波間にひと碗 ― 香と算盤の戦国記 ―

クラウス

はじめに

戦国の港町・堺を舞台に、茶碗と算盤で乱世を渡る商人夫婦の物語を書いていきます。 


武将ではなく、茶商ちゃしょう今井宗久いまい そうきゅうと妻おまきの視点から、南蛮船の港と茶の湯を通して信長・秀吉・利休の時代を描きます。ここでは、まず「堺という町」と「この物語で描きたいもの」を、簡単に紹介させてください。


■ 堺という舞台について

16世紀、日本の西側の海沿いに、今の大阪府堺市あたりに大きな港町がありました。ここ堺は、当時すでに南蛮船が行き交い、鉄砲や砂糖、香辛料が運び込まれる「海外との玄関口」のような場所でした。


この町には「会合衆かいごうしゅう」と呼ばれる有力な商人たちがいて、武士ではなく町衆が町の自治を握っていました。戦国のただ中にありながら、刀よりも銭と算盤、そして茶の湯でバランスを取ろうとしていた不思議な町です。


『波間にひと碗』は、この堺の港と茶室を行き来しながら、商人夫婦の目線で戦国を見ていく物語です。


■ どんな物語か

茶商・今井宗久は、堺の会合衆の一人として、港の関税と倉庫の鍵を預かる立場にいます。茶道具の目利きと算盤の才を武器に、南蛮船と向き合い、織田信長や豊臣秀吉と駆け引きを重ねていきます。


夫婦で築いた町屋兼茶舗を拠点に、「茶の香で人をつなぐこと」と「町と人の生活を守ること」その二つのあいだで揺れながら、戦国を生き抜こうとする商人夫婦の戦いを描いていきます。


■ 登場人物の中心

・今井宗久:茶と算盤で港を動かそうとする堺の茶商。計算高いが、町と人を見捨てきれない。

・お槇:豪商の娘であり、宗久の妻。帳簿と現場の両方を支える女主人で、夫の一歩先を読んでいる。


このほかに、織田信長・豊臣秀吉・千利休、料理人の藤吉、会合衆の面々や南蛮商人たちが登場し、茶室と港のあいだで、それぞれの「利」と「面子」と「生き方」がぶつかっていきます。


■ 更新について

本編は、第1幕「信長編」、第2幕「秀吉編」の全24話構成を想定しています。まずは第1話「港の朝」から、堺の港に南蛮船が入ってくる場面を少しずつ公開していきます。


短い抜粋や更新情報はXでも投稿していく予定です。Xで気になって来てくださった方が、ここやnoteでまとめて読めるようにしていくつもりです。


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