某有名小説サイト、カク●ムを退会します
木沢 真流
退会前の断捨離
断捨離だなんて大袈裟な、そう思われるかもしれない。ただ私にとってこの某小説サイトは思い入れの深いものであり人生そのものである。そのサイトのアカウントを今、削除しようとしている。
その昔、書籍化など夢のまた夢と思っていたのは10年以上前の話。このサイトは作家としては赤子のような私の思いを具現化してくれる大切なサイトだった。
そこでアップした小説を通じ、多くのユーザーと出会い、別れ、ある人は消えていき、ある人は書籍化を果たした。その業績を海外にまで轟かせたユーザーもいる。
そんなプラットフォームを今、私は退会しようとしている。作品も永遠に見られないようになるそのボタンを押すことに決めている。
理由は簡単、もう疲れた。
運良くコンテストでちょっとした賞をいただき、それをきっかけに出版社から連載のお話をいただいた、そこまではよかった。しかし、そんな幸運頼みだった連載の話はうまくまとまらず、書籍化は果たしたものの、結局鳴かず飛ばずに終わった。
にもかかわらず、私には「受賞経験がある」「プロとして活動したことがある」というプライドが邪魔をし、汗水をたらす、泥臭い鍛錬ができなくなってしまったのだ。結局、その後も創作活動を続けることができず、やがてこのサイトを見るたびに嫌な思いをするようになり、現在日常生活にも影響を及ぼすようになっている。これは退会の理由に十分すぎるくらいだろう。
他にもいろいろあったような気もするが、覚えていない、もうどうでもいい。
退会すれば全てが消える。ここでしか繋がりがなかったユーザーともこれが最後になるため、今私は自分がフォローしていたユーザーをカチカチと振り返っていた。深夜の作業のため、頭痛がひどい。だがこれはやらなければならない。私の思いをこめたPCのカチカチ音は外にも響くほど存在感を放っていた。
ああ、この人、ここで出会ったんだよな。一時はお互い励ましながら頑張ったよな。この人は毎日必ずコメントくれたけど、ある時を境に全く姿を表さなくなったな、などなど。
まるで走馬灯のように私はこのサイトの思い出を甦らせては、一つ一つ「フォローをはずして」いった。
懐かしの作品やコメントなどをサーフィンしている時、一人のユーザーに目がいった。名前は「🌲沢 真流@書籍化⭐️祝増刷🥳」。名前に見覚えがあるので、フォローしていたのは確かだが、そもそもなんでしたんだっけ?
彼のトップページに飛び、代表作を確認する。
最初に目に飛び込んできたものは文字ではなかった。
真っ赤な背景色に、多くの記号を駆使している。文章を読む前に、まず最初の印象としては「気味が悪い」トップページだった。
代表作は「書籍化作家のつぶやき」
名もなきユーザーだった彼が、カク●ムコンで受賞し、書籍化を果たすまでの様子が赤裸々に語られたエッセイのようだった。
しかし隣にある最新作のタイトルを見て私の目は凍りついた
最新作「お前、今に見てろ。ぶっ殺してやるかんな」
「お待たせ死ました! ついに殺ったよ♪」
★6・エッセイ・ノンフィクション・連載2話
いたずらにしては度が過ぎている、釣りにしてはタチが悪い。
とはいえ、気になってしまった私はとりあえず代表作の「書籍化作家のつぶやき」を読んでみることにした。
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