第4話 ヤマタノオロチ
親父が何故味方を攻撃しているか原因を聞いた。
アザナ兄貴が今日持ってきた、紫色の宝石を親父が触れてかららしい。
その後親父は様子がおかしくなり鬼人と化したとの事だった。
「麒麟がいれば……すぐに着けるな」
麒麟はまるで俺が乗るのを待っていたかの様に大人しかった。兄貴は即振り落としたのに……
「その……恥を承知で頼む。妹を……助けてくれ。アイツは命掛けで俺を助けてくれたんだ」
「当たり前だ!」
妹・かぐやは天才だ。そして誰よりも優しかった。俺にさえ優しくしてくれた。
俺が忌み子と呼ばれても、式神を使った陰陽術を教えに来てくれていた。
俺や兄貴よりも先に陰陽師になり、前線で戦い続けている。まるで何かを護るかの様に……
自分の事なんて顧みずに……
「麒麟……ごめんな。お前もアイツの元で戦いたいだろうに」
俺は黒の手袋越しに麒麟を撫でた。麒麟は空を掛け、空中の妖魔の存在を薙ぎ払いながら前線に向かう。
「うわ……こりゃあ……すごい洪水だ」
大洪水。自然の災害が目の前に起きていた。
このままだと結界が壊される上に、俺達の町は大洪水で沈没してしまうだろう。
「お兄様……来て下さったのですか?」
妹は今にも泣き出しそうな表情をして、目の前の大蛇に立ち向かっていた。
敵はオロチだけではなく、親父と大量の式神達。
大量の式神に足止めされて、天才のかぐやと言えど一人では一向に進めない。
(俺もさすがにこの量の水を木に変換は……)
まぁ幸いな事に親父の式神の大蛇は無防備に洪水の中にいらっしゃって……
絶好の標的だった。
「なぁ……今から無茶苦茶やるから、他の人を全力で護ってくれないか?」
「麒麟も力を貸してくれ!水生木……陰陽滅法・
これだけの洪水を全て木に変換するにはさすがに大量の霊力が必要になる。
それこそ俺には不可能だ。だけど敵の攻撃の一部を、自身の攻撃として変換するのは不可能では無い。
そしてその攻撃は敵の元に通じている。敵の力を最大限に引き出して必中の攻撃を行えるのだ。
陰陽術……それは退魔であったり占星だったり何でも出来る様な特別な術に思われている。
が、根本は世界の循環を表したものだ。
万物流転……つまりは物事は変化し続けるからこそ、その流れに逆らわずに流れのエネルギーを利用して新たな流れを作り出す。それを循環させ続ける術式だ。
結局時代が経つにつれて色々な流派に別れていったが、俺は師匠から受け継いだ循環を生かす流派……つまり根元の術式を使う。
「さぁオロチよ。お前が出し続ける水と、俺がお前の力を利用して産み出す雷とではどっちが強いかな?」
最強の式神の攻撃……つまり最強の攻撃を変換して自分のモノにすれば最強なのだ。
陰陽術で俺が使う力は『後の先』。つまり相手の属性攻撃を変換し、確実に相手に勝てる方法で攻撃する。
つまり相手は俺に攻撃すれば負ける。
<バリバリバリバリ>
大蛇の洪水は恐ろしい威力の電気に変わり、洪水を起こす大蛇の体を焼き付くしていく。
更にはその付近にいた親父の式神達も巻き込んで……
もちろんだが味方も巻き込んでいる。それは天才の妹・かぐやが守ってくれることを信じている。
大蛇にダメージが入る毎に洪水は収まり、水の量が減っていく。
「おぉぉぉぉにぃぃぃぃぃさぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁ」
それはそれは妹のかぐやが大変お怒りなさっておられた。
「どしたん?話きこか?」
「攻撃が急すぎます!ゆとりを持って言って下さらないと、全員の命を救えません!」
「俺は全員の命を助けに来たんじゃない。せめてお前の命だけでも救いに来たんだ」
俺の台詞によって、妹の頬が何故か赤く染まる。
そう……俺は前線に来た理由は第一に結界の破壊を防ぐこと。
冷たいかもしれないが、最優先事項はこの場の全員が死んでも、街の人間だけは護る事だ。
第二に妹の保護。天才で将来性があるから救うのだ。
まぁぶっちゃけこいつはあのバカ兄を助けなければ自分は助かっていた。
彼女の優しさへの敬意を示す為に救うだけだ。
あとは生き残っている人間はなるべく死なせない。けれど死んだならそれは天命だ。
「さて……気分はスサノオだな」
