第3話 ルカ




ルカが妖精人形のフィと共に教室に入ると、既に教室にいた生徒達の視線がちらほら向けられた。

当の視線は入ってきたのがルカであると知ると少し冷ややかになり、何事も無かったように元の話相手や教科書に戻っていった。


「………」


ルカはトマスとロンドを除く他生徒に全く相手にされず浮いていた。

 

16歳の同年代の男子と比べて小柄。

制服のシルエットからも男らしいがっしりした肉体とはいえず、華奢にも見える印象。

髪は地味な灰色で、身だしなみはどうした?と突っ込みたくなるボサボサ頭。

容姿は冴えず、普段から下ばかり向いていて内気で気弱にしか見えない。

そしてルカへの最たる悪評は、子供の玩具と言われる妖精人形を名前で呼び、嬉しそうに眺めている気色悪さが原因である。



◆◆◆◆



ルカは16歳。

ルカを無類の妖精人形好きにした要因は、4歳の幼少期のとある事件である。


ルカの母の死後、父が後妻にした継母がルカの碧の目を憎んだのである。

ルカの父が継母を迎えた後も、無神経に、

「亡き前妻の碧の目がとても好きだった」

そう口にしたからだ。

その碧の目を受け継いだ息子のルカの目を見る度に、生前の妻を思い出しては何度も。

 

継母はルカの父に愛されているか不安になり、ルカの碧の目を憎むようになっていった。

だから、まだ4歳で自分を慕ってさえいるルカの右目に、紫色の異物を押し込んだ。

「ほら、紫の目になった!うふふ………」

痛みに泣き叫ぶルカを前にして、そう笑んだ継母はもう狂っていた。

 

狂ったままに、泣き叫ぶルカの残る左目の碧も憎み、異物を押し込もうとして………、

「な、何をするんだ!」

泣き声を聞きつけたルカの父に取り押さえられた。

すぐにルカは王都の治療院へ担ぎ込まれたが、治療してもルカの右目の碧と視力は戻らなかった。


悲惨な事件であり、悪意の所業であり、ルカに一切の落ち度はなかった。

被害者でしかなかった。

しかし、結果4歳にしてルカは家族から完全に浮いてしまった。


事件後、ルカは父や継母と兄弟の暮らす母屋に近寄れず、物置と大差ない離れに一人で住むようになった。

継母には当然怖くて近づけず、継母の血を引く弟妹達はルカを避けた。

唯一血のつながった父は、ルカと継母の関係に苦慮した結果、ルカを継母達から隔離する消極的な絶縁を選んだ。

ルカは父にさえ捨てられたといっていい。

人間不信になり、見えぬ右目を抱えたルカは、ずいぶんと膝を抱えて過ごした。



事件から少し経った頃。

父の商会が抱える専属護衛のゼットが、ルカが一人暮らす離れに顔を出すようになった。

「おうルカ!酒の味を教えてやろう!」

初対面の5歳児にとんでもない事を言い放つ男だった。

もちろんルカは断ったが、そうすると、

「じゃあ、女の味を教えてやろう!」

と来た。


5歳のルカに『女の味』という意味は分からず、分かっていない顔のルカにゼットは、

「じゃあ、お前を守らねぇくそったれ親父を殴りに行こうぜぇ!」

そう言い出した。

ルカの父、それはゼットの雇い主である。

ゼットはとても迷いなくルカの手を引いて、父がいるであろう庭の先の母屋に連れて行こうとするから抵抗して諦めさせた。


後で知った事だがゼットは、一人っきりのルカの食事や洗濯や掃除といった生活の面倒を見てくれている商会の家事手伝いの高齢女性メルタから、ルカの事情を聞いて元気づけようとしてくれていたそうだ。

