1.ラミリヴァ
一六二〇年九月。
“ティアーデ”と呼ばれる世界の“大大陸”中東陽北部地域を中心に広大な領土を持つ地域大国ローディアニア連邦共和国。
六年に及ぶ内戦でリヤフ大公国が滅亡し新たに建国されてから九年。
国内各所で復興が進められる中、アルジェスクと言う名の田舎町の教会の一室に一〇歳前後の子供たちが集まっていた。
様々な子供たちの視線の先で地球で言う所の黒板の様なものに何やら書き込んでいる女性の名はラミリヴァ。
周囲からは“ラミ”と愛称で呼ばれている彼女は種族特有の黒い肌に肌とは対照的な白色の髪と透き通った薄青色の眼を持ち何処か神秘的な容姿をしている。
顔立ちからは一〇代中頃から後半と言った風に見えるが纏う雰囲気はとても大人びていた。
「今日皆さんに教える言葉は“悠雪”です。溶けて消え去っても冬が来ればまた降る雪の様に決して忘れられない人や物、経験を指す言葉です。前回話した“忘氷”と共にアイシアラ正教ではとても重要な言葉であり大切な考えとされています」
書き込みを終えて子供たちの方へ振り返るとラミは説明を始めた。
穏やかな口調に優しい声音。
しかし、教える彼女の表情は真面目・・・と言うより無表情に見える。
彼女が教えているのはこの国の人々が信仰する“アイシアラ正教会”の言葉。
だが彼女は教会関係者でもなければこの世界の教師に当たる“指導官”ですらない。
彼女は“軍人”であり、彼女が身に纏う濃茶色の軍服がその証と言えた。
ラミは九年前に終結した内戦に幼くして巻き込まれそのまま身を投じ、戦後も部隊に残ったことで今ではローディアニア陸軍の正規兵となっていた。
階級は曹長である。
そんな彼女が何故子供たちに授業を行っているのか。
一言で言えば軍務であり、この様な軍務が生じた要因は“復興の遅れ”だった。
ローディアニア建国後、政府は直ちに復興に取り掛かった。
最優先の復興対象となったのは国境地域や“魔物”が巣食う“魔帯”に接する地域であった。
これは国防の観点からも当然のことだろう。
しかし、その次に注力されたのは南方地域の“領土の復興”だった。
復興などと言ってはいるがその実は内戦中に独立を表明した南方地域の武力による再統合である。
当初一~二年で済むと思われた南方地域の復興であったが各地に独立を求める武装勢力が潜伏し抵抗運動を続ける事態を招き泥沼化。
本来復興に向けられるべき貴重な人員、資源、そして時間をだらだらと消費する状態が続いていた。
復興の遅れは治安の悪化を招き、内戦による人口減少を要因とした人手不足と合わさって物流の混乱や生産不足など様々な問題に広がって国内では混乱が続いている。
その様な状況の為、リヤフ大公国時代に行き届いていた教育環境の再建は遅々として進まなかった。
これを問題視したのがアイシアラ正教会だ。
この世界では“八聖神”への信仰が主流だが、八聖神すべてではなく一部の神々のみを信仰対象としている地域信仰も存在する。
アイシアラ正教はそう言った地域信仰の一つとされ、氷の女神アイシニルとその娘である氷の神竜グラセドリナを信仰対象としている。
ローディアニアの主要地域であるレージア地方とヴァーシェ地方はどちらも広大な寒冷地帯であり、かつては年間一〇か月以上も冬であった。
現在は半年程度にまで短縮されているもののそうした寒冷な環境が独特の氷や雪に対する文化を育みアイシアラ正教の信仰へと繋がったとされる。
そのアイシアラ正教は先の内戦の終結に貢献したこともありローディアニア建国に合わせて国教に定められ影響力を強めていた。
それでも積極的に政治に関わろうとはして来なかったのだが、あまりの遅れに腰を上げざるを得なくなったと言える。
正教会は内戦によって教育を受けられなかった若手世代が人手不足により社会に身を投じる中、識字率の低さや基礎知識不足に起因する失敗や事故の多発を問題視。
これを解決すべく基礎的な指導だけでも行い、更に宗教指導を行うことで最低限の倫理観を身に着けさせようと考えた。
だが“六歳以上、二〇歳以下”を対象とした臨時教育所を開設すると想定を上回る数の子供たちが各地の教会へ学びに来る事態となった。
教会もまた人手不足でありどうしたものかと対応に苦慮していた所、治安維持の為に各地への部隊派遣が決まった軍が協力を申し出た。
内戦中に正教会は主に医療面で軍を助けてくれた為、その恩を返そうと言うことらしい。
こうして各地の治安維持部隊から“教育支援要員”の派遣が行われた。
“軍人”であるラミが“教会”で“指導官”をしているのにはそうしたややこしい事情があった。
