17.バステト――追われる者
間髪を入れず、フィデリスがナイフを投げて、発射された矢を正確に落とした。
見たところ、
しかし、
「ナイフ投げなんて弱気だな、アンノウン! さっきみたいに発砲して、僕を撃ち落としたらどうだい!」
言いながら、彼はボウガンを足の間に挟み、無駄のない
バステトは考える。
(ボクがドローンを破壊してたことに気づいてるんだ……。なのにどうして、こんなに強気なのぉ……? イカれすぎでしょ……! 下手したら死ぬよ……!?)
「アンノウン、お前がどんな
(そうか! こいつ、
おそらく、
事前の調査によると、
彼にとって、自分には幸運が訪れて当然なのだ。
「ハーッハッハッハ! 愛は全てに
夜空に高笑いを響かせて、
バルーンが貫かれ、気球全体が
「……もし身体に触ったら、口
フィデリスは
(ちょっ、さすがに無茶だって!)
バステトは必死で、義手であるフィデリスの腕にしがみつく。もしも
身軽に木々の
「……ここで動かないで。私がやる」
フィデリスは言った。バステトは無言で頷き、予備のナイフをこっそり彼女に渡す。
(せめて、
上空を見るバステト。
(仮に暗視スコープを装着しても……、木々の隙間を狙ってドローンを
「さあ見ていてくれ、
フィデリスを狙って、さらなる追撃の矢を
彼女は
「おっと、これは怖い怖い」
空中を浮遊する
しかし、足場となる
加えて、ドローンを操作しているのは、
この場にいる
「どうした? 怪盗アンノウン!
「…………んっ」
狭い
(なんとかフィデリスちゃんを助けたいけど……、どうしたら……!)
バステトは
フィデリスの強さを、バステトは信頼している。総合的な身体能力で比べると、フィデリスの
だが、今回はいくらなんでも相手が悪い。『
そのとき、戦況が動いた。矢を
「さあ、あの世で報いを受けるがいい、アンノウン!」
矢が
「ほう……。なるほど、義手か。その足も義足かな? 体型に対して腰の位置が高すぎる」
出血しない様子を見て
「良かった良かった、安心したよ。腕が再生するなんて
(フィデリスちゃん、やっぱりボクも一緒に……!)
バステトは思考で訴えかけるが、フィデリスはバステトにだけ伝わるように、
「
フィデリスはアンノウンの口調を真似て話す。
「追われる側だ」
義手の中から
そしてバステトに駆け寄ってきて、彼の手を引く。
「ふっ、
「……
フィデリスは呟き、疾走しながら
「ぐわっ!」
煙の奥から、
(やった?)
バステトは振り返る。煙で何も見えない。
「……ドローンは落とした、はず」
その瞬間、後方の煙から矢が飛び、彼女の足を
「……へえ。やるね」
彼女はバステトを残し、引き返していく。
視覚が役立たないからこそ、
しかし、形勢は既に逆転した。
視覚の封じられる場は、フィデリスが最も得意とする戦場だ。
敵は何も見えずとも、彼女は思考が
決着は一瞬だった。
煙が晴れたとき、そこには横たわる
向こうにはナイフの刺さったドローンが落ちていた。前面のカメラとマイクは壊れ、既に機能していない。
「良かったぁ。心配したよ〜っ! フィデリスちゃんっ!」
バステトは彼女に抱きつこうとするが、ひょいと
「……馬鹿にしないで。私は
言葉とは裏腹に、少し
「とりあえず、一安心だね。あとは
「…………」
彼女は警戒した表情を崩さない。
「フィデリスちゃん? 大丈夫? どこか痛む? あんまり役に立てなくてごめんね」
その顔を覗き込むバステト。
「……誰か、来る」
「え?」
「……二人。……ううん、四人かな。……こっちに二人、近づいてきてる。……少し離れたところに、あと二人。……どうして?」
フィデリスは震える声で呟いた。
「……
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