第12話叱られ保育士の新しい獲物たち

新年度が始まり、その日の夜。

園の遊戯室は、新人保育士歓迎会と保護者会の合同懇親会の舞台となっていた。


夕食と酒が用意され、職員と主要な保護者がテーブルを囲んで座っている。

慣れた場所での歓迎会だが、この場に三人の新しい年下の先生が加わったことで、私の運命がどうなるのか――期待と絶望が入り混じった興奮が渦巻いていた。


まず、席順に紹介されたのは二人。


一人目は、黒髪ロングでポニーテール、目元が涼しげな久遠しおり先生。

その顔には、年上を前にしても物怖じしない、鋭い視線と自信が窺えた。


二人目は、肩までの柔らかい黒髪で、穏やかな表情の水島なな先生。

常に周囲の様子を窺い、場の空気を壊さないよう気を遣っている、繊細な印象を受けた。


そして、その場に加わった三人の新人を一通り紹介し終えた後、三人目の朝比奈まひる先生が、私に向かって特別な笑顔を見せた。


「良介先輩! まさか、この園でご一緒できるとは!改めてよろしくお願いいたします!」


私は、改めてその再会に驚きを覚えた。

まひる先生は、私が卒業した保育専門学校の一つ後輩だった。


学生時代、彼女は私が関わった女性の中で、唯一、私を年上として敬意をもって優しく接してくれた人物だった。


「まひる、まさかお前が来てくれるとはな。心強いよ」


彼女は心から再会を喜んでいる様子で、周りの視線も気にせず私に駆け寄ってきた。


「先輩と一緒に働けるなんて夢みたいです!

私、先輩のこと尊敬してるんです!」


その時、まひる先生と私を交互に見ていたゆうな先生が、いつもの悪戯な笑顔で口を開こうとした。


「へえ、良介先生が尊敬されてるなんてねー。

この人がどんな変態…」


しかし、ゆうな先生の腕を、さくら先生が素早く掴んだ。

さくら先生は、優しく、しかし有無を言わせぬ目でゆうな先生を制止した。


「ゆうなちゃん、今はやめておきましょう。

歓迎ムードを壊しちゃだめよ」


さくら先生はその後、園長先生の方に視線を送り、園長先生がそれを静かに受け止めて頷いた。

その瞬間、私の背筋に冷たいものが走った。


その直後、私のスマートフォンが振動し、メールが届いた。

私は誰にも気づかれないよう画面を見た。


メールの件名と送信者に、私の心臓は嫌な音を立てた。

このメールが、新たな調教の始まりを告げていることは明白だった。


私は静かにスマートフォンを閉じた。


まひる先生が私のことを「尊敬している」と公言したことで、他の保育士や保護者から好奇を含んだ質問が浴びせられた。


「あら、尊敬しているんですって?珍しいわね。

良介先生のどこがそんなに立派なの?」


「マジウケる!まさか、裏で何か関係あんの?

センパイって呼んでんの、ノリ?」


「良介さんが、誰かに純粋に慕われている姿なんて、私たちは見たことなかったものね。

どういうご関係なのかしら?」


いろんな角度から浴びせられる質問に、まひる先生は屈託のない笑顔で答えた。


「はい!専門学校時代は、周りが年下の女の子ばかりで、先輩が少し雑な扱いを受けることもあったみたいなんです。

でも、先輩はいつも諦めずに実習や課題を完璧にこなしてました!

どんなに酷い扱いを受けても、負けずに頑張っているところを尊敬してるんです」


その無垢な言葉は、私を支配する女性たちの口元を、さらに興味深げな、そして面白がる笑みに歪ませた。


歓迎会は、まひる先生の無邪気な笑顔のおかげで、一見和やかに進んだ。


午後九時。園長先生が立ち上がり、まひる先生に向かって優しく声をかけた。


「朝比奈先生。あなたは明日も早いでしょう。

新人研修の準備もあります。本日はもうお帰りになって構いませんよ」


まひる先生は恐縮し、「ありがとうございます!」と笑顔で挨拶し、先に会場を後にした。


扉が閉まり、まひる先生の足音が遠ざかった、その瞬間だった。


会場の空気が、張り詰めた糸のように一変した。


残った職員と保護者、そして戸惑うしおり先生となな先生に向かって、園長先生が静かに言った。


「さて、皆さま。先ほど朝比奈先生を帰したのは、理由があります。

彼女は良介先生を純粋に尊敬している。

それは大変素晴らしいことです。

しかし、良介先生の『真の役割』には、その純粋さは邪魔になります」


園長先生は鋭い目つきで私を一瞥し、そして新人二人に答えた。


「久遠先生、水島先生。こちらの良介先生は、ただの保育士ではありません。

当園において、職員と保護者全員の『規律意識の維持』という極めて重要な役割を担う、『模範的な変態』なのです」


園長先生は、私の存在価値を、感情を一切込めない業務用語で説明し始めた。


「彼の本質は『年下の女性に叱られたい』という倒錯的な欲望にあります。

その欲望を満たすため、彼は業務で意図的にミスを犯し、職員や保護者からの叱責を誘います。

彼は叱られるほどに醜く興奮し、我々はその快感を利用して彼を管理しています」


園長先生は、私を一瞥し、そして二人に向かって声を強めた。


「久遠先生、水島先生。よく見てください。

この男は今、その変態的な秘密を公にされ、羞恥の極みにあるにも関わらず、股間を硬くして悦びに震えているでしょう?

あなた方年下の新人先生こそが、彼の最も上質な『獲物』なのです」


その説明を聞いた久遠しおり先生は、目を輝かせた。


「え、マジで?叱られたくて仕事でミスする変態?

なにそれ、ちょー面白いじゃん!」


しおり先生は、席から飛び出すように私に近づき、私の正面に仁王立ちになった。

彼女の顔には、隠しようのない興奮と年上を支配する快感が浮かんでいた。


一方、水島なな先生は、顔を青ざめさせ、持っていたグラスをテーブルに置いた。


「そ、そんな…。良介先生が、本当に…?

可哀想…でも、どうしてそんなに嬉しそうな顔をしてるんですか…」


なな先生は、戸惑いと、私への憐憫が入り混じったような複雑な表情を浮かべていた。


しおり先生は、そんななな先生を無視するように、私の顔の横の壁に手を叩きつけ、命令口調で言った。


「うるさいわね、なな!面白いならいいじゃない!

さあ、良介先生。今から私は、あなたにとって絶対の女王様よ。

新人の私への最初の忠誠の証として、今すぐこの床を舐めて、私への忠誠を誓いなさい!命令よ!」


しおり先生の天然のドS女王様気質が爆発した。


私は、彼女の若さからくる遠慮のない支配に、たまらない屈辱と快感を覚えた。


なな先生は、まだ戸惑いながらも、私に静かに囁いた。


「良介先生…。私、まだよくわかりません。

でも、叱られたいなら、私でもいいんですか…?」


私は、まひる先生という無垢な逃げ場を失い、さらに二人の年下の支配者が加わった、

永遠に続く新しい地獄の始まりに震えた。


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