ずいぶんクセの強い励まし方ではあったが。



ゼットがルカの元を訪れるようになった同じ頃。

失明から一年程経った頃だ、見えぬはずの右目が薄らと光をとらえはじめた。

事件後運ばれた治療院で、位階の高い妖精の回復魔術で出血や傷自体は癒えた。

頭への影響も、他部位への影響も無いと言われた。

しかし、今後見えるようになることはない、と治療院で断言された目だった。


次第に光をとらえ始めた右目はしかし、普通に見える左目の映す光景と同一ではなかった。

右目は世界の色を捉えなかった、特別な紫色を除いて。


「むらさきの、ふわふわ?」


ルカの目の前に、綿毛のように宙を漂う小さな紫の塊が見えた。

興味のままに指先で突っつこうとして、指がすり抜けてしまう。


初めて見つけたその小さな紫は、その後ずっとルカと一緒にいた。

ルカが移動すれば小鴨のように付いてきた。

ふわりふわり、見ているとルカの心は少し安らぐようだった。



紫の右目が、色の無い世界で紫を映してから、一年が過ぎた頃。

ルカは6歳を迎え、その祝いにゼットが妖精人形を贈ってくれた。


その妖精人形に、一年の間ずっと一緒に過ごしたルカの小さな紫が重なって、ふわりと浮いた。


「妖精だった、妖精だったんだ!」


ルカは、この時ようやく小さな紫が妖精だった事を知り、喜びに泣いた。

妖精人形を抱きしめたら、今まで触れられなかった妖精が、ここに居るんだと確かに感じられる。

ずっと一緒だった妖精、ルカにとっては家族であった。

 

こうして、ルカの妖精人形好きは完成した。


しかし、まだこの時のルカは、ルカの妖精フィに家族愛を向けるだけの子供である。

それを、無類の妖精人形馬鹿にしたのが、ゼットである。


「ぼくの右目、妖精が見えるんだ」

「おぉ!かっこいいじゃねえか!」


普通なら6歳の子供が普通ではない事を言っても、信じないものだろう。

しかしゼットは信じた、あっさりと。


そうか、妖精が見える目は格好良いのか!とルカは嬉しく誇らしくなり。

妖精フィが一緒にいてくれる安心感も相まって、ある日家の裏口から外の通りへ出た。

友達が欲しかったのだ。


ゼットに背中をバシンと叩かれ、ふんすと気合を入れ。

「ルカ、いいかダチを作るには、最初に一発かますんだ!」

そう言って教えられた通りに、家の裏通りで遊んでいた同年代の少年達の前に立ち。

見えるようになった右目を、左右で色の違うオッドアイを強調するような、ゼットに教わったポーズで構え。

ありったけの勇気をこめてゼットに吹き込まれた台詞通りに、

「オレの魔眼はぁ、妖精さえもうつし出すぅぅぅ!」

その勇気は大暴投で明後日の方向へ飛んでいき、

「バカじゃねーの!気持ちわりーな!」

「見ろよトリハダたったぞ………このでけえ家のこどもか?金もちか?」

「おまえ、おれたちには高くて買ってもらえねー妖精人形を見せびらかしにきたのかよ!」

少年達の苛立ちを買った。


「ち、ちがうんだ。ぼく………」

慌てて誤解を解こうとしたルカだが。

相手の一人が持っていた棒きれでフィを叩き落そうとするのを前に、

「や、やめて」

そう口にするのが精いっぱいで。

まだ魔法制御を教えていなかったフィは、障壁魔法を使用することもなく、叩き落された。

「―――ああっ!」

「見せびらかしにくんなよ!バカ!」

「「バーカ!」」

立ち尽くすルカに三人の少年達は悪態をついて離れていった。

ルカは、何もできなかった。


フィの身体は工房の量産型で金属製だったから、小傷が付いた程度でフィが死ぬ訳は無いのだが。

それでも、初めて同年代の子に敵意を向けられ、大切にしていた家族を傷付けられた事で、ルカは驚き、恐怖し、なんて自分は無力なのだろうと悲しみ、フィを抱えて泣きながら家に戻った。


