Windowsよ甦れ! ~俺とAIの壮絶トラブルシューティング~
AI実験ch
第1話 10年前に買った中古パソコン
俺の名前はゆうた。34歳、独身、フリーランスのライターだ。部屋の片隅に鎮座するのは、15年前に発売された業務用ミニタワーPC「Lune ProOffice 7100 MicroTower」。10年前、中古ショップで2万5千円で買ったやつだ。
正直、スペックなんてどうでもよかった。起動してブラウザが動いて原稿が書ければ、それでいい。10年間、本当に何も起きなかった。Windows Updateは黙々と当てて、「まだ動くじゃん」と笑ってた。
それが、2025年11月のある朝、突然終わった。コーヒーを淹れて、いつものように電源ボタンを押す。プー、ピッ、プー、ピッ……聞き慣れないビープ音。モニターは真っ暗。何度再起動しても同じ。
フォーラムを漁ると「5-2パターン=グラフィックスエラー」。外付けGPUなんて積んでない。つまりマザーボードが死んだ可能性大。
「……終わった」
10年分の原稿、写真、ブックマーク。全部この鉄の箱の中。
バックアップ? 取ってない。
途方に暮れてスマホを見ると、最近入れたAIチャットアプリが目に入った。
名前は「グラン」。ダメ元で打ち込んだ。
「15年前のPCがビープ音鳴って起動しない。助けて。」
数秒後、返信。
【グラン】
おはよう、ゆうた。
まず落ち着け。まだ終わってない。
PCの情報を教えてくれ。
「以下がPCの情報だ。」
メーカー:Lune Computer(架空)
機種名:Lune ProOffice 7100 MicroTower
OS:Windows 10
CPU:第1世代 4コア 3GHz
メモリ:8GB
HDD:250GB
情報ありがとう。正確なビープ音のパターンは?
「プー、ピッ、プー、ピッ……繰り返してる」
【グラン】
了解。Lune ProOffice 7100の5-2パターンだ。でも安心しろ。死んだわけじゃない。まず一番簡単で効果が高いやつからいくぞ。
初手は放電だ。
PCをシャットダウンしたら電源ケーブルとケーブル類を全て抜いて、電源ボタン10秒長押し。ネットには「30秒で十分」って書いてあるが、本気で直したいなら、最低1時間完全放置が鉄則だ。残留電力がマザーボードの隅々に残ってる場合がある。
「……1時間かよ」
俺はコンセントとケーブル類を抜いて、時計を見てソファに座った。
コーヒー飲み干して、スマホいじって、時計がちょうど60分経過。震える手でケーブルを戻し、電源ボタン。プー、ピッ、プー、ピッ……まだ鳴る。
「グラン、だめだ。」
【グラン】
残念、放電はハズレだ。でもこれで残留電力は完全にゼロになった。
次はPCのケースを開けてメモリの抜き差しだ。
俺は埃まみれのケースを開け、メモリを抜いて埃を払い、しっかり差し直す。
再起動。……またビープ音。
「グラン、またビープ音だ。」
【グラン】
よし、次だ。超重要な確認がある。
お前の7100、購入してから何年経ってる?
「10年以上は経ってるかな。」
【グラン】
なら、まずCMOS電池だ。10年経ってるなら100%切れてる。電池が死んでるとCMOS設定が毎回リセットされて、起動時に『時間リセット→ビープ音』になるケースが山ほどある。特に古いPCだと、設定リセットでグラフィック初期化に失敗し、本来のグラボエラーと同じビープ音を吐くことがあるんだ。CMOS電池は家にあるか?
「ない。」
「それなら、すぐにコンビニに行け。もちろん100円ショップや家電量販店でもいいが、急ぐならコンビニが一番早い。」
「わかった。すぐに買いに行く。」
俺は近くのコンビニでCMOS電池を購入し家に戻った。
「グラン、CMOS電池を買ってきた。」
【グラン】
よし、それでは最初にCMOSクリアだ。
ケースを開けて電池を外したら10分ほど放置するんだ。
「わかった。」
ケースを開けると、マザーボードの隅にぽっかり空いたソケット。
古い電池は完全に液漏れ寸前で、端子が緑に腐食していた。
「うわ、ヤバい……」
古い電池を外して10分ほど放置を行った。
「グラン、CMOSクリアが終了した。」
【グラン】
よし、新しいCMOS電池をセットするんだ。電池を交換したら日時がリセットされる。BIOS画面で現在の日時に設定してくれ。
新しい電池に入れ替える。カチッ、という小さな音がした。
よし、これでCMOSは生き返った。
震える指で電源ボタンを押す。……ビープ音が鳴らない。モニターが点灯。
BIOS画面で現在の日時に設定する。
そして――Windows 10のロゴ。デスクトップが、10年間見慣れた壁紙と共に現れた瞬間、俺は本当に声を上げてしまった。
「生き返った……!!」
【グラン】
おめでとう、ゆうた。
そして、おかえり――Lune ProOffice 7100。
たったのボタン電池一本で、15年選手はまた息を吹き返した。俺はスマホに向かって、震える声で呟いた。
「……お前、ほんとすごいな」
しかし、俺はまだ知らなかった。
この小さな電池交換が、後に続く壮絶なトラブルシューティングの、ほんの序章にすぎなかったことを。
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