スキル『ポイ活』で地球の商品を購入できる私、理不尽な転移先に逆切れして国宝を次々にポイント化したら所持金がカンストして最強になった

街風夜風

第1話 第一被害者リーゼ王国

「ミラン公爵、勇者召喚の禁術に成功したわよ!」

「流石、稀代の天才魔法使いと名高い姫様ですな。勇者がいれば隣国との戦争に勝利することができるでしょう」


 は……なんだこれ?


 高校一年生の私———雨音璃々あまねるるは、突然視界に飛び込んできた光景に目を疑った。


 コテコテのドレス姿の金髪お嬢様に、中世貴族っぽい人達、全身鎧を纏った兵士が大勢いる。部屋の床には巨大な魔法陣が広がり、雰囲気からして明らかに日本じゃない。


「さぁ異世界召喚した勇者の武威を示すために、姫様の号令で城の兵士を動かしましょう」

「え、お父様の許可を得ずに?」

「陛下は出払っておりますゆえ、致し方ありません」


 異世界って……流石に冗談だよね? けれど、貴族らしき人達の顔は真剣そのもので、嘘を言っている様子はない。もしかして、マジで異世界にきちゃった?


 待て待て、じゃ日本にいた私はどうなった?

 直前の記憶を思い出す。

 超貧乏一家に生まれた私は家計を助けるためにバイト漬けの日々を送っていた。

 今日は掛け持ちバイト60連勤目でファミレスで働いてて……そうだ、オーダーをとってたら眩暈がして頭から床に倒れたんだ!

 ……嘘じゃん、私過労死したん? 高校生なのに? ショックすぎる。


「ご安心ください姫様、勇者がいれば戦争に負けることは絶対にありません」

「……そ、そうよね」


 これは、いよいよ異世界召喚が現実味を帯びてきたな。

 というか、勇者って私のことだよね? 

 普通の女子高生に戦争とかお願いされても困るんだが。私は自分と身近な人が幸せなら他はわりとどうでもいいドライな女だぞ。


「……あのー、戦争とか勘弁してほしいんですけど」


 流石に断らせてもらう。

 しかし、私がそう言うと貴族の男達が腹を抱えてケラケラと笑い出した。


「お前の意向など関係ないのだよ。勇者召喚にはこの場にいる者の命令に逆らえない奴隷契約が含まれている。このミランが命じる、許可なく動き、喋ることを禁じる!」

「!?」


 う、嘘でしょ……私はこれから一生コイツらの操り人形ってこと?


「くくくっ、絶望に染まった顔をしているじゃないか桃色髪の娘よ。貴様には奴隷戦士になって大勢の人を殺してもらうぞ」


 ……人殺し?

 こ、怖い!

 そんなの絶対に無理だよ。どうにかして今すぐ逃げる方法を考えないと、でも体が動ないんじゃ逃げようにも……って、命令されたのに拘束力のようなものは感じない。試しにこっそりと小指を動かしてみる……あ、あれ、普通にうごける。


 ミラン公爵が偉そうに命令してくる。


「異世界を渡った勇者には強靭な力と魂を反映した『スキル』が発現される。さぁ、どんな力を得られたか我々に教えろっ!」


 ……な、なんで動けるんだろう。とりあえず自由なのを悟られないように命令を聞いているフリをしよう……えっと、なんだっけ、スキル? 

 意識を集中すると目の前に透明なウィンドウが開いた。どうやら私にしか見えていないらしい。


 ◇スキル『ポイ活』

 〇効果

 異世界ラムダのアイテムを砕いて、ポイントに変換できる。ポイントは地球の商品と交換可能。

 〇宝具召喚

 小槌を呼びだせる。ハンマープライスと唱えながらアイテムを叩くとポイント化できる。なお、自身が所有していると判断されたアイテムにのみ適用可。



「ポイ活っていう異世界のアイテムをポイントと交換する能力らしいです」


 ふわっと簡潔に説明すると、貴族の男達が難しい顔で相談をはじめた。どうやらポイ活の意味が理解できていないようだ。ミラン公爵が舌打ちをして、ガツンと一本の剣を地面に突き立てた。


「まあいい! お前の力はモンスターとの戦いで判断させてもらおう。この剣は10代目異世界勇者アーサー・ペンドラゴンが残した伝説の宝剣エクスカリバーだ。かつて実在した最強の魔王に対する唯一の対抗手段とされている、リーゼ王国の国宝である!」


 目を奪われるほどのキラキラと輝く美しい黄金の剣だった。


「なにをぼさっとしている、さっさと動け!」

「あ、はい」


 ……剣に見惚れてて全然話を聞いてなかった。

 聞き返したら私が自由になっているのバレちゃうよね?

