やはり本物は壊れるらしい。それで僕らは偽りを選んだ。
万和彁了
第1話 それは本物に過ぎず
星に手を伸ばしたいと思ったのはいつのことだったのだろうか?もう思い出せないほどの昔のことだ。
「うわぁ綺麗……
桃色がかった茶髪の汐見柚葉が広がる星空は楽し気に見詰めている。
「マジで映えますね!きゃー!ゆずせんぱい!ぴーすぴーす!」
明るい茶髪に琥珀色の瞳の鏡原羅美が柚葉と一緒に星空をバックに写メってる。
「矢城くん。原始時代の壁画には星座を描いたっていう説があるそうよ。昔の人もきっと星を見ていたね。私たちのように」
天ヶ崎透子は綺麗な青い瞳で星空を俺の隣で見詰めている。
「お前ら。少しはBBQの準備を手伝えよ。なんで教師の私がこんなことを……」
俺たち学術文化委員会の担任の社会科教師の浅間恵利がひとりで肉を焼いていた。俺たちは目的も夢もバラバラだけど、いまここでともに時を過ごしている。これは本物なんだと。
俺たちは錯覚していた。
学術文化委員会とはわが校に伝統的に存在している文科系の委員会である。色々と学術っぽいことをやるのが目的であり、なんともガクチカ感あふれている委員会だ。だけど部活ではなく、この委員会は超進学校でペーパーテスト主義な校風とは相性が悪く人気がない。だけど昔は活気があったらしく、いまでも教師の推薦という名の問題児隔離施設と化している。そこに隔離されているのが俺と天ヶ崎。そこに汐見が気がついたら入っていて、さらに問題起こした鏡原が放り込まれて、俺たち四人で活動することになった。
「バズの研究しましょう!モテるダンスを生み出してPV稼いで委員の収入でまた旅行に行きましょうよ!ねぇ維心先輩♡」
「お前のバズ愛何とかなんねぇの?それで問題起こしてここに放り込まれてるのわかってる?」
「あんなの勝手に男子たちがわたしに群がってきて自爆しただけです!わたしのせいじゃないでーす!」
鏡原はバズの鬼だ。無駄に賢い頭でいつも可愛いを探してはネットの海に流してる。本人もすこぶる顔立ちとスタイルがいいから、周りの男子がすぐにトラブル起こす。
「ダンスいいね!あたしもやりたい!どう維心?かわいい?」
「おう。ばかわいいよ」
「ばかはよけいかな?!」
汐見が話に乗っかって椅子から立って踊り始める。大きな胸がフルフル震えている。こいつも顔はいいがアホなので准問題児だ。
「はぁ。どうして問題児ばかりなのかしらね。昔はこの部屋も静かで落ち着いていたのに……」
「お前も問題児だろ。なんで全校の女子から嫌われてんだよ」
「私優秀だもの。仕方ないわ」
「そういう性格の悪さだろ」
天ヶ崎は長い黒髪でぱっと見清楚な模範的生徒に見える。だけど日本人離れした美しい顔立ちと青い瞳がトラブルを呼び込みがちだ。容姿は変えられ泣けど、同時に負けず嫌いで性格も悪いから本当に救いがない。
「ところでさ。さっきからお前ら気づいてる?」
「なにが?」
「なに?」
「なんです?」
「窓の外見ろよ。めっちゃ見られてるんだよ」
窓の外に樹がある。そこの影から黒髪の女の子がこっちを見ていた。長い前髪が顔を隠しがちだが綺麗な目をしている。表情は死んでいるけど。とても可愛らしい顔立ちだけど、なんか地味な感じ。磨いたら化けるだろうなってことは察する。
「あん?!こっち見てるですって?!見ろよ!めっちゃ私を見ろですよ!おらぁん!」
「ダンスみたいのかな?!いえーい!」
鏡原と汐見が窓から外に出てダンスしながら樹の影に隠れている女子に向かって迫っていく。
「ひぃ?!」
その奇怪な姿を見て女の子は走って去っていった。
「オラつかないでよ、お馬鹿さんたち。はぁ」
天ヶ崎がため息ついてる。ほんまこの委員会どうかしてる。だけどこの空間は好きだ。色々なトラブルを四人で駆け抜けてきた。だから俺たちにはなにか絆というには恥ずかしいが本物の繋がりがあると俺は信じてる。
それが偽物でしかないことにまだ俺たちは気づいていなかったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます