剣聖は悪役令嬢と旅をする〜悪役令嬢だからかやはりツンデレが可愛いんだがどうすればいい?〜
赤坂カシム
第1話
俺は一兵卒から、剣聖まで成り上がったロイという。
そんな俺は実は異世界からの転生者だったりするのだった。
34歳でしがないサラリーマンのナイスガイ鉢屋次郎は駅のホームで電車を待っていたところを誰かに突き飛ばれされた。
異世界の一般家庭に転生し、新しい名前を与えられる。
それがロイだ。
父親は元冒険者で剣士だった。
実際に腕っぷしも良く、教え方も上手かった。
「ロイ。剣を払いたかったら絡めてこうだ!」
剣道のように剣で剣をくるりと絡めて振り払う。
「ああ!飛んでっちゃった!!」
「そう!こうやって相手の剣をいなすんだ。」
思えば、剣聖となった今、昔を思い出していたがしばらく両親に会ってないなあ。
そんな矢先に一応マイホームとなる我が家に一通の手紙が届いていた。
俺は用のあるファイロス家へ赴くことになった。
何せ王宮からの手紙だ。
内容は、身寄りの無くなったファイロス家の令嬢アリス様の身を預かってほしいとのことだった。
ん?
急に父親になれって?
そりゃあいくら何でも驚くよ。
だが、事は事なので無視するわけにはいかなかった。
歳は15だったか。
その歳で両親と死別とはこの世界も残酷なものだ。
そんな風に思慮に耽っていると目的地に辿り着く。
使いである筆頭執事サマスは言う。
「ここまでご足労いただきありがとうございます。ささ、中へご案内致しますね。」
ここまではファイロス家の迎えの馬車で来た。
馬車は豪華でどうも平民の出の俺には窮屈ささえ感じられた。
だが、今はそんなことはどうでもいい。
果たしてどんな娘が待っているのか。
トントン。
「お嬢様。剣聖様が来られました。」
「...」
返事がない。
「お嬢様!どこにおられるのですか?」
ガチャ。
ドアがあちらから開く。
すると中から出てきたのは。
白銀の髪を後頭部に結い上げ、それは見目麗しい少女だった。
「アリスお嬢様。いらしたのですね。こちら剣聖ロイ・カラード様です。」
「初めましてアリスお嬢様。今回お話しだけでもお伺いしたく参りました。」
俺は貴族の挨拶をする。
この世界の貴族の挨拶は左手を腰に当て、右手を上から下ろし、それと同時に腰を屈める何の変哲もないものだ。
「あなたが剣聖ロイね。魔族の四天王ライオスと引き分けた実力を持っていると聞いたことがあるわ。」
しかし、そう言う少女の目はどこか凍てついている。
そして。
「サマス。彼を客間まで案内しなさい。」
「かしこまりました。」
サマスに案内された客間は豪勢な造りになっていて、飾られている壁画に俺は目をやる。
「これは、アリス様の父君ですか?」
俺はサマスに問いかけた。
「いいえ、こちらはアリス様の祖父にあたるタキト様でございます。」
「そうなんですね。彼の英雄タキト様だったとは。」
タキト・リ・ファイロス。
腕っ節で平民から貴族に成り上がり、現在は五大貴族になるファイロス家を立ち上げた男。
俺はどこか憧れてしまう部分があった。
俺が剣聖を目指し、野心家になった理由は後ほど語るとして。
客間についに着飾ったアリス様のご登場ってわけだ。
正直俺は少しだけ息を呑んだ。
サマスが俺とアリスにカフェオレとクッキーを差し出した。
そして、本題に入る。
「女王陛下より、アリス様の保護者代理人になってほしいと命というよりは、頼みを受けまして。」
「女王陛下が...そうですか。」
アリスはどこか驚いた様子だ。
「あなたは巷で私が何と言われているか知ってますか?」
ここで、俺は痛いところを突かれる。
だが、正直に話すことにした。
「存じております。『氷の微笑。』あなたはそう貴族の一部、いや半数に揶揄されているのではないですか?」
そう、それは褒め言葉なのではなく皮肉が込められていると俺はそう踏んでいた。
「ええ。その通りよ。私は王族、貴族にも疎まれている。そんな私の身寄りをあなたが引き取りたいなんて思うのかしら?」
「それは、自分の目で見て確かめたいと思っております。」
「では、あなたを試させてもらいます。」
「試す...ですか。」
一体どんな無茶を言われるのか。
そう思っていると。
急に頭がグラつく。
「やっと効いてきたみたいね。さて、今回のはどんな風に鳴いてくれるのかしら。」
そんな声が聞こえた気がした。
そして、俺の意識は途切れる。
気がつくと、そこは蜘蛛の巣が所々張り付き、お世辞にも綺麗とは言えない空間だった。
壁、床、天井も石が敷き詰められており、灯りもない。
ここは地下室か?