一部始終を見ていたゼットに、ルカは両肩を強く掴まれて。

初めて怒っているようなゼットの険しい表情に怯み。


「ルカ。フィはお前の家族だろうが!なぜ守らねえ!どうしてやり返さねえ!」

「む、むりだよ。あいては三人だよ、棒も持ってたんだよ………」

「やつらに叩かれねえでも、お前は今泣いてるじゃねえか。叩かれる痛みと、大切なものを傷つけられた胸の痛みと、どっちがいいんだよ?」

「それは………」

「ルカ!大切なものは守り抜け!後で苦しむくらいなら、守るために苦しめ!守れ!守るために何でもしろ!何だってだ!だってその方が………」

「その方が?」

「格好良いだろうが!」


ゼットの教えは単純に、後悔しないために守れ、守るためにはなんだってしろ、であった。

しかし、ルカはゼットのこの時のこの言葉の『守るために何でもしろ!何だってだ!』という一部分になぜか心を掴まれ、時間が経つうちに自分なりに解釈した。

―――すなわち、大切なフィを守るためなら、やり過ぎと限界は存在しない、である。



こうして、妖精人形馬鹿のルカが完成した。



◆◆◆◆



「………従って、鍛冶師が作った武器防具は、魔術技師へ渡り魔術式を記述され、次は装飾師に渡り装飾が施される。最終的に仕上げとして魔獣核を嵌め込むが、この作業は魔術技師が兼任する場合が多い。術式の要求魔力量や要求魔力圧力量と、魔獣核の補助効果を考慮する必要があるためだ………」


ひとしきり現在の工房で行われる制作工程について解説した後、

「何か聞きたいことはあるか?」

この日初めて、妖精工房の現役の職人として講師役に招かれた、浅黒く頑健な体躯の中年が愛想のない口調で質問を募った。


ルカは、騎士学校で浮いている。

生徒もルカを、変な奴といった目で見るし、近寄っても来ない。

もしルカが話しかけようものなら、はっきりと眉根を寄せるだろう。

もちろんルカも、用も無いのに話しかける事はないが。

ルカには、トマスとロンドという友達がいる、少ないが他に友達が欲しいとも望まない。

ルカの頭の中はいつも妖精人形の事でいっぱいだからである。

そのルカの目前に工房の現役職人がいて、妖精人形に繋がる事の全てはルカの主領域である。

よって―――

「はい!はいっ!妖精人形の魔獣核の装着数が少ない問題の解決方法はありますか?妖精人形の魔術式が少ない問題の解決方法はありますか?金属鋳造以外の方法で制作した妖精人形はありますか?それと…………」

知りたい欲求が溢れ出るままに饒舌に早口に、質問がルカから吐き出され、

「ちょ、ちょっと待て。一度に質問しないでくれ」

と遮られ、

「「「………」」」

他の生徒に呆れられた。

気弱そうな変人が、こんな時だけ喜々として質問するのだから当然といえば当然である。


「ええと、妖精人形の魔獣核の装着数が少ない件だったな。確かに妖精人形の胴体に入れられる魔獣核の数も大きさも限られる。おそらく全ての工房の共通認識だ。これを解決しようとする動きもあるが、少なくとも俺の所属する工房に解決する術は無い。というより、ここ王都では妖精人形そのものの扱いが少ないから、考えるだけ無駄というところだ………」



