【異世界転生】元暴君ギャル竜王×モブ兵士のアゲ⤴︎︎︎な王国爆誕録

あきかたりれお

ギャル王と始める異世界国造り

第1話漆黒の玉座とギャル王降臨

漆黒の玉座。その足元から赤い絨毯が伸びる。玉座の背後は巨大なステンドグラス。天井には煌めくシャンデリア。

差し込む陽の光に照らされる大理石には何百人もの兵士たち。鉄の甲冑かっちゅうを身につけ、槍を片手に縦横綺麗に整列している。


10列あるうちの、4列目前から3番目。

それが俺。


どうやら異世界のモブ兵士に転生したらしい。


◾︎◾︎◾︎


微動だにしない兵士の列。皆同じ格好で同じポーズ。その中で俺は1人ダラダラと冷や汗をかきまくっていた。


えぇ〜…何コレどういう状況……?夢?にしてはリアルだし…あ〜キョロキョロしたら目立つよなぁ……


呼吸すらするなと言われているような一糸乱れぬ隊列。ゴクリ。嚥下すら大きな音を立てているような気がする。


ギギギ


背後から扉の鈍い音。体を風が撫で扉は開かれたのだと分かる。次いで一つの足音が近づいてくる。


今振り返ったらダメだよな…


横目をやると、隊列の中心に赤いカーペットが続いている。恐らく「玉座に座るべき者」が入ってきたのだ。


足音は重く装飾だろうか。ジャラジャラとぶつかり合う音もする。

ソイツが姿を現した時、俺の全身は震え上がった。


鋭い爪と牙。黒い艶のある鱗。長く硬そうなしっぽ。見た目は強面の竜。しかし、鎧と腰には大剣を携え二足歩行である。


こ、怖ぇ!!もしかして俺が仕えてる王コレか?!ミスったら一発で首跳ねるタイプの暴君だろ絶対!


玉座にゆっくりと腰掛ける「竜王」。一様に口を噤んで立っている兵士たちがピリピリしているのが分かる。


スゥゥゥ


竜王が大きく息を吸い、俺は縋るように槍を握りしめた。


「何これ〜?超〜並んでるんだけど。写メ撮ろ写メ…って何この爪?!アタシこんなネイルしたっけ?マジダサすぎなんだけど!」


低く響く竜の喉から、信じられないほど甲高い声が飛び出した。

見た目は漆黒の竜であるのに、自身の手を広げて爪を確認する仕草はギャルそのものだ。


「てゆーか声へんぢゃね?酒焼けしたっけ?」


この喋り方。テンション。もしかして───


「……立原さん?」


「ン?アタシの名前知ってんの?つーか今喋ったのどれ?」


どうやら俺は異世界転生をしてモブ兵士になってしまったらしい。

そして同じ学科のギャル、立原たちはら衣留香いるかさんが俺の仕える「竜王」に転生したらしい───


「お、王よ…如何なされましたか?ご様子が…」


竜王の側仕えだろう。英国風の軍服を纏った老人が王の変わり身にオロオロ。


「アンタ誰?つーかここドコ?」


「へっ?!…わ、私めは竜王、ドラギアス様にお仕えするセルヴァと申します。ここは貴方様が治めるジュラ国の玉座の間にございます…」


やけにビクビクした様子だ。あの王の見た目では無理もない。


「ふぅん?そんでセルちゃん、この人たち何?なんで整列してんの?」


黒光りする鋭い爪が謎にギャルピースで俺たちモブ兵を指さす。動揺しながらも隊列を乱さない兵たちはよく統率されている。


「せ、セルちゃん…?コホン…この者たちは貴方様のご挨拶を聞くためここに招集されたのであります」


「ご挨拶?オハヨーってこと?」


ガクン。ずっこけそうになるセルヴァ。大丈夫、俺もずっこけた。


「い、いえ。今日もしかと民から税を徴収せよ。逆らうものは見せしめに縛り首に!

そしてドラギアス様に忠誠を誓うよう喝を入れるのです!

それでは今日も一つ、よろしくお願いいたします…」


「ヤダよめんどくさい。縛り首とかコワ!ってことで解散。そんなことよりアタシのスマホ知らない?なんかまつ毛のチョーシ悪いンだけど」


ドラギアス、否。立原さんは巨大な爪で爬虫類系の瞳から僅かに生えるまつ毛をつつく。


側仕えのセルヴァはあんぐりと口を開け、兵士達もついにざわめき始める。


カオスな状況に俺は笑うしか無かった。


「鏡もマスカラも無いしマヂ最悪すぎ〜…あ、そうださっきアタシの名前呼んだやつ、どれ?」


「あっ……は、はい。俺、です…」


そっと挙手。周囲の兵達が離れていきドラギアスの鋭い瞳がギッと眼力をあげた。


ヒィッ!!殺される?!


「アンタちょっと来て」


「は…ハイ」


恐る恐る階段をのぼり玉座の前へ。近づけば近づくほど増すプレッシャー。肩に重くのしかかり、立原さんだと分かっていても体が震えてしまう。


「あのさ」


「ひっ」


耳に寄せららる鋭い牙付きの口。グルル…なんて獣の唸り声すら聞こえて体が縮みあがった。


「あーしのスマホ一緒に探してくんない?」


「え?」


こうして俺と立原さんの奇妙な転生ライフが始まった───






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