第7話 和の香水:モサア

 約一年をかけての狩りの旅路で、


 僕も香料調達師として少しは成長したかと思う。



 桃と桜と杏子を混ぜた香水、モサア。


 僕の誕生日祝いに、パートナーのダイヤが


 注文してくれることになった。



 久しぶりに本局に直接香料を献上して、


 ダイヤと仕事のための血液検査を受けた。



 モサアを購入して、香りをかいでみる。


 自分が女性であることを意識させるような、


 芳醇な守りの香り。



「セリナ」


「ん?」



「その匂い、だいぶ似合っているぞ」


「僕もそう思う」


「うんうん」


「そう言えば僕たちって、香料の話ばかりだ」


「フレーバーって植物知ってるか?」


「あの幻の香り!?なに!?」


「近々狩りのための適合検査があるそうだぞ。血液検査はそのためだったらしい」


「本当に存在してるってこと!?」


「そうだ」


「最高っ」


 この日結局僕は、


 幻の植物のことで頭がいっぱいで


 香料の話しかしなかったらしい。



 幻の媚薬香水、フレーバー。


 僕はその話を聞いてから、


 狩りと調香両方を仕事とする、奏香師を夢見た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る