蒼穹の境界

ジュラシックゴジラ

第一章:灰色の村

霧に包まれた谷の奥深く、古びた村がひっそりと息づいていた。石と木で作られた家々は朽ちかけ、煙突から上がる煙もわずかしかなかった。冬の終わりを告げる冷たい風が、雪解け水の流れる小川をかすかに揺らす。


村のはずれに、灰色のマントを羽織った少年が立っていた。名前はリアン。年は十五ほどだが、目の奥に宿る光は年齢以上の鋭さを帯びている。彼の手には、木の柄が少し欠けた短剣が握られていた。


「……また夢か」


リアンはつぶやいた。夢の中で、村が炎に包まれ、彼の家族が闇の影に飲み込まれる。目を覚ますたび、胸が痛む。しかし、もう涙は流さない。


川沿いを歩いていると、遠くから不吉な気配が漂った。森の中で、黒い影が群れを成して動いている。赤い光を宿した瞳が、木々の間からじっとこちらを見ていた。


「ナイトメア……」


伝説の闇の軍勢。その名を聞くだけで、村人は震え上がった。昔、王国を崩壊させたとされる彼らの姿を、リアンは今、目の当たりにしていた。


風に乗って聞こえてきたのは、低くうなる声と、金属がぶつかる音。リアンは短剣を握り直し、決意を胸に走り出した。

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