第1話 以来

とある噂がある。

 ダルツ地方のどこかにある森の奥深くにある万屋があるというのだ。

「ジョルダン・トゥエルブ」

煉瓦造りで木に囲まれている不思議な雰囲気を醸し出している。そこに行けば限度はあるがなんでも、ササッと依頼を解決してくれる魔術師がいるというのだ。

そんな「ジョルダン・トゥエルブ」の店主であり、現代でもっとも特異な魔術を扱う彼女の名はシエル・ルドルフ。

 水色の髪と青い目に白いシャツに鮮やかな赤色のジャボを付けている。

 今日もモーニングルーティンである、読書をするようだ。

「今日は何を読もうかな。ん〜、今日は冒険記が読みたい気分だからこれにするか。

そう言い、シエルは分厚い本がぎっしり置かれている本棚から1冊取り、ソファに腰を掛け、本を読む。

「いつ読んでも名作だよ。『ブルハムート〜銀空の悪霊』。」

『ブルハムート〜銀空の悪霊』とは、さまざまな怪奇現象に苛まれる主人公ブルハムートが原因となる場所を探り、元凶を木っ端微塵に爆発させるするギャグホラー冒険記のことだ。

現在5作品ある大作シリーズなのだが、この『ブルハムート〜銀空の悪霊』は3作品目で評判がいい。私が最初にブルハムートシリーズで読み始めたのがこれだった。

「今日は懐かしい存在と出会えたりするのか?

とりあえず読むか。ルーティンだし。」

そういうとポケットからメガネを取り出し読み始めた。

1ページ1ページ素早く、丁寧に本を読み進めていくシエル。鳥のさえずりや日の出の朝日に照らされ心地いいくらいの風が吹いていて、読書をするにはいいくらいの天気だった。


 シエルが本を読み始めてから数分が経った頃だ。換気のために開けておいた窓からコンコンと音がした。

「なんだ?虫でも飛んできたかな。」

気になって窓を開けてみると、そこには大きな翼を羽ばたかせながら手紙を咥えたとてもクールなタカが飛んでいました。

タカは降下してきて、シエルに手紙を渡してシエルがお礼を言う前にすぐに飛び立って行きました。


受け取った手紙は茶封筒に羽印の赤いシーリングスタンプが貼ってあるものだった。

「誰からだろうか。こう言うのは開けてからのお楽しみだからね。もしかして、先月応募したチーズの食べ比べフェスのチケットでも届いたのかな!」

想像を膨らませて上機嫌になったシエルが手紙を開封すると、1通の手紙が入っていた。


【1通目】

Dear ショルダン・トゥエルブ

シエル・ルドルフ様

 今回はとある素材を集めて欲しく依頼させて頂きました。

 講義に使用するための素材が何者かに盗まれてしまう事件が起き、不足の状況で現在手が回せないので代わりに集めてきて送り届けて欲しいのです。

 即急に届けてくれると幸いです。

以下に書かれているものを揃い次第届けてください。


・廃れた地の砂  500g

・閃嚇竜の鱗 4〜6枚ほど

・イムグ貝の貝殻  10枚

・カル湖の純水   1L


報酬は移動費込みで後ほどお渡しします。

これからのご活躍益々応援します。

by魔術アカデミー学長

          ジョルジュ・Q・ハレス


と言った感じの依頼書のようなものだった。

「なんだただの依頼書か。変な想像しちゃったy...

ん?」

とさっきまでの妄想を抱いていた自分が現実に戻された感じで泣けてきた。すると一番下ら辺の行を見て、

「う、ウソ…だろ…。魔術ア、ア、アカデミーががが学長!?なんでここがわかったんだ!?」

 魔術アカデミーは私の母校であり、シエルが16歳の頃に入学し、本来4年制のはずが18歳には飛び級で卒業した経歴がある。

 さらに、私の家と魔術アカデミーは同じダルツ地方にあるのだが、シエルは現代でもっとも特異な魔術師かつ1、2を争うほどの最強の魔術師として知られているのでそう簡単に存在を知られたくはないのである。

なので卒業後は深い森のあるダルツ地方の中で密かに平穏に万屋を経営しているのだ。

「まずいまずい…まさか2年で見つかるとは思わないって。」

「はぁ、仕方ない。場所知られちゃったし、今日中に解決させちゃって引っ越しちゃうか。」

私は、掛けてあった帽子とコートを着たら、かわいい仕事着に着替えた。

 それから、依頼品を持ってくのに必要だろうと思い、色々便利なものが詰め合わさっているバックも持って行った。

玄関に置いてあった杖を手に取りドアを開けて戸締りをチェックした。

「よし、そろそろいけるな。」

そういうと屋根から、

「姉貴ー」

「あ、セレちゃん。おはよう。」

「おはようございます!!姉貴!!」

と朝から元気に大声で滑空して肩に乗っかってきた。

(重い…)

このカラスはセレナーデ。別名セレちゃん。

私の初めての契約獣(リンクモンスター)なんだけど、なんかめんどくさがり屋で私でも倒せないような敵を相手する時にしか手を貸してくれない可愛げのないカラス。

「本日は外出とは、めずらしいですネ!!依頼ですカ??」

「そうだけど、もしかして一緒に行きたいの・・・?」

「もちろんですとモ!!主人いるところに契約獣ありですのデ!!」

 ここで断っても強引にねだってきそうだよな…

なら、

「いいよ。一緒に行こう。ただし、今回の依頼はちょっと長旅になるよ。」

「了解でス!!」

 こうして、母校である魔術アカデミーからの依頼から始まった、大陸を一周するちょっと短い魔術師による冒険が始まった。

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