第45話
「…アンチか」
学校が終わり、帰宅して一日の習い事が終わった。
食事お風呂その他を済ませ、私はベッドに転がりスマホで動画を眺めている。
その動画は勿論、
流れるチャットを眺めていると、確かにアンチコメントがある事が確認できる…。
「アンチ?ってなに?」
「あ、
神出鬼没。またもやいつのまにか部屋の中にいて、ベッドへ潜り込んでいた。私の横でスマホの画面を一緒に眺めごろごろしている。
「アンチっていうのは、これ…」
「むむ」
「こういうコメントあるでしょ、配信者が傷付くような。こういうコメントをするのがアンチだよ」
「へえ、そなんだ」
「そなの」
私が例にあげたコメントは『下手になったな』『話にならんわ』『セツナ終わったな』等。
「なーんか、傷つくねぇこんなこと言われたらさぁ」
星七がはあ、とため息をつく。ごろんと転がり仰向けになり天井をみあげている。
「そうだね。こういうのは結構傷つくよ。私もされた事あるけど…」
「あったねえ、ちらほらそういうの」
「うん。…こういう活動やってたら、少なからずアンチはつく。それは仕方のないことで、頭ではわかっているけれど、湧いてくる辛い気持ちは消したりできないしどうしようもないからね」
「誰かわかったらぶん殴ってやるのに!星七がさ!」
「あはは、なんか逆にやられそう」
「にゃにおう!?」
「だって星七ちっこいしさ」
「…むむ」
「けど、ほんとにそんな気持ちが出てくる時があるよ。言いたい放題だしさ」
「なんとかできないの?これひぼーちゅーしょーってやつじゃないの」
「…んー、いや。今星七がみたコメントは、まだそんなレベルではないと思うから」
「そうなの」
「うん」
「…ま、でもそっか。死ねとかバカとかクソガキとか、エリスちゃんについてるコメントよりは優しいもんね」
「うん」
ちなみにそいつらは美夜お姉ちゃんが消してる。警告すればやめるやつが大半で、実際に大ごとになった事はない。ひっそりともくもくと消していく…スナイパーヤミさん。かっけえ。
「でもさ…なんか、あれだよね」
「ん?」
「あ、えーと…勘違いしないでほしいんだけどさ…これって、なんだかケンカしてるようにも見えるなぁって」
「…ケンカ?」
「そそ、私と星がケンカしたことあったでしょ。一緒にゲームしたときとか」
「あー、あったねえ」
「その時に似てるなぁって、このアンチコメント」
「…似てる?」
「言ってることは違うよ?でも…なんていうか、ほら私も『星やめて!』とか『星その技最悪!』とか言ってたでしょ。なんかあれっぽいよね」
「…ゲームプレイに関してのコメントの範疇ってことかな」
「あ、それだ!」
「でも、それでも嫌な気分にすることコメントしちゃダメでしょ。セツナちゃんとリスナーは私と七星みたいな近しい間柄じゃないんだしさ」
「それはそうだよ。もちろん。私、べつにそのコメントした人達を肯定してるわけじゃないし」
「あ、ごめん」
「ううん。でも、さ…気持ちはわかるくないって話」
「気持ちがわかる?」
「だって、セツナちゃんの配信みてて思ったもん。…なんか普通だなって」
「ダメなの、普通じゃ」
「ダメじゃない?だってセツナちゃんFPSが凄いっていう売り込みでひるどきライブに入れたんでしょ」
「…あ」
「みんな期待したのに、これ…だって…多分、セツナちゃんあんまり本気でプレイしてないよね?」
「…確かに、言われてみれば雑談やコメントに気を取られてる…プレイよりも話題を繋げようとしてて、身が入ってない」
「うんうん。すごくてカッコいいセツナちゃんがみたくてみてる人達は、がっかりしちゃうんじゃないかな」
確かに、星七のいうとおりかもしれない。これ、初期のアーカイブのプレイと比べたら天と地の差だ。
一番新しいFPSをプレイしている配信は、雑談交えているのもあって私と同等くらいの腕前にまで落ちている。
気が散っていて単純ミスが多い。会話に気を取られていていつの間にか負けている。
…星七と同じく、決して肯定するわけじゃないけど。
確かにリスナーがああいう気持ちになるのもわかるかも。
だって、本当のセツナちゃんは、無敵感があって天才的なエイムでみるみる敵を追い詰め殲滅する化物スナイパー。
皆はあれが観たいんだ…あの神業のゲームプレイングを。
けど、今やそれは見る影もない…。
「…ありがとう星七」
「ふぇ?」
「セツナちゃんが伸びなくなった理由、わかった気がする」
「伸びなくなった…伸びなくなっちゃったんだ」
「うん。実はそれでセツナちゃんの中の人がちょっと元気なくて」
「ふんふん」
「でも星七のおかげで解決方法がわかった。本来のセツナちゃんに戻せばいいんだ!」
「…」
「星七…?」
眉間にしわをよせ、んーと唸る星七。
「そんな単純なことかなぁ」
「え?」
「だってそれで解決するなら、他のメンバーが教えてあげて、もう解決してるはずじゃない?」
「…たしかに」
「もっと他に解決しなきゃいけないことあるんじゃないかなぁ」
「他に…?」
「セツナちゃんが前みたいにプレイ出来なくなった原因とか」
「…」
「あ、ごめん…なんか好き勝手いって」
「ううん。ありがとう、一緒に考えてくれて嬉しいし助かるよ」
「そう?」
「うん、なんだか星七もお姉ちゃんみたいだ」
「…へ…」
ぽかん、と目を丸くして固まる星七。今の一言がよほど衝撃的だったのか…涙目になっていた。いや、涙目!?
「ど、どうしたの!?お姉ちゃんって呼ばれるの嫌だった!?妹ポジションが良かった!?」
「…あ、いあいあ…ちょっとうれしくて…ごめんね、えへへ」
「そ、そっか…」
にこりと微笑む星七。彼女の笑い顔は心が安らぐ。
「…けど、じゃあ…セツナちゃんに詳しい人に話を聞かないと、だね」
「そうだね。私、セツナちゃんの助けになりたいし」
清水先輩は私の先輩であり後輩なんだから。
――翌日、私は星河アリサちゃん…
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