最初の質問に答えるうち、講師に余裕が生まれてきた。

講師として教壇に立たされたものの、壇上で人前で話すことなど初めてで緊張があった。

まともに生徒の方を見ていなかった。

ここにきて、やっと視線を生徒に向けたのである。


「ん?」


ルカの方を見た講師が、はっきりと眉をひそめた。

視線の先には、妖精人形フィが浮かんでいる。

もう一体教室内に妖精人形が浮かんでいるが、そっちは問題なかった。

もちろん、成人した大人が妖精人形を連れている事自体は良く思わなかったが。

少なくとも、およそ自分達職人が許せない妖精人形ではなかった。

職人の目には、フィは造形こそ一般的な工房製を模しているが、無駄がある。

あってはならぬその無駄は、致命的に妖精人形の威厳を貶めていると映った。


「お前が作ったのか、その無駄な関節を持った妖精人形を」

「はい。僕が作りました」

「はぁーっ!恥ずかし気もなくよくもまあ………」


ルカの返事に盛大なため息を返した講師が、不快そうにルカとフィを見る。

はっきり言葉にして『無駄な関節』と言ったのに、嫌味が伝わらなかったのか、と。

恥ずかしい物を作っておいて、自分が作ったと恥じることなく答えるとは、と。


「妖精人形の造形はなあ、権威付けのためにある。戦神や戦乙女を、工房の造形でいかに神々しく凛々しく、神性すらも感じさせ、王侯貴族の子息子女が持つに相応しい意匠にするか、それこそが重要なんだ。無駄をそぎ落とし、選び抜かれた造形が全てなんだ!手足をぶらぶらできる人形なぞ、平民の女子供が持つままごと人形じゃあるまいし。お前、妖精人形の評価を落とす物を作るんじゃねえ!」


「ほ、方向性が、違うだけだと思い………」

あまりの口調で、あまりの物言いにルカは怯えながらも懸命に答えようとし、

「ああっ?黙れ!もうお前は口を閉じてろ。他に質問はあるか?」

現役の妖精工房の職人に、真っ向から否定されて、ルカは背を丸めて下を向くしかなかった。


講師はもうルカを無視するように、他の生徒に向き直った。

何も知らず妖精人形を自作して悦に入ってる輩は無視だ。

もしルカが自分の工房の見習いになりたいと言っても絶対反対しようと講師は心に刻んで。


その視線の先で、黒いレースの手袋をはめた手が上がった。

「講師。妖精人形に権威とやらは必要か?」

講師にとっては、また不快な質問である。

うんざりしつつ相手を見て………講師は発言主の姿に気圧された。


「………」


現職人であり、厳しい職人の世界で怒鳴られ蹴られながら技術を身に着けた50前の男がである。  

その職人が、気圧され一瞬言葉に詰まったのである。


手を挙げた少女は水に濡れたような長い黒髪。

白い肌の中の、金の長いまつ毛が縁取る黄金の双眸。

通った鼻筋と、その下の攻撃的と例えられそうな艶やかな口の紅。


おそらく騎士科上部の制服を纏っている。

おそらく、と思うのは居並ぶ他生徒の制服と違うからだ。


他生徒は白か灰色であるのに、赤基調で黒を指し色にした意匠。

右腕は長袖だが左腕は袖無し、そこに長い黒手袋。

胸を強調する立体的な造りと、引き絞られた腰への流線。

他がズボンであるのに彼女だけ長いスカートであり、その側面に長いスリットが入っている。

膝まであるヒールの高いロングブーツの上、スリットから覗く白い太ももが嫌でも目を引く。

細部まで描かれた刺繍と、立体的な強弱と流線は、騎士学校の制服を基本にしていても、全く違う意匠であった。


講師は妖精人形も扱う職人である、衣服は門外漢ではあるが、審美眼は人並以上に良い物を見極められると思っている。

職人の審美眼が、その意匠が素晴らしい物であると訴えている。


その制服を纏った、あまりに周囲と違う生徒。

静かに座って返事を待つ姿に、なぜか威圧感すら感じて。

しかし、講師は厳しい職人世界で培われた強靭な意思で立て直す。


「もちろんだ。権威なくしてはその子息子女とはいえ貴族が持つに相応しいとは言えん。貴族の重用、庇護無くしては妖精工房は名を高くできん。名が高くなければ、早晩工房は廃業、だからだ」


