日常に潜む、ほのかに怖い物語②(2025年文披31題・ショートショート八編)
明日月なを
第1話「私とあたし」お題・鏡
毎年お盆は、家族そろって、田舎のおじいちゃんちで過ごしていた。
ただ、おじいちゃんちの裏手には
何でも、行方不明になった人もいるという、いわくつきの森だった。
そんな話を聞かされて育った私は怖くて怖くて、注意されるまでもなく、森に行こうなんて思わなかった。
けれどもある日。
ちょっとしたことで父に
真夏なのにひんやりとした空気や、知らない鳥の声。不意に、がさっと音を立てる
そのどれもが
「わあ……!」
その光景を見た
それほどまでに、その湖は美しかったのだ。
まるで、鏡のように。
私は引き寄せらせるようにして
その途端。体を抱き止められ、湖から引き離された。
見ると、父親だった。
「さっきは言い過ぎた。けど、この森には近づくなと言っただろ? ……行方不明者がいると言ったけど、本当は違うんだ。この湖には魔物が住んでるらしく、覗いた者を別人のように変えてしまうといういわれがあるんだ。……何ともないかい?」
「やだな、何ともないよ。ほら。別に、どこも変わってないでしょ?」
そう言って、父親の前でくるりと回ってみせる。
ほっとしたような父親の笑顔を見てとり、あたしもくすりと笑った。
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