「ンン!!」
俺は口を布で抑えられ、手足も縛られていた。
「気がついたようね。」
そこに、ランタンを持った白銀の少女が現れる。
その手には鞭があった。
そして、唐突に俺の背中を叩く。
俺の鎧は隣にバラバラに転がっていた。
俺は衣一つしか纏っておらず、流石に痛みを感じた。
「フフフ!!」
バチン!!バチン!!
少女は容赦なく剣聖である俺を引っ叩く。
「どう?痛いでしょう?でもね。私も今の家に引き取られるまではこんな目に遭ってきたのよ!!」
少女は醜い笑みを浮かべてそう言う。
そうか。
これがこの少女の瞳から出ていた答えだったんだ。
幼いのに酷い目に遭ってきたんだな。
俺はどこかやるせなくなった。
だが、その時。
「キャッ!!」
後ろから何者かがアリスを蹴り飛ばした。
「何をするの!?サマス!!」
「よくもまあぬけぬけと。私に今までどんな扱いをしてきたのか忘れたのですか!?」
サマスの目は血走っている。
アリスは顔を思い切りぶたれる。
そして、歯が折れ、口から血を流すまで何度も何度も。
「や、め、、て...」
何となく嫌な予感がする。
ついにはナイフを取り出し、サマスは狂ったように言う。
「剣聖も、鬱陶しい小娘も同時に消すチャンス。みすみす見逃すはずないだろう!!ガハハハハ!!」
少女の瞳に諦めの絶望が宿っている。
しかし、俺もただ見ているわけではなかった。
ここは、地下。
おそらくファイロス家のものだろう。
なら助けは叫んだって来ない。
だが、剣聖ともあろうものこの程度の状況では何ということもない。
布を噛みちぎりこう言う。
「アリス様。あなたの瞳には助けてと書いてありました。それに気づいた今放っておく事はできません!」
ロイは馬鹿力で縄を振り解き、一気にサマスとの間合いを詰める。
「こんな小さい少女に手ぇ出してんじゃねぇ!!!」
俺の拳はサマスの腹にめり込んだ。
「グウウゥゥゥ!!!」
サマスは血を吐く。
だが、こいつ俺の一撃で倒れないだと?
「私はあの方から貴様ら2人の抹殺を命じられている。この好機!見逃すかぁぁ!!」
サマスの目が赤黒く染まる。
「貴様まさか!?」
サマスはアリスに向かってナイフを投げる。
しかし、俺はその射程に入り、間一髪左手でナイフを受け止める。
だが、それは手のひらに刺さる。
「フハハ。さすが剣聖私の攻撃は痒くもないか!?だが、これはどうかな?」
そう言うとサマスのオーラは凄む。
「ブラックボルト!!」
「グハッ!!」
俺は黒い雷光をモロに受けた。
ダメージはやはり無視できない。
その時。
「ケ、ンセイ...後ろの壁を壊しなさい。お父様の剣が...」
ボロボロのアリスが必死に俺に伝えた。
「チッ!余計なことを。」
俺は肘打ちで思い切り、壁を壊した。
そこにあった一振りの剣を見て俺は笑った。
「待ってろ!今助けてみせる。」
2人の命運はいかに。
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