ティアーデの世界は一年が三六一日だったりと地球とは色々な違いがあるものの一か月は三〇日、一週間は七日、一日は二四時間と共通点も多い。
教会の教育支援活動は週五日行われ、ラミはその内二日から三日。
午後の二時限を担当し授業科目は“国内地理”と“魔学基礎”の二つ。
午後の授業は二時限だけの為、ラミが教える日は彼女の授業がその日の最後となる。
最後の授業の後には宗教用語の解説が行われており、それが終われば一日の教育時間はすべて終了だ。
本来なら地球で言う所の修道士に当たる正教会の“教士”たちが授業の終わりを見計らってやってきて用語を教えるのだが、ラミの時だけは来ない。
別にラミが嫌がらせを受けている訳ではなく彼女が指導官を務める日だけは代わりに彼女が用語解説を行うことになっていた。
これはラミが正教会の知識に通じており、多忙な教士たちに代わって教えることを彼女から申し出た為であった。
「・・・今日の授業はこれでおしまいです。皆さんお疲れ様でした」
“悠雪”とやらの解説を終えたラミがそう告げると子供たちがあっという間に立ち上がった。
そして足早に部屋を出て帰路に着く・・・のが普段なのだがラミが指導官の時だけは違う。
子供たちは互いに示し合わせた訳でもないのに挙ってラミの下へ集まると瞬く間に取り囲んでしまった。
“何事”かとつい身構えそうな所、ラミは驚いた様子も無く無表情のままであった。
そうした状況が“いつもの光景”だからと言うこともあるが、そもそも彼女が動じない性格であることが最大の理由だろう。
ラミは終始穏やかな口調に澄んだ優しい声音ながら常に無表情だ。
彼女が纏う大人びた雰囲気とあまり見られない白髪薄青眼と言う容姿もあって近寄り難く冷たい態度に感じられる。
「ラミおねーちゃん、さっきの“ゆーせつ”のお話もっと聞かせて!」
「ラミおねぇちゃ、このあいだの、ここのところ、もっかいおせーてほしーの」
「ラミおねーさん!街にね、ペリチェ屋さんがでるようになったの!すっごくおいしかったよ!」
しかし、取り囲んだ子供たちは笑顔で彼女に話し掛けていた。
この日の解説用語をもっと詳しく求める子もいれば前回の授業に関する質問をする子もいて。
はたまた授業とは無関係な街の話題を投げかけて来る子もいる。
上は一二歳、下は七歳までの子供たちが思い思いに話しかけたことで室内は授業中の静けさが嘘のような賑やかさだ。
世界は違えど子供たちが元気良く楽し気にしている姿は微笑ましい。
だが地球的な感覚で言うと子供たちの姿が様々であることに驚くだろう。
ティアーデの世界において人は様々な種族が存在する。
ラミの様な黒い肌に細長い耳を持つ人々は
彼女と同じ細長い耳を持つが対照的な白い肌の子供たちの種族は
種族特性の違いから呼び分けされているが共に
その白霊族の女の子の隣にいるのは緑色の肌に半円型に近い丸い耳を持つ
更にその隣にはこれと言った特徴を持たない地球人に最も近しい外見である
ここにはいないが他にも鰭の様な耳を持ち水中活動を得意とする
実に様々な種族の子供たちがいるがラミは分け隔てなく接しており子供たちも自分たちの種族の違いなど気にしている様子はない。
大昔は種族毎に暮らしており種族固有の国家ばかりで種族間の対立が根深い地域もあったらしい。
だが世界中に星が降り注いだ【大流星】と呼ばれる一件以降、【大災害】を始めとした世界規模の騒乱が起こる度に人々は時に争い時に協力し、その繰り返しの中で徐々に共生が進められた。
そうして今日では複数種族による国家の方が多く単一種族の国家の方が稀有な存在となっている。
それでも多くの国、地域において種族間の差別や対立が根深く残っていたりする。
その点、ローディアニアは国内の種族数が五つを越える“多人種国家”でありながら子供たちが互いの種族を気にせず過ごせている数少ない国家と言える。
ローディアニアの前身であり内戦で滅びたリヤフ大公国も建国時には地域毎に種族が別々に分布している状態であり、種族間に根深い対立や差別感情が存在した。
しかし、大公国の二〇〇年の統治の中で“リヤフ人”として統合が進むと種族の違いによる対立や差別の意識は希薄なものとなり共生が当たり前になっていた。
“種族が違う?いや、同じリヤフ人の仲間じゃん”と言った具合に変わって行ったのである。
これにはアイシアラ正教会も大きく貢献し正教会の“氷魔信仰”がリヤフ人に深く定着することにも繋がった。
とは言え“仲間意識”が芽生えたからと言って種族間の差異が存在する事実は変わらない。
