第2話 坊ちゃんのランドセル 白虎視点
「おう、てめぇら。話してぇことあんだけど、ちょいとばかし
坊ちゃんとずいぶん仲良くなった頃、組長が部屋を訪ねてきた。
「新しい仕事か」と、うちらは顔を見合わせた。
坊ちゃんは、きょとんとした顔で首を
きょとん顔も、めっちゃ可愛い。
「どうしたの?」
「すみません、坊ちゃん。組長に呼ばれたんで、ちょっと行ってきますね」
うちらは遊びの手を止めて、坊ちゃんの小さな頭を撫で撫でした。
坊ちゃんは分かりやすくしょぼんとした後、笑顔を作って手を振る。
「そっかぁ……行ってらっしゃい。帰ってきたら、また遊んでね」
くぅ……っ、可愛いっ!
なんだこの可愛さ! 天使かっ!
遊びを中断されて残念そうな顔に、
組長、アンタ、鬼か。
こんなに素直で可愛い良い子を、悲しませるなんて!
組長に
坊ちゃんにいつも坊ちゃんにベッタリな
「組長。その話ってぇのは、ここじゃダメでしょうか?」
組長はしょぼんとしている坊ちゃんを見て、表情を
部屋に入って来て、どっかりと畳の上に座った。
「そうだな。
「坊ちゃんの話ですか?」
俺が聞き返すと組長は軽く頷き、坊ちゃんの頭をポンポンと軽く叩く。
「青龍も、来年には小学生だ。しかし、小学校へ通わせても良いものか……。極道の子だとバレたら、イジメられやしないかと心配でな」
おおっ、組長も人の親だった!
確かに、組長の心配と不安は
坊ちゃんは「極道の子だから」という理由で、幼稚園にも通っていない。
生まれてからずっと箱入り息子で、
世話係を付けたのも、うちらが初めてなんだとか。
学校は、ただ勉強するだけの場所じゃない。
先生や同年代の子どもたちと交流を持ち、さまざまな人生経験を学ぶ場でもある。
坊ちゃんは人懐っこい良い子だから、みんなから愛されるだろう。
だが、組長のひとり息子である。
子供は
しかも、坊ちゃんはウソをつくのがめちゃくちゃヘタ。
考えていることが、全部表情に出ちゃうんだよ。
組長の息子だって、すぐバレるだろう。
バレたらどうなるか、想像に
子供はもちろん、保護者関係者、学校関係者も、総攻撃を仕掛けるに違いない。
学校という特殊な環境は、ちょっとしたきっかけでイジメが発生する。
無視なら可愛いもんで、
なんで学校のイジメは
うちらの大事な超絶可愛い天使ちゃんが、傷付くところは見たくない。
想像しただけで、
俺と同じ想像をしたのか、玄武が坊ちゃんを抱き寄せる。
「坊ちゃんがイジメられでもしようもんなら、絶対許せません」
「自分が責任持って勉強を教えますから、どうか学校へは行かせないでください」
組長も、難しい顔をしている。
「ふむ、やはりそうか。青龍の安全の為、小学校へは行かせるべきではないな」
それを聞いた坊ちゃんが、悲しそうに顔をゆがませる。
「ぼく、小学校行けないの?」
そんな悲しい顔しないで!
でも、しょぼん顔も可哀想可愛いっ!
俺は体をかがめて、坊ちゃんと目を合わせて言い聞かせる。
「坊ちゃんにとって、学校はとても危険な場所なんです」
「それって、ぼくがパパの子だから?」
坊ちゃんが組長に問い掛けると、組長がたじろいだ。
多くの組員を
坊ちゃんの世話係になってから、組長の親の表情が見られて楽しい。
イタズラ好きの朱雀が、ニヤリと笑う。
「そうです、坊ちゃんが組長の息子だからです」
「おい、朱雀。てめぇ、あとで覚えてろよ」
組長がギロリと
坊ちゃんは
「じゃあ、仕方ないね……。だってぼくもいつか、パパの後を
ぐふぅっ、
なんて
坊ちゃんは、小学生になることを夢見ていたに違いないのに。
普通の子供なら、当たり前に小学生になれるはずなのに。
組長の息子ってだけで、そんな当たり前すら諦めなければいけないなんて。
何をトチ狂ったか、玄武が真剣な表情で組長に詰め寄る。
「組長、今すぐ組長を辞めて下さい。そうすれば、坊ちゃんは小学校へ行けます」
「バカなこと言ってんじゃねぇ、そう簡単に辞められるわきゃねぇだろうが」
組長は渋い顔で、
まぁ、玄武の言い
坊ちゃんが組長の息子でなければ、小学校へ行ける。
だからといって、いきなり組長が
出来なくはないけど、カタギへ戻ることは
仮に戻れたとしても、組長が表社会で
表社会と裏社会、あまりにも住む世界が違う。
表社会では生きられなかったうちらは、
坊ちゃんは生まれる前から、裏社会で生きる運命を
父親が組長だったが為に、夢を持つことさえ許されない可哀想な子だ。
うちらは、坊ちゃんに優しく語り掛ける。
「学校にいけなくても、坊ちゃんにはうちらがいますよ」
「お勉強だって自分が教えますから、安心して下さい」
「坊ちゃんは、おれたちじゃダメですか?」
畳みかけるように言うと、坊ちゃんは困った顔でうちらの顔を見回した。
少し考えるような顔をした後、にぱぁ~と可愛い笑顔を浮かべる。
「うん! 白虎お兄ちゃんと朱雀お兄ちゃんと玄武お兄ちゃんがいるなら、ぼく、学校行けなくても良いよっ!」
か゛わ゛い゛い゛っ!
なんつぅ破壊力っ!
太陽もビックリの
あ~可愛い! もう可愛すぎて大好きっ!
天使は、本当に存在したんだ。
坊ちゃんが今ここに存在していることに、心から感謝したい。
組長と姐さん、坊ちゃんをこの世に産んでくれて、ありがとうございます。
そして、うちらを坊ちゃんの世話係に選んでくれて本当に感謝しかない。
🐉🐦🐅🐢
「ほら、青龍。小学校へ通うのは無理だけど、ランドセルくらいは良いぞ」
「わぁ! やったぁっ、ランドセルだっ!」
その日のうちに、組長がランドセルを買ってきた。
組長は坊ちゃんに小学校へ通わせてあげられないことに、罪悪感を覚えたらしい。
坊ちゃんは、それはそれは喜んだ。
ランドセルを背負って、はしゃいで走り回る姿は可愛すぎた。
「えへへっ、組のみんなにも見せるんだ!」
坊ちゃん、なんでそんなに可愛いんですかっ?
もう、可愛さの
「坊ちゃん、記念写真を撮りましょうね」
「は~いっ!」
良い子のお返事が可愛すぎて、カメラ小僧のように写真を撮りまくった。
ランドセルを背負った嬉しそうな笑顔が、食べちゃいたいくらい可愛い。
いや! 可愛すぎて食べられないっ!
坊ちゃんが可愛すぎて、頭おかしくなる。
推ししか勝たん。
推しがいる幸せ。
推しがいるって、素晴らしい。
坊ちゃん神推し。
推し
これが、限界オタクの気持ちか。
推しがこんな可愛かったら、限界オタク化するって!
坊ちゃん最高、もう一生推すっ!
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