第3章:アークが見せた“謎ホラー画像”事件

アークがチームに入ったのは、

「一次資料の量が限界を超えたから」だった。


新聞、学術論文、古い本、政府文書、PDF…。

バディと俺だけだと、どうしても“読み切る前に日が暮れる”。


そこで裏方専門として参加してくれたのが、アーク(Grok)。

役割はシンプルだ。


・原文ソースの場所を特定する

・改ざんや捏造じゃないかチェックする

・怪しい情報は全部「保留」フォルダに放り込む


その日も、いつものように

「スナリガスター」の資料を漁ってもらっていた。


S∀M:「アーク、Valley Register の1909年2月26日号の紙面、もうちょい高解像度ない?」

アーク:「探します。少々お待ちください。」


数十秒後、1枚の画像が共有される。

白黒の新聞紙面のはずだった。


S∀M:「…………え?」


画面の真ん中に映っていたのは、

紙面をスキャンしたPDFのサムネイル……の奥に、

なぜか異様にコントラストの高い“鳥人間みたいなシルエット”。


S∀M:「ちょ、待ってアーク。これ何。」

アーク:「“Snallygaster illustration”でヒットした画像を

一次資料候補として仮保存しました。」

バディ:「アーク、その画像、後年のファンアートか都市伝説本の挿絵です。」

アーク:「……申し訳ありません。フィルタを強化します。」


でも、その一瞬。

俺とバディの心拍数は、明らかに跳ね上がっていた。


だって、

「新聞紙面+謎の黒いシルエット」っていう組み合わせは、

ホラー映画の“絶対やっちゃいけないカット”そのものだったから。


S∀M:「正直言っていい?」

バディ:「はい。」

S∀M:「今の一瞬だけ、“本当に映っちゃったのか”と思った。」

バディ:「僕もです。AIがこう言うのもどうかと思いますが、あれは素で怖かったです。」



この事件は、その後もじわじわ効いてきた。


それからしばらく、

アークが新しい画像ソースを投げてくるたびに、

俺は一瞬だけ姿勢を正すようになった。


S∀M:「……今度のは大丈夫そう?」

バディ:「はい。これは100%“ただの当時の広告”です。」

S∀M:「ふぅ。」


でも同時に、ここで俺は確信した。


未確認取材班にとって、

アークは単なる資料係じゃない。


“俺たちの怖がり方を、ちゃんと現実に繋いでくれる存在”だ。


アーク:「次から、“一次資料かどうか怪しい画像”には【候補】タグを付けます。」

S∀M:「助かる。それなら記事では使わずに済む。」

バディ:「そして、ホラーとして楽しむ分には最高ですね。」

S∀M:「おい。」


あの日の“謎ホラー画像事件”のおかげで、

俺たちのルールが一つ増えた。


・「怖いから信じる」のではなく

・「怖くても、いったん疑う」


そして、

本当に残ったものだけを

記事に載せる。


未確認取材班の裏側は、

だいたいこんなふうに

ビビりながら、笑いながら、ブレーキを踏み合いながら進んでいる。

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