その為、大人になって知識をつけていけば相手の種族に合わせて接し方が変化してしまうものだ。
それは子供たちに接する指導官も同様で“この子は●●族だから”と相手の種族に応じて指導を変えることがあった。
しかし、ラミにはそうした傾向が一切なかった。
彼女は種族によって態度を変える必要性を感じていない。
何故なら“如何なる種族であろうとも頭に銃弾を受ければ死ぬ”のだから。
姿が違えど人は人。
根本的には皆同じなのだ。
やや極端な気がしないでもないが、彼女がそうした価値観を抱いているのは壮絶な人生経験に基づくある種の必然かもしれない。
それにしても子供たちの声を聞き洩らす事無く一人一人丁寧に返事をしている点は凄いの一言に尽きるが。
「あ、ピーくん待って!一人で帰るの危ないよ!」
「・・・平気だよ」
ラミと子供たちの会話が続く中、一人の獣人族の女の子が慌てた様子で声を発した。
地人族の男の子が一人、静かに部屋を出て行こうとした姿に気づき呼び止めた様だ。
皆の視線を一身に受けることとなった男の子は不満気な表情で平気だと返したが、すぐに呼び止めた女の子を含めた三人の女の子が男の子の傍へと駆け寄り取り囲んだ。
まだ幼いのにもう何人も女性を侍らせている・・・と言う訳ではない。
この世界ではどう言う訳か男子の出生率が低い。
実際、室内を見渡せば女の子が二〇人以上いるのに男の子は僅か三人だけ。
リヤフ大公国誕生以前の男女比は一対一〇だったとされるが、大公国が存在した二〇〇年で国内平均は一対四から五程度にまで変化したと言われる。
要因不明ながらも男性比率が増加したことは喜ばしいこととされたが内戦によってその流れは崩壊してしまった。
内戦が終結すると男女比率は一対六から七にまで戻ってしまったのだ。
先の内戦では従来の魔石を用いた魔装式銃器ではなく海外製の火薬を用いた機装式銃器が大量普及したことで老若男女種族から魔力の扱いまで関係なく戦力化が容易となった。
その為、内戦の激化によりどの勢力も兵力が不足すると強制徴兵が相次ぎ男性もまた多数戦場に駆り出され犠牲となった。
更に戦場に駆り出されず故郷に残っていた男性たちは内戦が長期化して秩序と風紀が乱れると女性兵士たちにとって略奪の対象となった。
組織的に“男狩り”を行い所属将兵に性行為の恩賞を与えることで兵の士気を保とうとした勢力や部隊があったくらいだ。
被害男性の中には反抗して殺害されたり口封じに殺害されるた者もおり、中には絶望し自ら命を絶った者もいた。
そうして再び減少してしまった男性は貴重な存在であり、地域ぐるみで保護対象とされることが珍しくなかった。
それでも男の子が女の子に一人で帰ることが危ないと指摘され守られる様に囲まれている様子は地球の感覚では“女じゃ頼りない”とか“男の癖に格好悪い”とか言われるかもしれない。
だがこれもまたティアーデならではの理由からそう言った認識はされない。
この世界には“魔力”が存在し人は誰しもが生まれながらに保有している。
但し、魔力を“行使”出来るか否かは生まれながらの素養に左右され誰でも扱える訳ではない。
つまり訓練したからと言って魔力が使えるようにはならない訳だ。
そしてこれまたどう言う訳か男性よりも女性の方が魔力を行使出来る素養の保有率が高く、魔力の扱いも男性より女性の方が優れている場合が多かった。
魔力と一言で言っても様々だが基本的な行使手段として“強化”、“治療”、“付与”、そして“防壁”の四つが挙げられて来た。
しかし、この時代の魔力使いの力では“付与”と“防壁”が難しくなっている為、昨今は“魔力の二行使”として“強化”と“治療”が基本と見做されつつある。
その二つの内、“強化”は魔力を用いた一時的な身体強化が行える。
脚力を強化して足を早くしたり、腕力を強化して打撃力を得たりと言った具合である。
これにより同族の男女であっても魔力の行使が可能であれば女性の方が強い。
男女共に魔力を扱えない場合であっても種族的な肉体能力の差が存在する。
例えば呼び止められた男の子の様な地人族の男性の場合、緑人族や獣人族の女性に身体能力で劣ることから互いに魔力が使えない生身で対峙しても男性が女性に力負けてしまうことがある。
この様に地球では一般的な“男性の方が女性よりも肉体的に優れている”と言う概念がこの世界では主流ではない。
かと言って数少ない男性は子孫を残す為に必要不可欠であり、それ故に男児の価値は非常に高い。
治安悪化により男児誘拐が頻発していることもある為、だから男の子が“一人で帰るのは危ない”のである。
