2話「萌えと妄想が糧です」
静かに探偵クラブのドアが開く。
そこに遠慮がちに立っていたのはピンク色の髪を編み込みにした、可憐を表したような美少女。
夜道は同じクラスの女子生徒だと気づく。
「あ、あたしは沼田萌子です。あのぅ……依頼をしに、来たんですけど。ここ、なんでも解決してくれるんですよね?」
伏せ目がちに椅子に座り、もじもじと指を擦り合わせる萌子。
旭は依頼シートと鉛筆を取り出した。
「ま…基本的になんでもだな。私たちが出来ることであれば、どんなことも全力で解決するよ。それが私たちの仕事だし」
真っ直ぐに目を合わせて言う旭に、萌子はーーー
「や、やだ……かっこいい♡」
「………は?」
「………あ?」
目をハートにさせて呟く萌子に旭はぽかんとした表情になる。
ちなみに「………あ?」と呟き、恋敵を見る瞳になったのは後ろで控えていた夜道である。
「これは"萌え"だわ……。ぶっきらぼうだけど優しい美少女で、しかも探偵だなんて!
妄想が捗るわ……好き♡」
身体をくねくねさせ妄想に耽り出した萌子。
暫くするとはっと気づいたように我に帰り。
「ご、ごめんなさいっ!初対面の人を相手に妄想を膨らませるなんて……いつもこうなんです、あたし」
しょんぼりと謝る萌子に、旭は呆れつつも、ふっと優しく笑う。
「……ま、どんな形であれ、魅力的な人だと思われるのは悪くないよ。別に謝らなくてもいいぜ」
頬杖をつきながら言う旭にーー
「「ずっきゅーーーーーん!!!」」
萌子と旭が胸を押さえて吹っ飛んでいく。
「はぁ、はぁ……沼だわ、これは沼だわ」
「旭様……初対面の人も落としてしまうなんて流石です!」
すくっと立ち上がり、よろよろとドアに向かう萌子。
「今日のところはここで引き上げます……でも、また来ますね♡私はどうやら、新しい推しを見つけてしまったようなので……」
「ちょっと待て、依頼はどうした?」
「……あっ!忘れていました!そうだわ、大事な依頼があったんだった」
「大事な依頼なら忘れんなよ……」
心底呆れたように呟く旭。
萌子は再び、椅子に座ると真剣な表情になった。
「実は…………」
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