第2話 出会いが嘔吐ってまじ?






「いや〜ごめんごめん!感情の昂りが体を動かして止まんなかったわ〜!」



受講が終わって帰ろうとした時に席にきらりが戻ってきた。

首筋に少しだけ汗が見える

「何してきたの」



「めっちゃ走ってきた!!」



馬鹿?













時刻は夜8時あたり。

提出用のA4用紙がちょうど切れていたので、ランニングがてら最寄りよりも少し遠いコンビニまで来ていた。



「あらっしたー」



すごい適当な学生バイトからもらったお釣りとレシートを適当にポケットにつっこみ、ついでに買った水を飲む。



冷たい、夏が終わり始めた頃くらいなので丁度いいくらいの体温になる。


これがよくいう整うってやつか....!




気分が良くなり少し寄り道をしながら帰る。





スマホの画面がつき、きらりからのメッセージがみえた。




_____________

「やばい!!!!!!!!」

_____________



うん、それだけじゃわかんないぞ





ほとんど同じことを打って返信すると、1枚のスクショと共にまた熱量が凄いのが来た。



___________________

添付写真




「一日に2枚も画像提供きた!!!!!明日雪降るよこれ!!!!!!!!」


___________________


どうやらフキ様は機嫌がいいのか分かんないけど復活してからどんどん投稿しているらしい。




「寝れない!!」と対面で聞いたらいつもよりも2割増の声量であろうレスポンスが来たのでそのままスリープモードにした。







___そういえば、あの写真背景暗かったな...丁度今くらい?



「ま、そんなにリテラシー低くないか」


あの桐矢フキがそんなヘマはしないだろうと考えて余計なことを忘れる。





_______違う、近くにいたら生で見てみたいなとかは思ってない__絶対





脳内のきらりがニヤニヤしていたから自分で否定しておく。









人の影が前方に見えた。



街灯から離れているが、ベンチに1~2人位の影が見える


気まずいから避けて帰ろう..







にしても


なんだか少し様子がおかしいような気がした。

気まぐれかなんだか分かんないけど、少し離れた場所から観察することにしてみた。













___________________________




頭痛い。



「あれ....予約投稿したっけ.....」





朝に前から用意してた文章を投稿したのは覚えている。

さっき撮ったのは......どうだったっけ.....





「ぁ__」



スマホを見ようとするけど手も動かない。そういえば寒気もしている。



しばらく前に座ったベンチに横たわったままぼーっとしていた。




ちょっとした後、近くから人の気配がした。

というか話しかけてきた。

不快な吐息が聞こえてくる。




「....ハァ...ハァ...ほんとにいたんだ...!フキ様だ....!」



汚ったない低音、黙っててくれ



もうまぶたを動かすことすらもだるくてほとんど開いていないような目で声の鳴る方を見た。




知らない

男?

不潔

来るな



「寝てるのかな...フキ様...無防備で可愛い...僕のフキ様...」





意識があるのには気づいていない。



吐息がどんどん近づいてくる

汚い


来るな


嫌だ


来ないで


触れないで



「ぁ____」











手が残り数センチで私に接触する前に、横からとてつもない光と大きな声が聞こえた



「お巡りさん!!!!こっち!!!!」






こっちは、不快じゃないな




_________________________








あっぶな!!!?




絶対やばい状況だったってこれ



息が荒くて挙動がおかしい男の人が明らかに不審な行動をしていた。


会話は全然聞こえなかったけど知り合いでは無いだろう、あれは





この状況で普段のどんなテストよりも行動的になって最善が出来たと思う。




お巡りさんなんて居ない。




スマホのフラッシュとレジ袋の音で何人かいるように見せ掛けただけ。


暗い中でさらに興奮状態なら錯乱して細かいことは気付かないだろうと思い実践した。





結果として


「まぶしっ!!.......チッ..」






男の人は私とは逆方向に走って逃げて行った。





良かった〜...

このままこっちを直視してきたら多分ハッタリに気づいてこっちにも来ただろう。







まあそれよりも



「すいません...大丈夫ですか...?」




横たわっていた襲われそうだった人に駆け寄って声をかける。






「....気持ち悪....」



心底軽蔑を含んだ声が聞こえた。


声いいなこの人...どっかで聞いたことあるっけ?





その人は仰向けから姿勢を戻したかと思うと咳をした。




「...ケホ」



咳がちょっとした間隔を置いて絶えず聞こえてくる。


背中と頭が動いて、咳に水気が増えた。





あ、これガチめに吐くやつだ。





「.....ごめ...ぅ」



「まってまって使ってこれ」




手元にずっと会った袋を彼女の口元の下辺りに持っていく。




数秒後、持っていた袋に重さと嗚咽が入っていった。







........そういえば、明日の昼ごはん買ったんだった...



買ったおにぎりたちは、黄色い海の中に溺れているだろう。




すまない______









どさどさと増していく重みが落ち着いた頃、吐いたあと特有の咳をまたし始めた。




見ているだけなのが少し辛くなったので、



「..失礼します」


背中をゆっくり揺する。



手を置くと指の先に髪が刺さるのを感じた。







「...あ”ぁ”...」




「...イガイガしますよね...飲みかけでよかったら...」



さっきまで持っていたペットボトルを渡すと、「....ありがとう」といって口をゆすぎ始めた。




見られるのは嫌だろうと思って逆を見て終わるのを待った。





どうしようかな..どこに捨てようと思っていると、後ろから声を掛けられた。




「...終わったよ....ごめん」




謝罪と感謝を貰う。んなの別に大丈夫なんだけどな...と思って振り返る







しばらく経ってこの場所の明かりになれたのか顔が鮮明に見えた。





形だけで全てを裂けそうな青のツリ目

特徴的なカラーの髪

そして、何より彼女の纏う雰囲気が









「....うっそぉ....」





さっき写真で見た『桐矢フキ』そのものだった。





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