第8話叱られ保育士の公開授業

その日は、年に一度の保育参観の日だった。

園内には多くの保護者が訪れ、普段の二倍もの緊張感が漂っている。


だが、私にとって緊張感とは、叱られる快感へと直結する燃料でしかなかった。

この大勢の公衆の視線こそが、私の倒錯的な欲望を爆発させるための舞台となる。


朝の自由遊びの時間から、私の調教は始まった。


まず、子どもたちのおもちゃの片付けが遅れた私に対し、ゆうな先生が他の保護者の目の前でからかいを始める。


「あー、良介先生ったら、またこんなに片付けが遅いんだから。

みんなのお母さんたちが見てるのに、恥ずかしいね!

年下の私に叱られたくて、わざとやってるんでしょ?」


彼女は保護者にも聞こえる声量でそう言い、私の性癖を冗談のように、しかし公然と示唆した。


数名の保護者の視線が、好奇と軽蔑を込めて私に集まる。

この公然の暴露による羞恥心と、それが引き起こす快感の化学反応に、私の体は熱くなり、興奮で激しく震えた。


園児の一人が転んだ際の対応が遅れた私に対し、みなみ先生の冷たい叱責が飛ぶ。


「良介先生、反応が鈍い。あなたは自分の職務を理解していない。

このような公の場で、園の規律を乱す汚点を晒すのはやめていただきたい」


みなみ先生は、私の醜い性癖を承知した上で、規律と職務という名の下に私を徹底的に軽蔑する。

保護者の前での冷たい指摘は、私への軽蔑が園全体の総意であるかのように感じさせ、私の屈辱を極限まで高めた。


さらに、休憩時間に書類のミスを指摘しに来たさくら先生は、優しい声で私の耳元で囁いた。


「ふふ、今日はたくさん叱られて興奮してるようね、良介さん。

でも、こんなにたくさんの人が見ている中で叱られるなんて、あなたは本当に手のかかる子だわ。

私がこっそり管理してあげないと、どうなっちゃうのかしら?」


その優しい言葉は、私と彼女だけの秘密の支配を再確認させ、公衆の面前での屈辱に対する最も甘い「ご褒美」のようだった。


そして、園長先生は、朝の職員への挨拶の際、私だけを名指しした。


「良介先生。今日は保護者の皆様が見ている。

大勢の目の前であなたの醜態を晒し、屈辱を与える日よ。嬉しいでしょう?

私があなたという『汚点』を、いかに完璧に管理しているか、隅々まで味わいなさい。

私の期待を裏切らないよう、常に最高の屈辱を感じていなさい」


園長先生の言葉は、私が「叱られる模範」として機能するよう、私への重圧をかけた。

四人の支配者からの異なるプレッシャーと屈辱が、保育参観という公の場で見守られながら、私の体を終日苛んだ。


午後は保護者会。

園長先生が挨拶を終え、質疑応答に入った、その時だった。


黒髪をきっちりまとめ、知的な眼鏡をかけた安藤すみれママが手を挙げた。


「園長先生。少しデリケートな質問ですが……良介先生のことです」


職員席に座っていた私は、全身が凍り付くのを感じた。


「午前中も拝見しましたが、良介先生への叱責が、他の先生方へのものと比べて、明らかに過剰に見えます。

特にゆうな先生の『叱られたくてわざとやってる』という発言は、冗談にしても教育者として度が過ぎているのでは?

何か、特別な事情があるのでしょうか?」


園長先生は静かにマイクを握り、絶対的な威厳を持った声で私の最も深い秘密を暴露した。


「正直にお話しいたします。良介先生には、年下の女性に叱られること、軽蔑されることに異常な快感を覚えるという性癖がございます」


会場がざわめいた。

社会的な死の宣告。私は羞恥心で、頭を下げるしかなかった。


園長先生はさらにマイクを突きつけた。


「良介先生。さあ、保護者の皆様に、あなたの醜い性癖と、それが園に与えた危険について、あなたの口から詳しく説明しなさい」


マイク越しに、私の荒い息遣いが会場全体に響き渡る。


「は…はい……わ、私は……年下の……先生方に……叱られることに、興奮を覚えます……それで……わ、わざと……ミスを……」


自分の最も恥ずべき秘密を、社会的な場で自ら告白する。

その行為は、私の存在を完全に支配者たちの手のひらの上にあるものへと確定させた。


「彼はこの園の規律を乱す危険な存在ですが、解雇は園の評判に関わるため、園という公的な場で、彼の性癖を矯正し、園の安全を守るために、性癖を利用した調教プログラムを極秘で実行しています」


園長先生は続けて言った。


「これは、園全体の安全を守るための、必要な業務です。

そして、保護者の皆様にも、園の安全を守る『規律委員』として、この調教にご協力をお願いしたいのです」


園長先生の言葉に、保護者たちからの視線が一斉に、嫌悪と好奇、そして優越感を伴って私に突き刺さった。


最初に動いたのは、すみれママだ。

彼女は、理知的な眼鏡の奥から冷たい光を放ち、職員席に座っている私の前に進み出た。


「良介先生。あなたのせいで、私たち保護者が、このような倒錯的な事情を聞かなくてはならない。

保育士として、あるまじき行為です。社会的、倫理的に絶対的な過ちを犯しています。

この場で、私たち全員に反省の意を示してください」


続いて、明るい金髪のみくママが、ノリの軽い調子で続いた。


「えー、マジ引くわー!年下に叱られたくてわざとミスるとか、ウケるー!」


みくママは、呆れと面白さが混じった声で言った。


「保育参観中もさ、マジで手が震えてたじゃん。

そんなに叱られたいなら、この場でちゃんと謝罪してよ!

ねえ、せんせー、マジダメじゃん!」


他の保護者たちも次々と声を上げる。


「本当に気持ち悪い!私たちより年上なのに、こんな趣味で子供たちの安全を脅かさないで!」


「え、叱ると喜ぶってこと?じゃあ私たちも先生のこと叱っていいの?最高じゃん!」


「園長先生のおっしゃる通り、園の安全のためですもの。私にももっと叱らせてください。

あなたのその醜い性癖、徹底的に矯正してあげますわ!」


「ほら、良介先生!早く頭下げなよ!マジでさ、なんでそんなにノロいの?

私が教えてあげるから、早く屈服してよ!」


-私は、園長先生の監視の下、職員たちの静かな視線の中、

そして保護者たち全員の追求を浴びながら、両膝をついて頭を垂れるしかなかった。


社会的な権威と倫理的な正義、そして大衆の好奇心という、全ての鎖が私に巻きついた。


こうして、私の調教は、園の全権威と、社会的倫理観、そして保護者たちのノリまでも巻き込んだ、完全な公開調教へと姿を変えた。


私はもう、逃げ場も隠れる場所もない――この園の「公開サンドバッグ」となったのだ。

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