アーセリア大陸記

Wayuta

遥かなる旅へ

世界は、思ったよりも広い--小さい頃、そんな風に師匠にそう言われたことがあるのを僕、リアム・ガリレウスは今でも覚えている。雲一つない蒼天の下、村の外れの丘から見た大地は、私の知るどんな地図より果てしなく思えた。


15歳になった今日、僕は長旅に耐える外套を羽織り、腰に愛用の剣を差し、静かに家を出た。


僕は、本を読むのが大好きだ。

古代遺跡の記録、魔獣の生態、歴史の断片

未知のものに心が躍った。


だからだろうか、いつの日か僕はこの目で本の中の世界以外を見てみたいと思った。


村を出て振り返ると、朝露の中に故郷がゆっくりと沈んでいく。きっとここにはしばらく戻ってこないだろう。

僕は深く息を吸い、歩き出す。


僕が住んでいるこの大地、アーセリア大陸には無数の国、無数の文化がまざりあってできている。魔獣の徘徊する森、暴風が常に吹く渓谷、古代遺跡の遺構


旅に危険はつきものだ

だがそれ以上に未知がこの旅に待っている。


別に危険を恐れていないわけではない。

魔獣に襲われれば命を落とすこともあるし、盗賊に出くわせば剣の腕だけでどうにかなる保証もない。

それでも――胸の奥が高鳴る。


未知こそが、僕を前に進ませる。


最初の目的地は、村から二日ほど歩いた場所にある交易都市 セイムス。

この近くで一番旅人や冒険者、商人が絶えず行き交う場所だ。

世界の広さを知る旅は、まず人を知るところから始まると、師匠も言っていた。


──師匠。

幼い頃から僕に剣を教えてくれた、あの厳しいくせに根は優しい人の顔が浮かぶ。


「リアム、お前は人より学びに向いている。剣も強いが、それ以上に知りたいという心が強いな。だが、それは、決して悪いことじゃない。だから、いつか冒険でもして世界を知ってこい。」


そう言って、旅立つことを一度も止めなかった。

むしろ背中を押してくれた。


丘を下り、森の縁へと近づいていく。

村の周囲に広がるこの森は、僕にとって慣れ親しんだ場所だが、旅の装備を整えて歩くと、同じ景色でもどこか違って見える。


羽音、風のそよぎ、遠くで鳴く魔獣の声。

広がる世界の気配が、胸を少しだけざわつかせる。


「……よし。」


いざ、遥かなる旅へ

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