」
「だがドラギアス様は女のような話し方や仲良しごっこをするようなお方では無かった。
そして王がおかしくなった時期と貴様が近づいた時期が一致している!これは動かぬ証拠だ!」
非常に面倒な誤解である。
これまでを見る限りジュラ王国はドラギアス王の独裁政治。俺のようなモブ兵士一人を罰するのにも王の許可がいるのだろう。
でなければ今頃俺の首と体はとっくに泣き別れている。
「ではドラギアス王にそうお伝えなさってください……本当ならばきっと俺のことを厳罰に処されるでしょう。
俺はドラギアス様に忠誠を誓った身。王の下される罰ならなんなりと従います…」
「くっ…小癪な…」
セルヴァは歯ぎしりをしながらも反論が出てこないようだ。しおらしく善人のふりをしながら後ろから刺す。大成功だ。
「ふん、前々からいけ好かなかったのだあの巨大トカゲは。
…貴様のような雑魚兵士の言いなりになる愚かな王に何を言っても無駄だったな」
俺は極力人と争いたくない。相手が悪くても自分が損をする場面でも俺が引いて丸く収まるならそれでいい。
立原さんのように言いたいことを全部伝えたりしない。
でも───
「俺のことは何言われてもいいですよ。けど
「きっ貴様が許さないからなんだと言うんだ?!生意気な…やはり貴様はドラギアス様を操る悪の手先…このままで済むと思うなよ!」
怒り心頭。ビキビキと眉間に皺を刻みながらセルヴァは去っていった。
あ〜…馬鹿を刺激してしまった。面倒なことにならなきゃいいけど…
「あ、いたいた宮田クン!」
おーい。廊下の向こうから小走りで駆けてくる黒光りドラゴン。なにも知らない兵士だったら失禁ものだ。
「どしたの立原さん?」
「めっーーちゃウマイお菓子でてきてアガった!宮田クンも食べなきゃ人生損する!」
きっと目をキラキラさせてながらお菓子を宣伝してくれているのだろうが、実際は爬虫類系のガン開きした瞳が俺を睨んでいるだけで怖い。
「なんてお菓子?」
「なんちゃらショコラ!切ったらチョコレートがぶわ〜!ってでてきてガチインスタ映え!」
「フォンダンショコラかな…?」
立原さんは自由きままで仕事を押し付けてくる暴君。それでいて明るく優しく破天荒な、俺の王様───
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