15.悠里玖――驚愕
ぐしゃりと音を立てて、地面に倒れるアンノウン。
ナイフを落とし、動かなくなる。
「ふ……、ふふ……。怪盗アンノウン、
「おおっ! やった、やったぞ! アンノウンめ、ついにくたばりおった!」
しかし、隣の
「まだです。まだ、アンノウンが死んだとは限らない」
「思慮深さは君の美徳だが、
「ですが、アンノウンは人間の枠に収まるような存在ではありません。肉体が死んだとしても、奴の精神まで消えるかは分からない」
「アンノウンにとって、あの肉体は使い捨ての消耗品だったかもしれません。戦闘の途中、
「なっ……」
息を呑む
モニターを注視すると、
アンノウンの息の根を確実に止めるためだろう。首を狙って、刀を振り上げた。
それが振り下ろされるよりも、早く。
野間とアンノウンの周囲が、突如として煙に包まれる。
「なんだ!?」
「煙幕か……!」
壁が崩れた。
爆破されたのだと理解したとき、
「ひぃっ! 爆弾だぁ!」
絶叫する
「伏せてください! お
爆発は起こらず、
すぐ近くにいた
(メ、メチャクチャだ……! 奴が着ていたラバースーツでは、
やがて、煙は徐々に薄れていく。
「ご無事ですか! お
リビング内には
「奴は……、アンノウンは、どこに消えた?」
庭では、
アンノウンの姿はなく、切断された右腕だけが残っている。
「まさか……、金庫室に?」
「いいや、それはない」
すぐに否定する
「この部屋が煙幕に包まれている間、私はずっと昇降口の上にいて、一歩たりとも動いてはおらん。地下に侵入できたはずがない!」
そして
「アンノウンめ、尻尾を巻いて逃げおったんだ! 致命傷を
「そうでしょうか……? 僕はそのようには思えません。今すぐに、金庫室を確認するべきです。
その態度に、
「昇降口は明日まで、何があっても絶対に
眼球運動の解析は、短時間では済まない。今すぐに再検証することは不可能だ。
「僕がアンノウンに? 馬鹿馬鹿しい! 金庫室に侵入されたかもしれないのに、奴が逃げたと断定した貴方の
「私は昇降口の上を離れていないと、言っておろうがぁぁぁ!」
「アンノウンが金庫室に立ち入れたはずはないのだ! 間違いなく、奴は逃げた! 右腕を斬り落とされて逃げん奴があるか! なぜ理解できん!」
気球騒ぎから、
「あの煙幕の中にいて、自分の立っていた位置が正確に分かりますか? 貴方自身は動いていないつもりでも、実際は昇降口の上からズレてしまっていたかもしれません」
投げられた送信機を片手で受け止め、
「すみません。僕もあまりの急展開に驚いて、冷静さを
言葉を返せない
「僕はお
「忘れるな、
「仮に金庫室へ侵入したとて、アンノウンは由名に指一本、触れられん」
「分かりませんよ。アンノウンはこちらの理解を
結局、
二人は気絶している
風の吹き込むリビングに居座りたくはなかったものの、それでも
アンノウンが金庫室に出入りする隙など、一切なかった。
数十分ほどが経過した頃。
モニターに映る森の中から、何かが浮かび上がってきた。
「あっ、ああっ、あああああああっ!」
絶叫する
「ズームしてください! 早く!」
気球には、ラバースーツを着た灰色の
しかし、
その腕が
「なんてことだ。
「逃がすものか!」
「殺してやる、殺してやるぞ、アンノウン! 僕のフィアンセに触れて、生きていられると思うなよ! この世に生まれ落ちたことを後悔するような苦しみを味わわせてやる!」
気球は少しずつ、
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