第17話 この世界には他人のキャラを強奪する能力なんて便利機能はないぞ

 さて俺は武将を率いてNPC村を襲撃し、村の銭や食糧を少しうばっって洛陽へ戻ってきたところで見知った顔がやってきた、”よしくん”だな、よしくんは俺のデータをみてから言った。


「ふうん、そっちは男武将もそれなりにそだててるんですねぇ。

 これはちょうどいいや」


 俺は首をかしげた、ぶっちゃけよしくんの言ってる意味が全くわからん。


「いや、何がちょうどいいんだ?」


 ヨシくんはグフフと不気味に笑いながら言う。


「さあ、お前、そんなレベルの低いやつじゃなく、レベルの高い僕のもとにくるんだ!

 強奪スキル発動!」


 チャンフェイをみながらヨシくんはいったが、当然ながらチャンフェイは無視している。


 ソシャゲは参加プレイヤー全員が主人公みたいなものでもあるがそもそもMMORPGのようにPCの間で金や武器などのやり取りや強奪などはできない事が多い。


 そうでもなきゃガチャとか育成の意味が無いからな当然他人の武将データを強奪したりはできない。


 システム的に可能な他の人間の村の銭や食糧を奪うというのとは訳が違う。


「おい、聞いてるのか?

 そんなやつより僕のほうがレベルが高いんだぞ?

 だったら僕が使ったほうがいいはずじゃないか!」


 やっぱりチャンフェイは無視している。


「なんだよ、どうしてだよ?!

 僕はレベルが高いんだからそれだけ優遇されるのが当然だろ!」


 俺は流石に苦笑した。


「おいおい、このゲームにそんな都合のいい機能はついてないって。

 どんな行動を取るのも自由だが全部自己責任になるんだってわかんなかったのか?」


 ムカついたのか顔を赤くさせて言うヨシくん。


「そんな”自己責任”だとか”使えないやつは死ね”みたいなのはもういいんだよ!

 僕は必死な努力なんてしなくても、強くなってちやほやされたいんだよ。

 そういう世界じゃなきゃおかしいんだよ!」


 俺はやっぱり苦笑しながら言う。


「いやいや、そんな都合のいい世界なんてそんなないだろ。

 俺は言っておいたよな、毎日任務とかの達成報酬は取らないでレベルをあげるのおさえたほうがいいぞって」


 俺の言ったことを無視してヨシくんがチャンフェイのところへ駆け出した。


「くそお、お前は僕のために働けよ!」


 チャンフェイを捕まえようとしたらしいがその腕はすかっとすり抜けた。


 どうやら仕えている君主以外はさわれないとかそういう仕様らしい。


「な、なんでだよ。

 僕は主人公なんだ。

 僕はチーレムでちやほやされるんだ!

 男はひざまずいて僕に使われなきゃおかしいんだ!」


 俺はため息を付いたあとで言う。


「それはお前さんの勝手な願望だろう。

 お前さんの願望をかなえないといけない理由がこの世界にあるのか?」


「そうだよ、僕はずっと辛い思いをしてきたんだから!」


「で、お前さんの辛い思いってのは、親にすてられて児童養護施設で育ったり、親から虐待を受けたり、 親が騙された借金を押し付けられた挙句首釣ったりして、服の予備もなかったりまともに飯も食えないような、悲惨な状態だったりしたいのかい?」


「……」


「学校になんとなく馴染めなくて引きこもったりしただけで、自分の部屋で好きな時にパソコンを見られたり、毎日三色飯を食わせてもらっていたり、服の洗濯してもらったり冷暖房も使わせてもらっていたんならそれよりもっと悲惨な環境の人間がいるって分からないかい?」


 図星をつかれたのか更に赤くなるよしくん。


「そ、そんなのはしらないよ。

 僕が学校になじめなかったのは学校がひいては神が悪いんだ!

 だからその償いをするのは当然じゃないか!」


「いやいやいや、ちっとも当然じゃないぞ」


「くそう、どうなってるんだよぉ!」


 よしくんはなんか泣きながら何処かにいっちまったけど、そんなに都合よく努力しなくても力を与えられて周り全部からちやほやされる世界なんてあるわけ無いだろ。


 学校でモテるサッカー部とかだって皆死ぬほど努力してるんだ。


 ジャニーズなんかのアイドルだってデビューできるのはほんの一握り


 生きるために周りに認められる為結果を出すためにみんな何らかの努力はしてるんだから。


 いや、この世界はどうなんだかよくわからないけどな。

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