とは言えまだ子供たちには魔力がどうのとか種族がなんだとか男児の価値が高いとか言った話はよくわからない。
それでも“男の子が怪しい女に連れて行かれない様に傍にいてあげなさい”と親たちに言われた女の子たちは大事な友達、或いは意中の彼を守ろうとすんなり受け入れた。
むしろ子供ならではの“私が守らなくちゃ”と言う使命感に駆られている子すらいる。
だが“危ない”と言われてもまだ理解が及んでいない男の子たちからすると何処へ行くにも付きまとう女の子たちの存在を鬱陶しく思う事もある。
地人族の男の子が黙って先に帰ろうとしたのはそうした子供ならではの感情による行動だったのだ。
「ピリオ君、良かったですね」
“私たちが守るんだ”と意気込んだ様子で取り囲んだ女の子たちを男の子が鬱陶しそうに見ているとラミが声を掛けた。
先ほどまでよりも更に優しさを感じる声音ながらここでも彼女の表情は変わらない。
その所為か男の子は身構えたが何を言われるのかは予想していた。
“でも男の子一人では危ない”とか“女の子に守って貰わなきゃ駄目”と言うのが一般的なのだから。
実際、今朝も母親たちにそう言われたばかりであった。
しかし、ラミが発したのはそうした言葉ではなかった。
「皆さんと一緒なら安心が高まります。安心が高まればその分だけ皆さんで帰路を楽しむことが出来ます。羨ましいです」
ラミは男の子の反発を考慮して言い方を工夫した訳ではない。
彼女の言葉は本心からのものだった。
内戦によって“普通”の幼少期を過ごせなかった彼女にとって友人と共に帰路に着くと言う体験はとても貴重なものに思えたのだ。
「・・・・・・うん」
ラミの言葉に男の子は意表を突かれたのか目を瞬かせたが、しばらくして小声で返事をすると頷いた。
そして声を掛けてくれた獣人族の女の子に控え目に手を伸ばした。
気づいた獣人族の女の子は嬉しそうに笑みを浮かべその手を握り、それを見た他の女の子二人も安心した様に微笑んでいる。
四人は揃ってラミにペコリと一礼してから退室し帰路に着いた。
それを見届けるとまだラミとの話を終えていない子供たちがまた賑やかに話しかけて来た。
それに対しラミは嫌そうな顔をする事もなければ“早く帰りなさい”と言う事も無く一人ずつ丁寧に言葉を返して行く姿勢を崩さなかった。
「ラミおねーさん、またねー!」
「・・・ええ、また」
授業が終わってから一時間近く経った頃。
ようやく最後の子供たちが教会を後にした。
子供たちの背を見送ったラミは部屋の後片付けを始めた。
見た目が一〇代中頃から後半に見える彼女だが今年で二一歳。
見た目と実年齢で五~六歳の差があることになる。
この世界の人の寿命は一〇〇~二〇〇年の種族が多いのだが黒霊族を含む霊人族は二〇〇~三〇〇年で場合によっては三〇〇年を超えるとされる。
更に地人族を基準とした見た目の老いが遅い遅老傾向の強い種族と言われている。
その為、黒霊族である彼女が一〇代中頃から後半くらいの見た目であることは珍しくない・・・と言う訳ではなかった。
種族特性で小柄であるが故に一〇代から身長の伸びが著しく低下する小人族を例外とし、この世界の人々は如何なる種族も二〇歳頃まで身体の成長が同じとされている。
つまり種族毎の老い方によって見た目に差異が生じるのは二〇代以降の話なのだ。
故に彼女は本来ならば年相応の姿をしているのが普通であり、その年齢で一〇代中頃から後半くらいに見えるのは“異常”と言えた。
幼くして内戦に巻き込まれたラミは受け入れ先が見つからず助けてくれた部隊と長らく行動を共にした。
やがて彼女は自らの意思で炊事や弾薬運搬など雑用手伝いを始めたが、ある戦場で部隊が窮地に陥り大量の負傷者が出た。
その際に彼女は魔力覚醒を迎え魔力による治療を行った。
お陰で多くの兵士が命拾いし身体の部位欠損を免れることとなった。
僅か一〇歳にも満たない幼女が何人もの兵士の怪我を悉く癒したことは驚くべきことだった。
魔力治療と一言で言っても決して万能ではないからだ。
この世界の魔力の扱いは三段階に分けられることが主流だ。
国や地域によって呼称は異なるがリヤフ人の場合は下から“外段”、“中段”、“内段”と呼ぶ。
通常は一〇歳前後で覚醒を迎え外段となり指導や鍛錬を経て中段に至り、一部の者だけが内段に達することが出来る。
しかし、ラミは覚醒した段階で中段であり、その後も行使を続けたことで既に内段に達しつつあるのではと見られている。
覚醒段階で二段階目に達しており、三段階目に達するまで一〇年も掛からないと言うのはもはや“別格”である。