目の前の大蛇を倒さねば……再び洪水は起こる。それを防ぐ為にこの場で父の式神を倒す。
「カラリンチョウ・護法・狗神」
俺は犬の式神を出そうとするが……
<シュッ>
鳥形の式神が急に俺の式神に飛んできた。狗神を実体化する前に式神札を破かれて阻止される。
「親父……短時間でずいぶんと変わったな」
その場には……誰も予想出来なかった鬼人と化した親父の姿。
「かぐや!親父を頼んで良いか?」
俺は大蛇と戦い、妹には親父を。化物にはバケモノを……式神遣いには式神遣いをだ。
「はい。お兄様」
かぐやは快諾してくれる。
きっと今日が妹と並び立って戦う最初で最後の日なんだろうな。
彼女は天才だ。だから俺とは住む世界が違う。
だからこそ妹に負けない様に、並び立って戦うのにふさわしくある様に全力で戦おうと思う。
「お待たせ」
ヤマタノオロチ……八の俣を持つ、つまり8つの顔を持つということ。
伝承によれば酒に酔わせて、その隙に頭を全部切り落としたと言う。
結局頭を落としても復活するから、最終的に式神として封印したとの事だが……
厄介な事にオロチは8つの頭から、火や水、電撃、毒の息などを吐くらしい。
そんな奴に1人で挑むなんてバカ過ぎると昔は思っていた。
いや今でも思っている。
けど大切なモノを護る為に命を掛けて戦う人間の気持ちが今なら少し分かる。
怖いけど、前に進まなければならない。
俺はこいつを倒し、こいつを調服した親父に追い付いてみせる。
「陰陽護法・
俺は周囲に火・水・雷・金・土の五行をかたどった小型の式神を配置する。
オロチの攻撃を相殺・変換するのは流石に俺一人だけでは無理だからだ。
「いくぞ!オロチ!」
オロチはそれぞれの頭で火を吐いたり、氷のつぶてを飛ばしてきたり、毒の息を吐いたり、噛みつこうとしたり、一人で戦うのは無謀と呼ばざるを得なかった。
「五行変換」
オロチの吐きだす攻撃を、式神を使って変換していく。
火の吐息は土のつぶてに変えて、土の式神の攻撃に変換する。
氷のつぶては火の式神を使って溶かし、水に変換してから木の式神が雷へと変換し攻撃する。
相手の攻撃を自分の攻撃として変換して、それを元にカウンターを決めようとする。
だが相手が使う属性が多いということは、自分の攻撃も相手の攻撃に相殺される。
つまりは決め手が無い。
まぁ……オロチが五行の全ての属性を使うのならば俺に勝ち目は無かっただろう。
だがオロチは使っていない属性がある。
それは偶然だろうか?かつてのオロチが退治された属性と同じ属性。
「俺さぁ、でかい妖魔と戦う時にやってみたかったことがあるんだよね。お前で……試すね?」
オロチの使っていない属性……『金』つまり金属。
金を生むは土。土属性は……オロチがする攻撃の中に無いな……一応鋭い歯は土だろうけど……
ならば俺は火を噴く頭の元に突っ込んでいく。
「火生土……土よ」
オロチの火の吐息を土のつぶてに変える。
「土生金……陰陽滅法・
オロチの攻撃から生成した土のつぶてを、俺自身の霊力を使って金属に変える。
と同時に、オロチの口が金属で塞がる。こうなれば他の頭を使って攻撃するしかなくなる。
だけど俺の技はここからが本番だ。
塞がった口の金属から、続々と先の鋭い針が生まれていく。
人間では絶対に出来ない技。体の中を巨大な針千本で貫く。これで終わりでは無い。
変換した霊力を辿り、攻撃の大本の部分まで鋭い針は侵入していく。
霊力を口で練って口から出すのみの攻撃であれば、口と顔が針千本に貫かれるが……
もしも攻撃が霊力を胴体の中で練って発動しているのであれば、胴体を針千本が貫く事になる。
「ありゃりゃ……御愁傷様」
八つの頭があっても胴体はひとつ。
胴体がひとつということと、頭を斬っても再生するならば、力の根元は胴体の中にある。
ならば攻撃を辿らせて、胴体を中から貫けば一撃だ。
予想ではあったが正解の様だった。
「動けば身体の中の針が暴れまわり、より酷い痛みに変わるぞ?って言っても、お前は式神か」
オロチは内から貫かれて飛散した。
式神札を貫く事に成功したのだ。
「正面から突破しようとしたら、半日はかかるだろうか?」
まぁ良い。あとは親父を倒すだけか……
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