顔のない似顔絵

はらぺこおねこ。

Scene001 たとえ世界がつらくても

第1話 夜の深さに溺れそうな僕に誰かが微笑んでくれたらいいのにな

ここにひとり。

男がいる。


名前は、斎藤 いち


歳は26歳。

彼女と呼べる人はいない。

もちろんいたこともない。

仕事もない。

障害者年金で生計を立てている。


毎日パソコンを開いて、小説サイトで小説を書く。

いつも完結しても閲覧数は、100未満。

小説を書いても読まれない。

つらいけど仕方がないこと。


読んでもらえる努力をしていないから。

アプローチをする技術を持っていないから。

そんな人生。


でも、諦めている訳では無い。

就職活動はしている。


一のスマートフォンに一通のメールが届く。


属に言うお祈りメールだ。


一は思った。


自分は生きているだけでダメなのだ。

生きることは許されていないのだ。

もしも生きる意味を。

もしも生きる理由が。

そしてそれが許されるのなら……


ひとつくらい採用してくれる居場所があってもいいのに。


でも死ぬ勇気はない。

マンションから飛び降りても。

服毒して死ぬことも。

自ら体を傷つけても。


一は死ねなかった。


1ミリでも1ミクロでも、死の恐怖があれば……

一は生きたいと思ってしまう。

生きたいと思ってしまえば、それが叶ってしまう。

それは、一の特殊な能力。


『一が十』


**「一を聞いて十を知る」**


ということわざがある。

物事の初めを一つ聞くだけで、全体を類推できるほど、非常に賢いことや理解が早いことを指す。

これは、孔子の弟子である子貢が、同じく弟子の顔回の聡明さを褒めた言葉に由来する。


でも、一のはそうじゃない。

一を十に、十を百に、百を千に変える能力だ。


でも、自由に使えるわけではない。


使いこなせないその能力のことを人は呪われた能力デモニックと呼んでいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る