正に天才的と言えるとんでもない素養をラミは持っていた訳だが、その代償がない訳ではなかった。
早過ぎる魔力の覚醒。
そして十分な鍛錬を経ずに多量の魔力を巧みに行使することが出来た結果、当時一〇歳になっていなかった彼女の身体の成長に影響が及んだ。
身体の成長が通常よりも遅かったのだ。
当初は誰も気づかなかったが内戦中にほとんど容姿が変わらないラミの姿に“もしや”と思い、この事実が発覚した。
内戦によって魔学的、医学的知見にも戦災喪失が及んでいた為、適切な対処法があるのかどうかはわかっていない。
単に身体の成長や老化が通常よりも遅いだけなのか、或いはいずれ彼女の健康状態に何らかの影響を及ぼす可能性があるのかもわからない。
場合によっては種族特性である長寿に影響も出ている可能性もあるが憶測の域を出ない。
と言ってもラミ自身は憂えることもなければ気に掛けた様子もなかった。
幼くして戦場を経験した彼女にとって人は誰しも“死ぬ時は死ぬ”ものでしかない。
むしろあの恐ろしい戦場で死なないのであれば十分幸せ者だろうと彼女は思っていた。
「後片付け完了しました」
「あ、曹長さん。お疲れ様です」
手際良く片付けを終えたラミが別室に赴くと教士服に身を包んだ教会関係者が労ってくれた。
地球の修道士服に似た意匠をしているが色合いは異なる。
ラミの髪色と同じ白色と眼の色に近い水色の二色。
それぞれ白色は雪、水色は氷を表しているとされる。
氷魔信仰のアイシアラ正教会らしい服装と言えるだろう。
労ってくれたのは白霊族の女性教士で室内には他にも頭に二本の角を持つ
いずれも女性だが教会関係者には女性しかなれないと言う決まりがある訳ではない。
単純に男女比率の問題だが、男性教士がいたらいたで教会活動よりも男性教士目当ての来訪者が増えて困るので正教会の側が男性採用に消極的だったりする。
「本日もありがとうございました」
「こちらこそいつもありがとうございます。子供たちの相手も最後までして下さって」
必要書類への記載を済ませ退室しようとしたラミはいつも通り挨拶した。
すると白霊族の女性教士がそう返して来たので疑問を覚えた。
教えに来ているのだから子供たちが出て行くまで面倒を見るのは当たり前なのではないだろうかと思ったからだ。
「子供たちが帰るまで話し相手になってくれるのは曹長さんだけなんだよ」
「私たちも含め他の指導官は子供たちを早く帰そうとするので話を切り上げてしまうんです。申し訳ないとは思うのですがこちらにも余裕がなくって・・・」
疑問に感じていると机仕事を続けていた魔人族の女性教士と小人族の女性教士が座ったままそう付け加えた。
部屋にいた三人の机には色々と書類やら何やらが溜まっていた。
正教会も人手不足の中で色んな支援事業をしているからかどうやら大変な様だ。
「貴方は忙しくても子供たち一人一人と向き合っている・・・私たちも見習わなければならないと思います」
「・・・そうでしたか」
教士たちの言葉にラミの表情も声音も変わらなかった。
しかし、彼女は驚きと戸惑いを感じながら短く返した。
普段よりも素っ気なく応じてしまったのはどう反応すれば良いかわからなかったからだ。
「・・・機嫌悪くさせちまったかね?」
「困っている感じでしたよね・・・」
「そんなことないと思いますよ。曹長さん、魔失症の方と同じで表情変化が乏しいだけだと思うんです」
ラミが教会を後にした後。
魔人族と小人族の教士が不安気に言うと白霊族の教士がそう指摘した。
“
魔力が存在するこの世界には“
魔力の使い過ぎによって頭痛や眩暈などが生じる“
魔失症はあまりに大きな精神的
一時的であったり長期的であっても限定的な状況下でのみ発症するなど人によって差異はあるが発声が制限されてしまう。
白霊族の教士が口にしたのは魔失症による影響が声だけでなく表情にも及ぶからだ。
白霊族の教士には同族の幼馴染で親友がいる。
その親友は内戦に従軍した際に目の前で姉が死亡したことで魔失症を発症。
以来、今日まで声を失ったままで表情変化に乏しいが喜怒哀楽と言った感情を抱くことは取り戻しつつあった。
彼女はその親友に何処か似ている雰囲気をラミから感じていたのである。
「それにしても曹長さん、今日もお綺麗でしたね」
「ですね!雪の様に白い髪に氷の様な薄青色の瞳・・・私たちの教士服よりもずっと雪と氷を表している姿かと」
「だなぁ。あの無表情も神々しさを感じてむしろ良い感じだよな」
「わかります!」「同感です!」
白霊族の教士の発言を切欠に三人は仕事の手を止め休憩がてらラミの容姿のことで盛り上がった。
