第39話 死霊魔導師、一難去ってまた一難?
宰相さんが俺たちの成し遂げた功績を読み上げる……ほどもない。
時間を置かず二ヶ所で起きた、ゴブリン討伐のことだけを口にした宰相さん。
だけど聞いていた貴族たちは俺たち三人で解決したとは信じなかったようだ。
たった三人の子供が、ゴブリンキングが率いる大量発生したゴブリンをどうにかしたとか、信じられるわけない。
俺自身も、討伐の当事者でなければ信じられなかった自信がある。
普通ならありえないようなことだし、俺たちもデバンたちの協力がなければできなかったことだ。
それに討伐してしまったことが事実だとしても、騎士たちの協力と、少なくない犠牲の上でならまだ現実味がある。
いや、無理か。褒賞授与される俺たちが子供というだけで信憑性はほとんどないに等しい。
一応、ティウス公爵領の方では討伐軍の総指揮権を持っていたんだけどな。
集まった貴族たちの雰囲気が、不信感に染まるかと思った時だ。
「その事について発言よろしいでしょうか」
貴族たちの中から声が上がる。
宰相さんが陛下に目配せすると、示し合わせていたように『よかろう』と陛下は許可を出した。
褒賞授与するこの場面で、進行を止め、発言を求めるとか不敬罪でもおかしくない。
それなのに咎めもしないで許可を出すなんて、元々この発言は陛下も承知のことなのだろう。
「発言を認めます。前に出て申してみなさい」
「はっ!」
あ、この声、聞いたことある気がする。
返事をした者の前を塞いでいた人たちが左右に分かれ、進み出る空間ができた。
そこには見たことのある者がいた。
人垣の間を抜け、中央の開いた空間に進み出て来ると、陛下に向かい跪いた。
静まり返った謁見の場になんとも言いがたい空気が流れる。
張り詰めたピーンとした空間に、深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す音が耳に届いたあと、その人が口を開いた。
「陛下、発言の許可をいただきありがとうございます」
ゴブリン討伐の拠点にいた、ティウス公爵軍の副騎士団長だ。
「ティウス公爵軍、騎士団副団長としてゴブリン討伐の任についておりました」
副団長さんは、あの現場であったことを時系列にそってありのままを報告していく。
それはまるで真相を知らないこの場にいる貴族たちに教えるように。
そして最後近くで、倒したゴブリンの魔石の数量を言った時だった。
カンカンカンカン、と早鐘の音があたりを包んだ。
「何事だ!」
ざわめきが急上昇し、緊張感が高まる中、宰相さんが叫んだ。
俺は近くにいたセレスとヘルヴィを引き寄せ、警戒を高めた。
『マズいですぞ主! 城下のダンジョンから魔物が津波のように這い出て来ましたぞ!』
『ヤバいっすよ主! 騎士たちがなんとか止めてるっすけど、破られるの時間の問題っす!』
『ネクロウ様、行こう』
「うん! セレス、ヘルヴィ、王都のダンジョンが溢れた! 押さえに行くよ!」
「なんだと!」
「嘘っ! 急がなきゃ!」
「まことかネクロウ!」
陛下が問いかけてきたが俺たちはすでに足元の影に身を沈めたところだ。
返事は帰ってからでいい。
今は少しでも早く現場に向かう方が重要だ。
シュテルネの王都にあるダンジョンは、魔石より、魔物を倒して手に入れられる、肉が主要な産物だ。
動物系の魔物は動きが速く、騎士たちが抜かれてしまえばあっという間に王都に魔物たちが広がってしまうだろう。
そうなる前にダンジョンから出てきた魔物を倒し、ダンジョンに入り間引きするか、ダンジョンコアを何とかするしかない。
早鐘を鳴らす尖塔に位置する影の居住空間から王都ダンジョンを見下ろす。
高くはない石壁で取り囲まれ、1ヵ所だけある内開きの扉が開いた出入口を、騎士たちの盾でなんとか魔物たちを押し止めている状況だ。
押し寄せるワイルドボアやホーンラビットに、見たことのない色んな魔物たちの奥に、巨体が見えた。
家畜の牛の三倍はある大きな体に、片方で二メートルはある角を持つ魔牛の群れが、前にいる魔物を押し退け突き進んでくる。
「アレは騎士たちじゃ止められない! デバン!」
『任せよ!』
影から飛び出し、魔牛の真上に飛び出したデバンは、グレートソードを飛び下り様に振り下ろした。
デバンに気づいた魔牛は首をひねり、角でグレートソードを受けた。
『甘いわ! どりゃっしゃぁあああっ!』
が、さらに力を込めたグレートソードは、ギャン、と魔牛の角を切断し、そのまま頭部を切り裂いた。
その姿を見たからか、壁を作っていた騎士たちが一瞬、戦いを忘れたかのようにデバンを見ていた。
デバンは続け様、
『くははははは! 好きにはさせぬぞ!』
……しばらく魔牛の進行は止められそうだ。
なら次は俺たちの番だ。
「ジェイミーとジム! 騎士たちの防壁前に俺たちが行ける場所を開けて!」
『やるっすよー!』
『了解』
「セレス! ヘルヴィ!」
「結界は任せろ!」
「いっぱいやっつけるよー!」
盾を構えた騎士たちの向こう側へ躍り出ると同時に、ジェイミーは双剣をひるがえし首を落としては蹴り飛ばしていく。
ジムは盾を両手に持ち、シールドバッシュで魔物たちを弾き飛ばして俺たちが出る空間をあっという間に作り上げた。
『できたっすよー!』
『完成』
その声に導かれ、影の居住空間で死霊使役を発動させてから戦場に足を踏み入れた。
「ヘルヴィ危ない! ヒールショット!」
「ヘルヴィになにするのよ! やっ! このっ! とお!」
「すまない二人とも! 物理結界! ウインドアロー!」
突然現れた俺たちと、黒づくめの三騎士が魔物の群れを押し返していくのだ。
見ていた騎士たちは数瞬、呆気にとられていたが、陣形を整え少しずつ扉前のスペースを広げてくれた。
背後に回り込まれる危険性が下がったお陰で、前方だけに集中できる。
「ジェイミーはダンジョンコアを頼む! 俺たちはデバンに合流して、出てきている魔物を倒してダンジョンの入口を押さえるぞ!」
『任せてっす! すーぐ取ってくるっすよー!』
『了解』
「おう!」
「やるよー!」
死霊使役させた魔物たちには魔石を砕くか抉り出させ、次の獲物に移るように指示してある。
そのお陰か加速度的に石造りの防壁内から動く魔物が減っていく。
ダンジョンの入口にたどり着き、入口にヘルヴィが結界を張った直後、ジェイミーからの念話が届いた。
『ダンジョンコアもらったっすよー』
「ジェイミーがダンジョンコアを確保したぞ!」
「やったな!」
「おわったー!」
その念話のあとは、狂気を張り付け、階段を上がって来る魔物たちは止まるはずだった。
それなのにヘルヴィの張った物理結界に突進し続ける魔物たちはどう見ても異常としか思えない。
「なんで止まらないんだよ!」
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