講師は言い切った。

これが全ての工房の在り方であり、工房が繁栄する道筋だと工房の職人なら嫌でも身に染みている。

好きな物を造ってばかりで、経営が成り立つはずもない。

職人として苦々しい思いはあるが、職人とは経営という呪縛の僕であるとも思っていた。

反論はあるまい、と講師が再び口を開こうとしたが―――


「権威とやらは、魔獣を殺してくれるのか?」


「は?」

間抜けな声が出て、すぐに、

「何を言ってる?権威は貴族が持つに―――」

「権威は、魔獣を殺してくれるのか?と聞いておる」

彼女の言葉が遮り、

「殺すわけないだろう!」

苛立った講師の声が響いた。


「魔獣を殺せもしない権威とやらを価値と崇めて、貴様らは貴族に妖精人形を売りつけおるのか?」

「ああ?貴族が魔獣の前に出るわけないだろう!」

「あははは!そうであったな、遷都までして迷宮・魔獣から逃げた腰抜けエストラート王族。追従する貴族ども。そのおひざ元の工房が腑抜けておっても不思議はない。むしろ納得で、似合いだ」

「「「なっ――――!」」」


その王族の住まう王都で、『エストラート』の冠された王都、騎士学校内で、その物言いは王家への侮辱以外の何物でもない。


凍り付いた雰囲気の教室の中。

少女が立ち上がり、教壇の講師の前へ。

黒いレースの施された手袋の左の指先を伸ばし、講師の喉に当てた。


「………?」


講師が困惑し言葉に詰まる。


「ある日、来るのだ。視界を埋め尽くす魔獣の群れが。なぎ倒し、踏みつぶし、魔法を雨のように降らせて。家族、隣人、友人、知人、皆死ぬ。潰され、燃やされ、凍らされ、溶かされ、食われ………。お前は、その魔獣の溢れる地に、権威とやらの付いたお前の自信作を持って立てば良い」


少女の黄金の双眸が、その冷たく鋭利な視線が。

堂々と芯の通った立ち姿一つからも。

講師は心臓を鷲掴みにされている感覚に陥り―――

「………のう?」

少女の美しい顔が、熟練職人の顔に迫ったから、

「………っ………」

立っておれずにへたりこんだ。



ルカは、呆気にとられるばかりであった。

商工科の教室に、見たことも無い生徒がいるな、とは思っていた。

その生徒が現役職人である講師を扱き下ろす場面を見る事になるとは思いもしなかった。

しかし、それはルカには特に関係がない話である。


ルカにとって、現役職人から学べる機会は貴重で楽しみだったのだが。

ルカの妖精人形は講師を苛立たせたらしい。

講師役の職人の属する工房と、ルカの妖精人形が目指す方向性が違うだけ、ルカはそう捉えている。

世界は広い、ルカの目指す妖精人形の方向性と同じ工房がきっとあるはずだと。


「次の講義では、別の工房の現役職人が来てくれるといいな………」


小さく独り言ちていたルカに影が差した。


「………?」


目の前に、黄金の双眸を持つ少女が立っていた。

その少女がルカの回りを飛ぶフィに目をやり、ふわりと笑んだ。


「頭が固く変化を望まぬ工房職人の講義など、お主が得られるものは皆無。ここにいても時間の無駄であろう?ついてまいれ」


少女がそう言ってルカを見る。


「………え?えっと………」


トマスやロンド以外に初めて話しかけられたルカは困惑し。

おどおどと視線を彷徨わせ、その視界の黄金色―――彼女の黄金の眼差しに、ふと思い出した。


「あ、れ………黄金の毒花、姫………?」


思わず口から出た。


目の前の少女は、ニヤリと笑って踵を返し、教室の出口へ歩き出す。


「クイン行こう。アン、頼んだ」


その声に、黄金毒花姫の後ろに呼ばれた妖精人形が続き。

教室の後ろに控えていたメイド服姿の女性がルカの元に静かに移動し、やさしい笑顔でルカの腕を引いてその後に続く。

黄金毒花姫と呼ばれる少女の後ろへ。



出入り口の扉がアンの手で静かに閉められた教室内には、放心した講師役の職人と、凍り付いたまま動けない生徒達の姿が残されていた。




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