サイフォン
みすたぁ・ゆー
一杯目:憧れのお兄ちゃん
私はコーヒーが嫌いだ。なぜならとっても苦いから……。
◆
今年の冬は訪れが遅かった分、一気に寒くなったような気がする。
今朝起きた時なんか、部屋の中でも息が白くなるくらいだった。もっとも、うちは築三十年以上のオンボロ都営団地だから、窓から隙間風が否応なしに入ってくるのでそれも仕方ない。カーテンを閉めれば多少は防げるけど、あくまでマシといった程度だ。
今もまた吹いてきた強い北風によって窓がガタガタと音を立て、部屋が少し寒くなった。その窓から外へ目を向けると、夕陽の茜色に染まった街路樹が風によって大きく揺れているのが見える。
――そういえば、いつだったか
自然界において熱は高温側から低温側へ移動し、また完全に断熱することは不可能だから部屋より外の気温が低い限り絶対に冷えてしまうんだよ、と。
その時、見たこともない文字や記号だらけの式を交えて説明してくれたんだけど、それは高校や大学レベルの内容らしいので中学生の私には当然分かるはずもない。
でももちろん
「例えば、水は高い所から低い所へ流れるでしょ? 熱も同じだと思えばいいんだよ。熱い方から冷たい方へ流れ続ける。そして水が低い方から高い方へ流れられないように、熱も冷たい方から熱い方へは流れられない。そういう元の状態に戻せない変化を
「
「うん、そうだよ。自然界の現象は全て
その話を聞いて、私はなんとなく理解することができた。
それは概念的な説明だったのかもしれないけど、式だけを使って示されるよりはずっと分かりやすい。やっぱり
ちなみに
私は小学生の頃から週一回、
普段からお互いに家同士を気軽に行き来しているし、一緒に遊びに出かけることだってよくあるから、それこそ実のお兄ちゃんに勉強を見てもらっているという感覚の方が近い。
――そして、私は
すごく優しくて格好良くて頼りになって、ずっと昔から
あぁ、
私は落胆して、深い
(つづく……)
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