第8話 友奈

「おはよう〜。って、蓮、毎朝ここにいて、あんた何組よ」

「いいじゃん、別に」


中1の頃、蓮はA組の正樹といつも登校してきて、そのまま当然のようにA組に座っていた。

蓮は本来は国際クラスのD組のくせに。

そのうちD組の男子も蓮を探しに来るようになって、A組はなんだか騒がしくなる。


図々しいというか、馴れ馴れしいというか——

D組って、文化がまじで違う。

でも、蓮がそんなふうに入り浸ってくるから、私も自然と話すようになってしまった。


私はバリバリのバスケ部で、蓮とはスポーツの話でよく盛り上がる。

最近はLINEも頻繁に送り合っていて、正直ちょっと意識している。


『中山って、どういうタイプが好きなの?』


蓮が急に直球で聞いてくる。なんで?


『やっぱスポーツできる人! 一緒にできる人がいいな』


『D組にいるよ、そういうやつ。ねえ、今って通話できる?』


え、通話?

その時、ちょうどママに「夕飯できたよ」と呼ばれた。


『ごめん、今からご飯だ』


『OK。またでいいや』


通話…?

何それ。

まさか“自分だよ”って言いたかった?

それとも、誰か紹介したかった?


蓮はかっこいいし、モテる。

仲はいいけど、なんで私と普通に話してくれるんだろう、っていつも思う。

私はかわいくないし、性格も男っぽいし。


その後いつ通話になるんだろうとそわそわしていたけど、そこからLINEはなぜか少しずつ減っていった。


ちょうどその頃、平下さんが蓮に振られたらしいという噂が流れてきた。

あの人は自分がかわいいって自覚してるタイプで、誰が見てもあからさまに蓮に近づいていた。正直、ざまあみろって思ってしまった。

---

中2になった。


『最近、元気?』


『元気だよ。学校で会ってるじゃん』


『いや、1年の時は、テスト前とかもっと話してたな〜と思ってさ』


『おん、そだね』


ああ、やっぱり普通の蓮だ。

でも最近、吹奏楽部の紗良ちゃんと付き合い始めたって噂がある。

聞きたいけど、聞けない。


あの時、通話できてたら——

今頃何か変わってたんだろうか。ご飯なんて、10分遅らせばよかった。。

蓮はやっぱり、紗良ちゃんみたいに小さくて可愛い子が好きなんだろうか。

私みたいに、運動ばかりしてる子なんて、最初から眼中になかったのかな。

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