【第4章:過去からの符合】
[著者ノート]
ここで、Kが生前に収集していた資料の中に、本件との関連性が極めて高い記事が見つかった。
Kはこの記事に『原点』という付箋を貼っていた。
資料番号 108:週刊実話誌『真相ゾーン』 1998年8月15日号 記事切り抜き
見出し:【S団地の怪】増殖する家族? 消えたA家と「余りモノ」の謎
記事概要:
(前略)
事件があったのは、S団地の205号室。住人のAさん(当時35歳)、妻、長女(6歳)の一家3人が、ある日突然蒸発した。
夜逃げかと思われたが、財布も携帯電話も置かれたまま。
奇妙なのは、室内の惨状だ。争った形跡はないが、部屋中のあらゆる「隙間」が埋められていた。
窓のサッシ、ドアの隙間、コンセントの穴。全てにガムテープや粘土が詰め込まれ、外からの侵入を拒絶……いや、「中から何かが漏れ出すのを防ぐ」かのような処置が施されていた。
近隣住民の証言によれば、失踪の数日前、Aさんの妻がスーパーで奇妙な買い物をしていたという。
「お肉を大量に買ってたのよ。でも、ひき肉ばっかり5キロも。何作るのって聞いたら、『夫のサイズが合わないから、肉付けしなきゃいけないの』って。目が笑ってなかったわ」
警察の捜査では、押入れの天袋から、Aさんのものと思われる「歯」が数本見つかった。しかし、治療痕のある歯だったため照合できたが、奇妙なことに、その歯は「全くすり減っていなかった」。
まるで、新品の歯であるかのように。
オカルト研究家のB氏はこう語る。
「S団地は沼地を埋め立てて作られたが、あの土地は古くから『鏡沼』と呼ばれ、水面に映った顔が本体を乗っ取るという伝承があった。205号室は、その沼の中心にあたる場所なんです。あそこで孤独になると、沼が『家族』を作ってくれるんですよ。ただし、材料はあなた自身ですがね」
(後略)
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