第5話 BATTA(バッタ)

—草食衝動パンデミック—


2134年4月12日。

OSHIRUKOの後遺症で餅を怖がる民族になり、

TEZNAGIの影響で男女が手汗で別れ、

INEMURIでホログラム個人情報が漏れ続け、

SHIOKARAで世界がイカ臭いままの日本。


その日本に、

また新しいウイルスが爆誕した。


◆ 発症 ーー 突然の“草ほしさ”


厚労省のサーバーが再び落ちた日の深夜。

全国の救急に「芝生を食っている人間」の通報が殺到した。


・道頓堀の川沿いでサラリーマンが芝をむしる

・タワマンの屋上庭園で主婦たちが四つん這いで争奪戦

・ゴルフ場は全員フェアウェイを食べつくし営業停止

・皇居ランナーがそのまま芝を食べて脱落


感染者は、共通してこう言う。


「草……めっちゃうまくない……?

あと、立ってるのダルい……」


この謎の衝動が名前の由来、

ウイルス BATTA(バッタ)。


◆ 都心の地獄


タワマン、緑の奪い合い戦争へ


都心は深刻だった。


そもそも緑が少ない。

芝生も無い。

庭も無い。


結果、住民がどこへ向かったかというと——


タワマンの植栽。


エントランスの小さなツツジ。

屋上の申し訳程度の芝。

駐車場横の観葉植物。


深夜になると、住民が全員

四つん這いで食べ尽くす。


管理会社は大混乱。

掲示板には貼り紙が増えた。


「植栽を食べないでください!」

「草は共有財産です!」

「夜中に鳴る“ムシャムシャ音”が迷惑です!」


◆ 西園寺と遥、現場へ


「ちょっと西園寺さん、今回は本気でヤバいですよ」

遥の白衣はすでにSHIOKARAのイカ臭さで限界に近い。


「いや遥ちゃん、草食うてるくらいええやろ。

健康的やん」


「健康的ちゃいますよ!?

あれみんな四つん這いなんですから!

通勤もまともにできないんですから!」


そのとき、地面から聞こえてくる声。


「……ふぁ……このクローバー、最高やで……」


見れば西園寺が這いつくばっていた。


「西園寺さん!? 感染してるー!」


西園寺は草をむしりながら冷静に分析していた。


「遥ちゃん……気づいたで……

この草……

レバナスのチャートに似た味がする……」


遥は一瞬無言になった。


「何を言ってるんですかもう!!」


◆ 世界への影響(でも誰も解決しない)


・日本全国の公園が“食害”で丸裸に

・タワマンでは緑争奪の“這いすくばり戦争”

・緑地が足りず人工芝を食べて救急車行き多数

・「草を食うのは恥ずかしくない」運動がSNSで拡大

・ついに国会議員も本会議中に四つん這いに

・海外ニュース「Japan becomes herbivore nation again」


もちろん、

解決の気配はゼロ。


厚労省はINEMURIの処理で忙しく、

環境省はSHIOKARAのイカ問題で手一杯で、

農林水産省は泣いている。


そんな中、

また次のウイルスの影が忍び寄っていた——。

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