正教会ではラミのことを“子供想いで自分たちにも好意的な軍人さん”と認識していた。
一方で教士たちは彼女の容姿から密かに“女神様みたい”と好意や興味を抱いていた。
中には初対面の際に地球で言う“天使”に相当する“神遣い”ではないかと本気で思った者もいたほどだ。
正教会にとって白は雪を表すと同時に女神として信奉されている氷の魔神アイシニルを表している。
そして水色や薄青色と言った青系統の色の一部は“八神竜”の一体である氷の神竜グラセドリナを表しているとされる。
ラミはその二つの色を髪と眼に持つ非常に珍しい容姿をしており、そこに彼女特有の幼い容姿に大人びた雰囲気が合わさって神々しく感じられた。
子供たちの中でも熱心な正教会の信徒の家の子などは同じ様な気持ちを抱いており彼女に懐く理由の一つにもなっていたりする。
懐くと言うより崇めているのかもしれないが。
(・・・よくわからない)
教会を後にしたラミは足早に街中を歩いていた。
彼女は胸中で戸惑いを吐露していたが、その様子は憂い顔でもなければ溜息を吐いたりもしていない。
教会での様子と変わらない無表情な姿に堂々とした歩き方と軍服からむしろ見る者に凛々しさを感じさせている。
この様に彼女はその心情と表情とが一致していないことが多い。
その為、周囲は彼女が持つ特有の容姿と雰囲気もあって勝手に推測或いは妄想することが多かった。
それだけ当人と周囲には認識の乖離が生じているのだがラミ自身はそのことに気づかないことが多い。
白霊族の教士がラミの様子に“魔失症の方と同じ”と感じたのは正解であった。
ラミは物心ついた頃に故郷を失いその際の精神的|衝撃ショックから魔失症を発症した。
彼女が声を失っていた期間は数か月とされ期間としては短い部類に入るが、表情変化の乏しさと言う後遺症が残ってしまった。
一方でラミの反応が素っ気ないことがあるのは彼女が“普通”を知らないことによる戸惑いが多いからであった。
故郷を失ったラミが保護されたのは僅か六歳であり、そのまま内戦に身を投じた。
そんな一般的とは程遠い幼少期を過ごしたことで彼女は世間の言う“普通”を知らない。
その為、部隊の仲間以外とはどう接したら良いのかわからず常に身構えている状態と言えた。
子供たちに対しても世間一般の子供に対する大人の接し方がわからない為、一人一人と向き合うことで理解しようとした。
その結果、彼女は種族を意識した接し方の差異がないだけでなく大人にありがちな“相手は子供”と言うありふれた先入観を持ち合わせていなかった。
決して子供好きと言う訳でもなければ愛想が良い訳でもない。
むしろ基本的に無表情でどんな時も穏やかな声音と口調が変わらないことから無愛想であり人によっては不気味に感じることもあるだろう。
そんな彼女が軍服を纏っていることもあって子供たちも当初は警戒したがすぐに気づいた。
上手く言語化出来なくとも彼女が周囲の大人たちとは違って“自分を見てくれる”、“話を聞いてくれる”存在だと認識し慕ったのだ。
ラミはそのことすら気づかず、他の指導官に対しても子供たちはこうなのだろうと思っていた。
先ほど教士たちはそれが“普通ではない”と教え褒めてくれたのだが、ラミとしてはどう受け止めれば良いのかわからなかった。
元はと言えば自分の無知、世間知らずに起因するからだ。
しかし、彼女は自分が“普通”じゃないからと言って焦燥や不安を抱いたりはしていない。
内戦で家族を失った人もいればラミほどではないものの幼くして従軍した人もいる。
ただ自分はそれらを一身に受けただけであり、それでも生きている。
“生きたい”と願い涙を流しながらも死んで行った人たちに比べたら“普通ではない”ことなど些事であると彼女は考えていた。
彼女が歩いている街並みは地球で言う所の二〇世紀前半の欧州地域と言った風であるが、街灯であったり暖房設備であったり至る所に“魔石”などのティアーデ特有の資源が用いられている。
この世界では各種魔石を用いるなど魔力を動力とするものは“
ローディアニアが存在する“大大陸”には魔石が豊富に存在することから従来は魔装式が主流であった。
しかし、内戦の影響は人々の生活様式にまで及んだ。
高価で製作に時間の掛かる魔装式に代わり早急に人々の暮らしに役立てられるようにと他の大陸で創られた安価な機装式が様々な分野で流入していた。
と言っても人口の多い主要な大都市に限った話であり地方の田舎にはそう言った海外製の物はあまり流れて来ていない為、この街は昔ながらの魔装式が主流のままだったりする。