 

 一体何を命令されたんだ? 

 う~ん、まあ、スキル説明のあとにわざわざ剣を出してきたってことはそういうことか。


 よしっ!


「はんまー・ぷらいす!」


 スキルを発動させて、虚空から召喚した小さな小槌でエクスカリバーを叩くと、伝説の宝剣が粉々に砕け散った。


 お、ラッキー、ポイント大量にゲットしたぞ。

 

「き、き、貴様ぁぁぁ何をしたぁぁ! エ、エクスカリバーをどこへやったぁ!」

「……え、命令通りに砕いてポイントにしましたけど?」


 血の気の失せた姫様が尻もちをつき、瞼をガン開きしたミラン公爵が唾をまき散らしている。な、何事?


「そんな命令は断じてしてないっ、その剣でモンスターと戦えと言ったのだっ!」

「はぁぁ!? さ、先に言ってよ……。てっきりスキルの確認をしたいのかと思ったじゃん……ごめんなさい、次から気をつけますね?」

「次などあるかッ世界に一本しかない伝説の宝剣だぞッ!」

「だ、だけど、言葉足らずの命令をしたそっちも悪くない?」

「言葉足らずなのは貴様のスキル説明だぁぁ!」


 顔色の悪い姫様がぶつぶつと何か言ってる。


「エ、エ、エクスカリバーがぁ、お父様に知られたら……ど、どうしよう!」


 貴族達も頭を抱えて真っ青になっていた。


「これが露見すれば我々は死刑だッ」

「くそっ、なぜこんな馬鹿が勇者に選ばれたのだ!」


 ミラン公爵が血走った目で叫ぶ。


「この無能女を殺せっ! 陛下にバレる前に全てをもみ消すのだ!」


 は?

 殺せって……私こんなミス一つで死ぬの?


 なんかいい加減ムカついてきたわ。なんで無理矢理連れられてきた私が、殺されそうになってんのよ。


(ふっざけんなッ!)


 だったら全力でやり返すまでよ。


 急いでスキルを発動して、武器になる商品がないかを探す。透明なウィンドウはタブレット感覚で操作でき、通信販売のようなページが開いた。


 はやくッはやくッ、武器になるようなものは……これだ!

 なんかチェック方式で色々オプションがつけられるぞ、ええいっ全部いっとけ!

 購入ボタンを押す、ついでに弾も大量購入。

 エクスカリバーのおかげでポイントは山ほどある。


 手元が光り、黒塗りの拳銃『デザート・イーグル』が二丁が現れた。

 銃とか詳しくないから適当に買ったけど、想像の10倍くらい軽いな。あ、異世界にきて私の身体能力があがってんのか。


「なっ、なぜ自由に動けているんだ!? 姫様!?」

「ひぃぃ、ごめんなさい、ごめんなさい!」

「コイツは危険だ、今すぐ殺せぇ」


 二丁拳銃を構えた私は引き金を引いて、パパパパンとミラン公爵に4発ぶち込んだ。


「ぐはぁぁぁ!?」


 ぶっとんだ公爵が悲鳴をあげて倒れ込む。


「ミラン閣下が撃たれたぞ!?」

「誰か回復魔法を今すぐに!」


 や、やばい。人を撃ったショックで手が震える。とりあえずやらなきゃ殺されるんだし、こういう時は、直感に従って行動あるのみッ。


「ひ、姫様拉致っちゃお」

「だれかたしゅけて」


 人質にした姫様のこめかみに銃口をつけて、全力で逃走開始。姫様の叫びを無視して引きずりながら、通路に踊りでる。


 さて、右か左か、う~んたぶん勘で右だな。一歩踏み出すと、回復を終えたミラン公爵が叫ぶ。


「や、やめろそっちだけには行くなっ! お前だけはあそこに行かせる訳にはいかんのだぁ!」


 やめろと言われて足を止める逃走犯がいてたまるかっての。そのまま走り出した私がたどり着いた先は大きな部屋前の扉だった。


「お、なんだここ出口じゃないの?」

「お願いだから引き返して!」


 姫様もこう言ってることだし、蹴るか。

 バッコンと扉を破った先は……宝物庫だった。



―――――――――――――――


あとがき

新作です!

ちょっとお馬鹿な主人公が、現代兵器を操り無自覚最強ムーブでわちゃわちゃする話です。

ブクマと★で応援をお願いします。


作者フォロワーの方へ!

順番的にラブコメ作品の予定でしたが、カクヨムコンにあわせて異世界冒険作品になりました。申し訳ございません!

ラブコメは一月中に投稿予定です。

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