第2話 知らない人間に勝手な決め付けで脇役呼ばわりされるのはなんかむかつく

 とりあえず寝ていた家の便所で用を足した後、洗面所で顔を洗い、用意されていた飯(中華料理で結構うまかった)を食って、鎧をきちんとつけ直したら、俺はとりあえず黄巾賊討伐にでかけることにした。


「では、ひろポン様参りましょう」


「ああ、頼むぞ、チャンフェイ」


「はい、私の兵にお任せください」


「ちなみに飯作ってくれたのって誰?」


「もちろん私ですぞ我が君」


 まあそうだよな。


 そして、なんか調子が狂うな、張飛ってもっと荒い言葉遣いな気がするんだが、チャンフェイだから違うのか、そもそも俺の勝手な思い込みか。


 ちなみにチャンフェイは800人くらいの軽装騎兵を率いている。


 軽装騎兵は盾を持ってる兵種に強いはずだな。


 しかし、この兵士や馬がいつの間にどこから集まってくるのか、普段はどこにいるのか深く考えないほうがいいだろう、そしてどうでもいいが張飛の部下はみんなむさいおっさんでろくな装備もしてないせいで山賊みたいだな。


 本来黄巾の乱くらいだと張飛はまだ十代のはずなんだが……。


 そういや張飛は一時期山賊やってたっけか。


 そんときに夏侯淵の姪とされる女性をさらって結婚してるんだっけな。


 そしてそんなことを考えていたら横から声をかけられた。


「おや、そっちも一緒にこの世界に来ちゃったんですか?」


 そう声をかけてくる男の頭の上には”よしくん”というアイコンが出ていた。


 なんかかけてききた声に侮蔑が含まれてる感じがして微妙にムカつくな。


 おそらく俺の頭の上にも”ひろポン”というアイコンが出てるのだろう。


「あーなるほど、僕のこの後のチーレム生活の引き立て役の脇役ですねー。

 まあ、頑張って生き残ってくださいね、あっはっは」


 おいおい、人の顔を見たなり言うことがそれかそりゃ俺は地味顔だがそっちも人のことは言えないだろ。


 まあ、ゲームの世界に入り込んだ主人公がチーレムでウハウハなんてのは確かに最近のネット小説じゃよくある話だし、ログインボーナスで最強なんて話も確かにあったけどな。


「じゃあ、貂蝉、さっそく黄巾賊討伐に行きますよ」


 そいつの脇には超美人がいて”よしくん”にかけられた声に頷いている。


「はい、おまかせください、我が君」


 彼らに従うのは弓騎兵で兵士も皆女性。


 貂蝉と言うのは三国志では有名な傾国の美女だな。


 確かに向こうはチュートリアルキャラが若くて綺麗な女性でこっちはむさい筋肉ダルマのおっさん。


 脇役とおもわれてもしかたないかもしれないが……貂蝉は星を育てるの苦労するぞ。


 入手方法が特殊だからな。


 俺があっけにとられていると彼らはとっとと進んでいってしまった。


 まあ、先に行かれたとしても最初の敵は一緒なんだけどな。


 ソシャゲの一番最初の敵は一体何回やられてるんだろうか。


「なんか、毒気を抜かれたが俺たちも行くとするか」


「はい、参りましょう我が君」


 うん、流石にむさい髭面のおっさんに傾国の美女と同じように”我が君”とかいわれてもなんか差があるのを感じるわ。


 さて、街道を進んで黄巾賊が陣を構えてるところに突き進んでいくと一人の男の上に”波才”という名前アイコンが出てくる。


「さて最初の敵かな。

 さくっと蹴散らしてやるか」


 張飛がうやうやしく頷く。


「おまかせください我が君」


 ソシャゲにおいて最初のバトルで負けることは普通はない。


 何か変わったことをやらされることもあんまりない、まずは試しという段階でプレイヤーにストレスかける運営はいない……はずだ、例外はあるかもしれないが。


 戦闘に入ると食料がガガッと減る。


「我こそは波才なり、我が首取れるものなら取ってみよ」


 敵黄巾賊の将軍がそう名乗りを上げる。


「はっはー、その首このチャンフェイがもらうぜー」


 一体どっちが悪役だ。


 兵士同士がぶつかり合ってダメージが表示されるが、張飛の兵は波才の兵をかんたんに殲滅したけどな。


 ほんとうは波才は漢の将軍である朱儁を潁川にて敗走させるくらいだからそこそこ強いはずなんだし、黄巾賊の兵力は何十万といわれてるが、まあソシャゲの世界だからこんなもんなんだろう。


 このゲームは武将同士が一騎打ちをしたりするタイプではないので兵士が0になったほうが負けというわかりやすい勝敗条件だ。


 まあ、現実には野戦で兵力がゼロになるまで敵と戦うやつはいないんだがな。


「主君、敵を殲滅しましたぞ」


 心なしか誇らしげに言うチャンフェイ。


「ああ、おつかれさん」


 そして俺の君主レベルが2に上った。


「やっぱレベルがあがったか」


 まあ、これは仕方ない。


 敵を倒した経験値が入ってしまうのでどうやってもレベルを2に上げないことはできないのだ。


 俺に経験値が入るとともに戦った張飛にも少し経験が入るがこっちはレベルアップするほどではない。


「やっぱ成長のバランス悪いよな」


 其れを聞いたチャンフェイが首を傾げた。


「一体何のことでしょう、我が君」


 うやうやしくお辞儀をしながらチャンフェイが言う。


「ああ、いや、お前さんには言っても意味がわからないだろう。

 だから今の俺のセリフは忘れてくれ」


 君主レベルに比べて武将のレベル上げがやたらと大変なのが問題なんだがまあ言ってもわからないだろう。


「分かりました我が君」


 わかるんかい。


 そして敵を倒したところでひょっこり現れる人影。


「私は三国一の顔良イケメン

 私があなた方とともに戦えば百人力ですぞ」


 俺は取り合えす答えておく。


「アア、ウンソウダネ、ヨロシク、イケメン」


 うむ、2番めの武将が顔良というのもだいぶ微妙だな。


 ちなみにこいつも外見はむさいおっさんであって決して美形イケメンではない、周瑜とか超雲辺りならイケメンなはずだがな。


 いやまあこのゲームだと完全に使えないキャラはいないんだが、顔良は正直に言えば結構強さ的に微妙なのだ。


 なのでいつしか顔良イケメンw扱いされていたんだよな。


 運営がそれに悪乗りするのもどうかと思うんだが。


 まあとりあえず俺はチャンフェイとイケメンを部下にしたので先に進むことにしたのだ。


 ちなみにイケメンの部下は長槍歩兵で騎兵に強い。


 といってもレベルを上げて物理で殴る程度の差しかないのであんまり意味は無いとも言えるが。


 ・・・

 ステータス


 君主名:ひろポン

 レベル:2

 黄金:2000

 銅銭:5000

 食料:4900

 領地:なし


 配下武将


 武将名:張飛(チャン・フェイ)

 レベル:1

 兵種:軽装騎兵

 レア度:☆☆

 武力:B+

 統率:B

 知力:D

 攻撃:250

 防御:115

 速度:135

 兵力:800

 戦闘力:1300

 食料消費:100


 武将名:顔良(イケ・メン)

 レベル:1

 兵種:長槍歩兵

 レア度:☆

 武力:C+

 統率:C

 知力:C

 攻撃:100

 防御:80

 速度:20

 兵力:800

 戦闘力:1000

 食料消費:100


 戦闘力は攻撃・防御・速度・兵力の合計値

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