第3話 AAA級の女戦士。

「見事な腕前ね。あなた、アタシとパーティーを組んでみない?」


 倍人間ヒューマンの女戦士が、興味深そうに俺の顔を見つめている。

 長い金髪をアップにまとめ、戦士らしからぬへそ出しミニスカのずいぶんと露出度の高い服の腰に、鉄製の鞭を装備している。なるほど中衛の戦士という事か。


 女戦士は話を続ける。


「アタシは、いばらのアイリーン。先月から岬のダンジョンにアタックをしているの。ダンジョンの深層までたどり着いたんだけど、見たこともない施錠がされた扉が行く手を阻んでしまってね」


 深層までたどり着くとは、見かけによらず、腕利きの冒険者らしい。いや、この女は添え物で、仲間が手練れって可能性もあるな。

 慎重にいばらのアイリーンとやらを値踏みするなか、彼女は話をつづける。


「パーティー内に、鍵に明るい仲間もいないし、ほとほと困り果ててしまったの。なもんで腕のいい鍵職人を探してここを訪れたら、鍵職人のアンタを紹介されたってワケ」


 そう言って、いばらのアイリーンは親指でカウンターを指す。振り返ると受付嬢がヒラヒラと手を振っていた。


「報酬は?」

「パーティみんなで山分けよ。今の仲間はアタシを含めて3人だから、4等分ってことになるけど。構わない?」

「なるほど……悪くない条件だ。交渉成立だな」


 俺は手を差し出すと、女戦士は頬を赤らめながら、両手を俺の手を包み込む。


「本当? 良かった、断られたらどうしようかと思っちゃった。じゃさお近づきの印に、カンパイと行きましょう! おねーさーん。エールをふたつ頂戴! 大至急!!」


 アイリーンは、ホールスタッフの少女からジョッキをふたつ受け取ると、俺に手渡す。


「素晴らしい出会いにカンパイ! ティックさん、これからよろしくね♪」

「ティックで構わん。よろしくなアイリーン」


 俺たちは、樽のジョッキを打ち付けると、宴会を開始する。


「おいおい、あのちび助、いばらのアイリーンのパーティーに加わったみたいだぞ!」

「うらやましいな。絶世の美女トリオの中に男一人だなんて……」

「あんなちび助で大丈夫か?」

「さっきのいさかいを見る限り、そこそこ腕は立つみたいだが、アイリーンふくめ、彼女たちは、みんなAAA級の冒険者だからな。どうせ足をひっぱって、すぐにお払い箱さ」


 AAA級だって!? 探索制限を課せられない特級冒険者じゃないか!! 俺はアイリーンに質問する。


「パーティは、おまえ含め3人だったよな。残りふたりを紹介してほしいんだが」

「そんなの後々、今はお楽しみの時間よ! さあ、飲んで飲んで!!」


 戸惑う俺をよそに、アイリーンは途切れることなくエールを注文する。

 まあ、いいか。明日になればわかることだ。俺はアイリーンに勧められるまま、エールを浴びるように飲みまくった。


 ・

 ・

 ・


「はっ!? ここはどこだ??」


 目覚めると、俺は宿屋のベットの上だった。素っ裸だ。


 ん?


 俺は人の気配を感じ、恐る恐る振り返る。

 そこには……アップにしていた髪をおろし、一糸まとわぬ姿で静かな寝息を立てる、アイリーンがいた。


 や、やっちまった!! よりにもよって、異種族と寝ちまうだなんて!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る