02.テル:赤緑上書きすれば巻き戻り
俺はいつの間にか目を閉じて集中していた。
失敗の可能性を考えると集中を途切れさせることなんて、できない。
でも、考えてみれば、「何年分巻き戻すのか」とか、「どのくらい時間をかければいいのか」なんて確認を怠っていた。
だから、どれくらい『らぶ・はーと・りばいばる』を維持すればいいのか、不明。
というか期間設定とかしてないから、もしかしたら維持すればするだけ無限に・・・?
これはまずいのでは?
惑星が生まれる前になんて巻き戻ってしまったら大惨事・・・!
『らぶ・はーと・りばいばる』は2人で行うものだから、俺が期間設定すればその時間に巻き戻る可能性は、ある。
「ふんぬあああああああああああああ!!!!!!!!!」
って気合いを入れてるアマノに範囲設定は任せて、俺は期間設定に集中してみるとして・・・いつだ?
いつがいい?
穴が成立する前まで巻き戻せれば最善だ。
だけど、元々俺たちが存在していなかった時間にまで巻き戻してしまっても、大丈夫なのか?
俺たちの存在がない時代だから、俺たちが消えてしまう可能性も考慮。
そうすると・・・あのときがいい。
俺たちが出会った、あのときまで・・・!
「―――――――――――――!!」
そう念じると、何かが体から抜けていくような感覚におそわれる。
あぁ、これは、あれだ。
『星力』を使った時の感覚。
えーと、たぶん、つまり、『らぶ・はーと・りばいばる』は発動はしたものの、範囲とか期間とかが曖昧だったから、本格的な現象として作用せず待機状態になってた感じがする。
「ちょいさあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
・・・・・・。
よし、アマノは集中してるし、黙っていよう。
うん、あとで。
あとで説明することに決定。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
しばらくすると、『星力』を使った時の感覚、何かが抜け落ちる感覚が止まった。
これは『星力』が現象として固定されたことを意味する。
つまり、集中するのはもうやめてもいいはずだ。
「きええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」
・・・・・・。
アマノはもう少し放って・・・・・・―――――――――
そう思い、目を開けた俺に飛び込んできた光景。
「――――――――――」
あぁ・・・これは・・・アマノにも見てもらいたい。
「アマノ」
「ふおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
「アマノさーん?」
「うるああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
「・・・ふっ!」
「あいだぁっ!?」
頭突き一発完全覚醒。
「アマノ、見て」
「ちょ、なんだよ!集中しないとやばいって言ったの・・テル・じゃ・・・ね・・・ぇ・・・」
アマノの声は後半になるほど小さくなり、そして消えていった。
それほど俺たちの目に映る光景は凄まじかった。
あれほど赤く染められていた大地が、淡く緑に輝いている。
まるで星が呼吸をするかのように緑が赤を上書きする。
・・・再生が、始まっていた。
「うっっっわあああ・・・こいつはすげえ・・・」
アマノも表情は柔らかな微笑みで固定されていたが、目が輝いている。
そして、巻き戻しの現場も見てとれる。
「おお、みんながすごい速さで後ろ向きに移動してるね」
「ははは!すげえ!みんなムーンウォークじゃねえか!」
溶岩もどんどん地平に向かって移動している。
地面が元の姿を取り戻していく。
草木が生い茂っていく。
空が青さを取り戻・・・いや緑に輝いてるからまだわかんないか。
「ふあああー・・・って待て!すげえもん見れたけど!あたしたちが集中してないと・・・!」
「うん、たぶん、巻き戻しって現象は、固定されたと考えていいと思う。だから、今はこの光景を目に焼き付けてても、大丈夫だ」
「ほんとかよ・・・まあテルが言うなら・・・」
「一応説明もできる。俺たちは『星力』を使うとき、身体から何かが抜けていく感覚になるでしょ?あれが、もう止まってたんだ」
「あー、なるほどな。だから『ラブ・ハート・リバイバル』はもう完成してたってことでいいのか」
「うん、だから今は・・・」
「あぁ・・・この光景を見ていたい!」
アマノは再び目を輝かせて景色を眺めだした。
そういえば、『らぶ・はーと・りばいばる』が完成したけどずっと手繋いだままだな。
まぁいいか。
・・・それよりも俺は、後ろに存在する穴がほとんど変わっていないのが気になっていた。
落ちていった地面や人が巻き戻っているのは見てとれるけど・・・。
穴という存在が、変わらずそこにあるということが不気味だった。
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