異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん

第1話 バカ神と天国、そして転生

 私の人生の転換期は、3歳だったと思う。


 両親が事故で亡くなり、親戚もいなかった私は、児童養護施設で暮らすことになった。そして物事の判別がつく年齢になる頃には、ほとんど毎日のように、他の子供たちにいじめられて。


 家事手伝いができるようになれば、施設の人間にちょくちょく手伝わされ。さらに大きくなると、ありとあらゆる家事をほとんど押し付けられたから、いい記憶なんて1つもなかった。


 まぁ、両親についての記憶がなかったおかげで、両親に会いたいとか、寂しいとか、そういう思いを抱くことはなく。それについては、逆に覚えていなくて良かったと思う。


 でも、そんな嫌な思い出ししかしなかったからこそ、施設を出た時のワクワク感と言ったらなかった。

 そしてアルバイトを経て、ずっと憧れだった、大好きな動物に囲まれる仕事、動物園に就職することができて、本当に嬉しかったよ。


 そしてこれからは、自分の好きなように、幸せに暮らせる。心からそう思っていたのに。


 ……なのにこれだよ。


 今、私の目の前では、20代後半くらいの、神様が着るような、綺麗な洋服を着たを着た男が土下座していて。さらにその隣で、30代後半くらいの男が深々と頭を下げている。


『申し訳ございません!!』


『私からも、本当に申し訳ございません!』


「はぁ……」


 もう、溜め息しか出なかったよね。実はこの神様みたいな洋服を着て土下座している男、私たちの世界で言うところの本物の『神』らしく。そしてもう1人のほうが、神の使いでセシルさんっていうの。そして私が今いる場所は、私たちが言うところの天国らしいよ。


 なぜ私が天国にいるのか。それが神が土下座している理由なんだけど。このバカ神、本来は別の人を天国へ連れてくる予定だったらしい。だけど何をどう間違えたのか、私をここへ連れてきてしまったんだ。簡単に言えば、ミスって私を殺してしまったらしい。


 まったく、私の運命はどうなっているのか。少しくらい幸せを味わったって、誰も怒らないと思うんだけど。しかも神のミスで死んだのに、すでに地球では死亡扱いになっている私は、生き返ることもできないっていうし。……まぁ、死んだ人間が突然生き返ったらね。


 そんなこんなで、ここまでの事情を延々と聞かされながら、ずっとバカ神の土下座を見せられているところだよ。


「はぁ」


『本当に、ごめんなさい!!』


 もう何回ため息をついたことか。ただ、いつまでもバカ神の土下座を眺めていても仕方ないしな。これからどうなるのかも気になるし。私はそう思い、土下座中のバカ神に声をかけたよ。


「ずっと土下座されても、生き返るわけじゃないんだから。これからの話をしてくれますか? 私はこれからどうなるの?」


『そ、それなのですが!! ほら、さっさと説明する!!』


『あ、ああ……』


 セシルさんに急かされて、慌てて話し始めるバカ神。そんなバカ神の話はこうだった。


 まず、私には2つの選択肢があるらしい。1つ目は、このままここ天国で暮らすこと。次の生を受けるまで、そこで穏やかに過ごせるらしい。


 そして2つ目は、今すぐ別の世界へ転生するというもの。この宇宙には地球だけじゃなくて、無数の世界があり、そこには人間だけじゃなく、いろんな種族が生きているんだって。地球に戻ることはできないけど、私の存在を知らない世界なら、すぐに転生できるみたい。


 その話を聞いて、私はすぐにあることを考えたんだ。もしかして、私の大好きなライトノベルや漫画に出てくるような世界へ行けるんじゃないかって。


 施設での最悪な日々の中で、唯一の楽しみがライトノベルや漫画を読むことだった私。読むたびに、剣と魔法の世界や、動物に似ている魔獣と仲良くなれる世界で、幸せに暮らしたいなぁって、いつも思っていたの。


 だからもしも、私の理想の世界が存在しているのなら、このチャンスは逃せないじゃ……。


「本当に、私が行きたい世界があれば、そこへ行かせてくれるの?」


『も、もちろん。今回のことは僕がミスしたせいなんだから、君の望むようにするのは当たり前だよ』


「それじゃあ……」


 すぐに私はバカ神に、ライトノベルや漫画の世界の話をしたよ。まぁ、なんだって把握してるバカ神なら、説明する必要もないのかもしれないけど、相手が相手だから一応ね。


 ただ……、話していているうちに、そんな都合の良い世界あるわけないか、と思えてきちゃって、またテンションが下がってしまった私。だけどそんな私に対して、私の話を聞いた後の神の返事は軽かった。


『それで良いの? ならちょうど良い世界があるから、それで決まりでいい?』


「う、うん」


 まさかこんな簡単に、私の転生が決まるとは。セシルさんが、とってもホッとした顔をしていたよ。


 私に、無理難題を言われるんじゃないかとか、もしも理想の世界がなければ、また私も怒りを買うかもとか、いろいろ考えていたんだろうね。


 もし私と同じようなことになった人がいたとして、その全員が納得する、なんてことないだろうからね。そしてその人たちを宥めるのは、どう考えてもバカ神じゃなく、セシルさんな気がするし。神の使いも大変だ。……セシルさん、お疲れ様。


 こうして私の転生が決まると、転生の準備をすることになったんだ。まず異世界で生活するために、最低限必要な物をもらい、それをマジックバッグという不思議バッグにしまったよ。


 マジックバッグっていうのは、見た目は普通の肩掛けバッグ。でもバッグの中には、ものすごく広い空間が広がっていて、山ほど荷物を入れられるし、しかも入れた物は腐らないという不思議なバッグなんだ。これも、迷惑をかけたお詫びとしてもらったの。


 しかも私のバッグはほぼ無限に入るから、新しい世界へ行ったら、何でもかんでも、とりあえずしまっておけば良いよって。


 そして荷物の準備が終われば、魔法と剣、魔獣の世界へ行くんだからと、魔力と魔法を授けてもらったよ。魔法は何が使えるかは、行ってからのお楽しみだって。バカ神のことだからちょっと不安だけど、まぁ、楽しみにしておくことに。


 と、こうして全ての準備が終了。ただ、慌ただしいまま行くのもあれだから、一旦落ち着こうということで。私はお茶を出してもらい、それをゆっくり全て飲み終えると、いよいよ転生することになったんだ。


『転生先は、いきなり姿を現して他の人が驚かないように。街じゃなくて、街の近くの森の出入り口付近にするね。それと、すぐに行動できるように、あの世界の成人、15歳で送るから。あとは時々教会へ来てくれればいいから』


「分かったわ。協会へ行けばいいのね」


『今回のこと、本当にごめんね。新しい世界へはしっかり送るから、任せてよ!』


「……本当、頼むよ?」


『本当頼みますよ!』


『分かってるって。それじゃあ……新しい世界では、君の生きたいように生き、幸せに暮らしてね』


 バカ神がそう言うと、私の体を白く綺麗な光が包み込み、すぐに何も見えなくなったんだ。ただ……。


「あれ? なんか眠くなって……」


 転生は数秒で終わって、すぐに行動できるはずなのに、何で眠くなるの? そんなことを思っているうちに、私は意識を手放してしまったんだ。






     

『し、しまったぁー!!』


『このバカがぁ!!』




      ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


【あとがき】

お読みいただきありがとうございます。ありぽんです。


こちらの新作

『カクヨムコンテスト11』

に参加させていただきます。


『おもしろい』『続きが気になる』と思っていただけたら、

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よろしくお願いしますm(_ _)m

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