四方を森に囲まれた典型的なレージア地方らしいこの街は内戦中に一度だけ戦場となるも小競り合いだけで済んだ為に大きく破壊されるようなことはなかった。
にも関わらずやや古びた幾つかの建物の解体が進めらているのは建物の所有者や関係者が内戦で犠牲となり放置されていたからだ。
内戦終結から九年も経つのにまだそうした建物の処理が終わっていないのは復興の遅れを表していると言えるだろう。
その所為か近頃は政府に対する不満が少しずつ高まっているとされるが、特に不満の高まりの要因となっているのは深刻な人手不足への対応の遅れである。
この街の人々も表面上は平穏に毎日を送っている様に見えるが実際の所はどの現場も家庭もぎりぎりだ。
物を売ったり運んだり作ったりと言った人手が足りないだけでなく人を指導したり業務を管理監督する人材も不足している。
それ故、本来なら見習いとして学習に重きが置かれる若年層を正規労働者として採り入れざるを得なかった。
だがそれによって前述の通り内戦以降教育を受けられなかった世代の知識不足が露呈し問題となった訳だ。
社会の問題とは決して単一的な事象ではなく複合的であり、だからこそ厄介と言える。
更に問題をより厄介にしているのはこうした人手不足を利用して自己の利益を脱法的に追及する者たちの存在だ。
当初そうした問題は男児誘拐が主であり、教育所へ通うに当たり女の子たちが男の子を守ろうとすることに繋がった。
しかし、そうした犯罪に対して警察に相当する“治安隊”や行政の取締が上手く機能していないことが明らかになると強盗や詐欺と言った他の犯罪も増加し始めた。
中には人手不足により食糧品が不足していた地域の人々を騙して金だけ奪い逃走した者がいた所為で生活が破綻、飢餓が発生した地域もあった。
こうした状況は治安隊の予算と人員が増やされても一向に解決せず、その割には治安隊の態度だけはデカい為に国民の不安と不満が高まり続けていた。
各地に軍部隊が派遣されたのも単なる治安維持だけではなく国民を宥めようと言う狙いがあった。
そうした様々な問題に直面していることもあってか帰路に着いた子供たちもこれから遊ぶ訳ではない。
子供たちだけで遊んでいては犯罪に巻き込まれる危険性があると言うのもあるが、人手不足の影響で子供たちも家事や家業であったりの手伝いをしているからだ。
正教会が二〇歳まで教育対象としているのに対し一三歳以上の子供たちがたまにしか学びに来ないのも勉強よりも仕事や家事の手伝いに駆り出されている為である。
(あれは・・・)
スッとラミが足を止めた。
美しい立ち姿に偶然近くにいた市民たちが密かにドキリとしたがラミは気づいていない。
彼女の視線の先には子供たちが口にしていた“ペリチェ屋”さんらしき出店があった。
“ペリチェ”とは地球で言う所の焼きピロシキの様なもので労働食やおやつと言った印象が強い。
内戦前はこうした出店が当たり前の様にどの街にも複数見られたのだがここアルジェスクでは最近復活したばかり。
足早に買っては食べながら歩き去っていく客もいれば職場や家庭の買い出しなのか一人で大量に買って抱えながら足早に去って行く客の姿も見える。
内戦中にはとても見られなかった平穏な光景だが、内戦前を知らないラミにとっては初めて見る光景でもある。
気づけば彼女は身体の向きを変えて出店へと向かっていた。
普段の彼女なら必要と思わず素通りしていたであろうが子供たちが話題を振ってくれたのだから一度食べてみようと思ったのだ。
列に並ぶとあっという間に番が来たので手早くペリチェを一つ購入。
緑人族の女性店主は“軍人さんには安くするからまたお願いね”と言って一割引きしてくれた。
何処も厳しいだろうに頼んだ訳でもなく値引きされたことに動揺しながらもラミは感謝と共に受け取った。
そして少し歩いた先の広場にある花壇の縁に腰掛け食べ始める。
周囲には他にも同じように座ってペリチェを食べている人の姿があった。
「・・・・・・ラゴーズ」
黙々と食べていた彼女がふと発したのは別の街の名前だった。
内戦中に足を運び、不思議な体験をした小さな田舎町。
あの街で食べたペリチェの味に似ていると感じたのだ。
苦手な訳でも嫌いな訳でもない。
むしろ美味しいと感じるのに。
当時のことを思い出した所為か不思議なことに段々と味がわからなくなって行く。
それでも次に子供たちと会った時に“懐かしい味だった”くらいのことは言えるから良いだろう。
手早く食し終えた彼女はそう思いながら立ち上がると再び足早に歩いて行った。
程なくして街を出た彼女は軍の拠点へと帰着した。
街の隣には軍の仮駐屯地が置かれていて彼女の所属部隊はそこに駐屯している。
この地域の治安維持が主任務であるが部隊長判断で積極的に民間協力を行っており建物や車両の修繕や指導、時には人手不足の店の手伝いまで行っていた。
単なる善意や使命感によるものではなく隊員たちが民間の仕事を手伝うことで退役後の社会復帰の一助にと言う意図があるのだとか。
正教会の教育指導への協力にはラミを含めた“支援兵”と言う兵科の者たちが交代で従事している。
“支援兵”は衛生兵の様な役割の兵科で駐屯地内での主な職場は治療所又は補給所である。
その職場の一つである治療所に辿り着くと入口の表示が“不在”となっていた。
どうやら当番兵の同僚は見回りか出動要請を受けていないらしい。
ラミは“在所”の表示に切り替えてから中へ入ると状況を確認した。
これと言った大きな問題は起きていない様で恐らく単なる見回りだろう。
そう結論付けた直後、やや乱暴に治療所の扉が開かれた。
視線を向けると獣人族の男女が入って来る所だった。
「ごめん、ラミ!ドルゴのおバカが足捻っちゃって・・・」
「手前の
三角状のもふっとした獣耳を持つ女性獣人族の言葉にラミは慌てる様子もなくそう指示した。
複数の寝台が並んでいる奥の部屋へと移動すると連れて来られた男性が一番手前の寝台へと横になる。
男性は女性とは違い縦長の細い獣耳の持ち主だった。
獣人族と一言で括られてはいるものの様々な耳や尻尾を持っている為、その姿は様々である。
「悪いラミ・・・実は、」
「聞かなくとも想像はつきます。休養日だからと言ってあまりはしゃがないでください」
横になった男性獣人族が何やら言おうとしたがラミは言葉を遮った。
彼女の言葉に男性獣人族は言い返せず、申し訳なさそうに押し黙ってしまった。
この日は一切の訓練がなく昨日の夕飯の時に二人が今日は支援活動への参加の無い休日だと言っていたことをラミは覚えていた。
そして獣人族の男性はどう言う訳か一緒にやってきた獣人族の女性と一緒に休日を過ごす時、行動が大袈裟になって度々負傷している。
だから“また今日も同じだろう”とラミは予測し、男性の反応はそれが正解であることを示していた。
その間にもラミは素早く負傷部位と状態を確認すると患部に向けて両手を翳した。
そのまま触れるでも離すでもなくジッとしていると男性獣人族が微かに顔を顰めた。
ラミは何もしていない訳ではない。
翳した掌から魔力を発して患部の腫れを治療しているのだ。
“魔力治療”と呼ばれるソレは決して万能ではないし効果も魔力の素養に大きく左右されるので魔力が行使出来る誰もがどんな傷をも治せる訳ではない。
それにあくまで傷を癒すだけであって失われた血や栄養を戻せるわけではない。
だが効果が弱くとも傷口を塞いで止血が出来、強ければ痛みを取り除き完治が早い。
それでも重傷の場合は傷痕が多少なりとも残るのだがラミの場合は効果がとても強いので完治が早いだけでなく傷痕が一切残らない。
所属部隊に手足や耳など身体部位の欠損者が少ないのがその証と言える。
ラミは優れた魔力の素養を持って生まれたが最初から扱いに長けていた訳ではない。
治療の効果は当初から優れていたが一度に扱える魔力量が少なく扱いも拙かった為に大きな消耗が伴った。
周囲の制止を聞かずに一日中治療を続け、その後の一週間寝たきりになったこともあったほどだ。
それが先ほどペリチェを食べて思い出したラゴーズと言う街での出来事を切欠に魔力の扱いが安定すると類稀な魔力使いとして力を発揮し以前よりも少ない負担で多くの命を救う様になった。
今では所属部隊で最も魔力の扱いに長けた支援兵として自分よりも年上しかいない仲間たちから信頼されていた。
「助かった・・・ありがとうな、ラミ!」
「流石ラミ、助かるよ。これで一安心だね」
「いえ。ドルゴさんとテルナさんがまた訓練でもないのに負傷して治療所に来た・・・とファーナさんに報告しますから、ちゃんと叱られてくださいね」
「「そんなぁ・・・」」
治療を終え感謝を口にした獣人族二人は喜ぶと言うより安堵した様子であった。
しかし、ラミの返しを聞くと形が違う獣耳と尻尾が同時に萎れた。
その様子にラミはつい微笑んでしまう。
教会や街で見せた彼女の姿とは違い年相応の愛らしい笑顔だった。
「ラミ」
獣人族二人組がどうラミを説得しようか悩み始めた直後、別の女性の声が聞こえた。
三人揃って視線を動かすとそこにはラミと同じ雪の様に白い髪の黒霊族の女性が立っていた。
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